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サザンオールスターズ ジャンヌ・ダルクによろしく
今を懸命に生きるすべての人を鼓舞する サザンの新たなロックアンセム
文 / 三橋あずみ
競技場を飛び出し、フランス・パリの中心部を流れるセーヌ川を舞台に行われたパリ五輪の開会式。河岸や橋の上で彩り豊かな舞踏や演奏が次々と繰り広げられた祝祭のクライマックス、夜の水面を滑るように駆け抜けていく“女性騎士”の姿を中継カメラが捉えたとき──この曲タイトルが脳裏をよぎりハッとした音楽リスナーは、少なくないのではないだろうか。
サザンオールスターズがTBS系スポーツ2024のテーマ曲として書き下ろした新曲のタイトルは「ジャンヌ・ダルクによろしく」。去る9月9日に楽曲のフルバージョンが配信リリースされた。サザンとTBSのスポーツ中継と言えば2014年と2018年の「アジア大会&世界バレー」を彩ったエールソング「東京VICTORY」もいまだエバーグリーンな輝きを放っているが、花の都で行われるスポーツの祭典のためにサザンが新たに作り上げたこの「ジャンヌ・ダルクによろしく」は、「東京VICTORY」とはがらりと雰囲気の異なるストレートなロックナンバーだ。
「素晴らしいアスリートの皆様、そして今を懸命に生きるすべての人の踏み出す一歩が少しでも力強いものになればと思い」バンドとしての“原点”に立ち返る思いで制作されたというこの曲。飾り気なし、極めて純度の高いロックンロールは、バンドメンバーそれぞれの卓越した演奏スキルを鮮やかに際立たせる。それはまるで、己の身ひとつで晴れ舞台に立ったオリンピアンが、極限まで磨き抜かれた最高のパフォーマンスを発揮するかのよう。間奏に待ち受ける、スライドギターの名手・桑田佳祐によるパッショネイトなギターソロも熱狂を加速させるトリガーとなっている。
音楽番組に出演した際、桑田はこの曲の歌詞について「バンド側の気持ちを歌詞にすれば、アスリートの皆様との共通項があるんじゃないか」と語っていた。「辞めれない」「ヤワじゃない」「夢で終わりたくない」と、否定形のリフレインで不撓不屈の精神、勝利への渇望を強調する前半から、「闇から光へと飛び出そう」と聞き手を軽やかに“女神が舞うところ”へと誘っていく後半への展開が痛快で、そのメッセージに胸が高鳴るのはアスリートだけではないだろう。サザンの新たなロックアンセムは、今を懸命に生きるすべての人を力強く鼓舞する。
サザンオールスターズ「ジャンヌ・ダルクによろしく」ミュージックビデオ
サザンオールスターズ
1975年に青山学院大学の音楽サークルで結成。現在のメンバーは桑田佳祐(Vo, G)、関口和之(B)、松田弘(Dr)、原由子(Key)、野沢秀行(Per)の5名。1978年6月にシングル「勝手にシンドバッド」でデビューし、独自の音楽性が当時のシーンに衝撃を与える。1979年3月に3rdシングル「いとしのエリー」の大ヒットにより幅広い層に受け入れられ、名実ともに日本を代表するロックバンドの仲間入りを果たす。その後も時代の変化に伴い、さまざまなアプローチで革新的かつ大衆的な楽曲を発表。1992年7月のシングル「涙のキッス」が初のミリオンヒットを達成し、1999年発表の「TSUNAMI」は293万枚の売り上げを記録する。その後デビュー30周年を迎え、バンドは2009年から無期限活動休止期間に突入していたが、2013年6月に活動再開を発表。2023年6月にデビュー45周年を迎え、9月から10月にかけて4日間の日程で茅ヶ崎公園野球場での野外ライブを開催した。2024年6月、フジテレビ系ドラマ「新宿野戦病院」の主題歌である「恋のブギウギナイト」を配信リリース。冬には9年振り16枚目となるオリジナルアルバムの発売を控えている。