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月と徒花 月と徒花「海辺の町」
淡い青春感が醸す旅情たっぷり“2020年型J-POP”
文 / 西廣智一
月と徒花(つきとあだはな)は2017年結成、兵庫出身のスリーピースバンド。“2020年型J-POP”をテーマに掲げ、歌謡曲やアニメソングを彷彿とさせるキャッチーかつメロディアス、一聴すればすぐに覚えて歌えてしまう楽曲を次々と生み出し、「MINAMI WHEEL」や「COMING KOBE」といった近畿地区の大型サーキットフェスへの出演を果たすなど、順調に活動を続けていた。
しかし、5年にわたりバンドに貢献していたヨシダカホ(B)が2024年6月脱退にしてしまう。これによりしばらくライブ活動を休止せざるを得なかったが、今年1月に冨岡竜之介(Vo, G)と出口将暉(Dr)にアサダ(G)を加えた新体制での活動再開を発表。4月20日には大阪・LIVE SQUARE 2nd LINEで活動再開後初の自主企画ライブ「青春は鳴り止まない」の開催も控えている。
今回紹介する「海辺の町」は、2023年4月リリースのシングル「オートクチュール」収録曲。ノリのよいビートに乗せて冨岡のさわやかな歌声が絡み合うオープニングでまず心をつかまれるが、巧みなコーラスワークや極上のグルーヴが生み出す淡い青春感など、随所に用意された数々のフックによって、エンディングを迎える頃には「海辺の町」という楽曲、および月と徒花というバンドに夢中になってしまっているのではないだろうか。
タイトルの示す「海辺の町」も、彼らが兵庫出身ということや「新快速の止まる町」などといったフレーズから、神戸付近であることは想像に難くない。事実、この楽曲のミュージックビデオは神戸のメリケンパークで撮影されており、歌詞の中で描かれる情景ともリンクする。歌詞で描かれる物語自体は若干の寂しさや切なさを伴うも、曲調もあってか温かみも感じられる。この曲と同じシチュエーションでとはいかないかもしれないが、できることなら電車で海の見える町へ小旅行する際のお供として、この曲を楽しんでみてはいかがだろうか。
そして、この音源やミュージックビデオで耳に目にすることができる編成はすでに終了してしまっているが、新たな体制で動き出した月と徒花が今後この曲をどのように表現するのかにも期待したい。
月と徒花「海辺の町」
- 月と徒花「月と徒花『海辺の町』」
- 2023年4月28日(金)配信開始 / 月と徒花
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月と徒花(ツキトアダハナ)
2017年結成のスリーピースバンド。2025年1月より冨岡竜之介(Vo, G)、出口将暉(Dr)、アサダ(G)の3人で活動中。神戸を拠点にライブを展開しており、疾走感のあるサウンド、叙情的なメロディや歌詞世界を武器にリスナー層を拡大している。