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mekakushe「きみはシュノーケル」ジャケ写

mekakushe きみはシュノーケル

マジカルな音色で誘う恋の海

文 / 黒田隆太朗

マグネット、アーモンド(扁桃体)、カクテルときてシュノーケル! ここ最近のmekakusheは、恋愛における心の揺らぎを生活のあれこれに例えて歌っている。ダンサブルなエレクトロポップとなった新曲「きみはシュノーケル」では、恋に落ちることで経験する胸を締め付けるような痛みと安らぎを、跳ねるようなリズムに託して描くのである。

編曲を任されたのはTomggg。中村佳穂やchelmicoとの仕事で知られるトラックメイカー/ プロデューサーだ。彼は2021年にmekakusheの「エバーグリーンとアイスクリーム」のリミックスを手がけており、その後もSAKA-SAMAの「ライラック・ランデブー」、箱崎星梨花の「きまぐれユモレスク」、太陽と踊れの「あした天気にならないで」など、mekakusheが詞曲を提供したほかのアーティストの楽曲アレンジも担当。そうした背景もありつつ、今作で初めてmekakushe楽曲の編曲を担っている。

マジカルな音色はまさしくTomgggの手腕だろう。まるで絵本がそのまま音楽になったような心躍るポップソングである。彼の甘やかでファンシーな音作りは、繊細さと浮遊感を併せ持つmekakusheの創作を一層引き立てているように思う。とりわけ面白いのが音と言葉のコントラストだ。海の底に潜っていくような歌詞に対し、光に向かって上っていくようなサウンドが絶妙で、スピード感のあるトラックも爽快そのもの。歌われる言葉にはmekakusheらしい陰影が残っているが、耳に飛び込んでくるのはリズミカルで明るい音の粒……この音楽に乗って歌われると、どんな孤独も温かい記憶に変わっていくような気持ちになる。人気キャラクター・マムアンちゃんとコラボしたミュージックビデオも愛らしく、一貫して開放感のあるクリエイティブになっていると言えるだろう。

mekakusheの音楽には「宇宙」や「海」が頻出する。それはきっと彼女の創作における重要なモチーフであり、同時にその音楽が目指している風景そのものなのではないだろうか。ドリーミーな音楽が映し出す果てしなくきれいな世界。彼女の音楽はいつだって、ここではないどこかへと連れて行ってくれる。

mekakushe「きみはシュノーケル」ミュージックビデオ

mekakushe「きみはシュノーケル」
2025年1月15日(水)配信開始 / akogare records
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作詞・作曲:mekakushe
編曲:Tomggg

mekakushe(メカクシー)

作詞、作曲、歌唱、ピアノ演奏を自ら手がけるシンガーソングライター。3歳からクラシックピアノを始め、次第にポップスに傾倒。2013年12月、高校3年生のときにSoundCloudでオリジナル曲を発表した。2021年4月に1stアルバム「光みたいにすすみたい」をリリースし、2022年2月には君島大空、ハヤシコウスケ(シナリオアート)、管梓(For Tracy Hyde)らがアレンジャーとして参加した2ndアルバム「あこがれ」を発表。同年11月にバンダイナムコミュージックライブ内にプライベートレーベル・akogare recordsを設立し、5カ月連続で配信シングルリリースした。2024年9月より長瀬有花とのコラボ企画を始動させ、3部作の楽曲を発表。さらに2025年1月に配信シングル「きみはシュノーケル」をリリースした。