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LAUSBUB「I SYNC」ジャケ写

LAUSBUB I SYNC

なぜ今ヒップホップでもダンスミュージックでもなく「ニューウェイブ」なのか

文 / Kotetsu Shoichiro

プライベートスタジオに加わった、ドラムマシンやシンセサイザーなどの音響機材。それらを用いたセッションのようなイメージの中で自然発生的に生まれていくアイデアが、ループの上でリズムとなり歌となり、レイヤードされていく……。岩井莉子と髙橋芽以によるニューウェイブテクノポップバンド・LAUSBUBの1stアルバム「ROMP」のリード曲「I SYNC」は、音楽が作られていく静かな興奮のドキュメントのようだ。アシッドハウス風のシンセリフと、脳を踊らせるマシンビート、控えめに歌うボーカル……複数の影響源を感じさせ、1つのカテゴリーに収まることを拒絶するようなサウンドの混交。この2024年に、DAW / 電子楽器を手にしながら、ヒップホップでもダンスミュージックでもなく「ニューウェイブ」をLAUSBUBが標榜する理由が、ありありと見えてくる。そう、ニューウェイブとはリズムや手法の名前=カテゴリーではなく「運動」なのだ。

ニューウェイブと聞くと、筆者は2人組のバンドばかり思い出してしまう。Yazoo、Suicide、Soft Cell、DAF、Chris & Cosey、Tom Tom Club、SPK……電子楽器の発展と低価格化=バンドの解体・音楽制作の個人化が始まりつつも、完全に1人で制作するにはまだハードルが高かった1980年代。彼ら、彼女らが手を組んだのは、そんな過渡期故の理由も大いにあっただろう。しかし結果としていずれの2人組も、互いの技術と才能を補い、感性を高め合いながら、今なおフレッシュに響くユニークな音楽の数々を生み出したのだ。

3人寄れば公界。人が3人集えば「社会」ができる、という話は、ならば「2人」は個人と社会の間を行き来する、特別な領域と言えるだろう。「I SYNC」のビデオのクライマックスでキャッチボールをするLAUSBUBを見ていると、これからこの2人が作る音楽に、期待が膨らむばかりだ。

LAUSBUB - I SYNC (Official Video)

LAUSBUB「I SYNC」
2024年7月24日(水)配信開始 / 極東テクノ
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Composed & Arranged by Rico Iwai
Mei Takahashi:Vocals, Bass
Rico Iwai:Guitars, Synthesizer, Programming

LAUSBUB

LAUSBUB

北海道札幌市の同じ高校の軽音楽部に所属していた岩井莉子と髙橋芽以によって2020年3月に結成されたニューウェイブテクノポップバンド。2021年1月にTwitter(現X)の投稿を機に爆発的に話題を集め、2021年6月に初の配信シングル「Telefon」をリリースする。2022年11月には初のフィジカル作品となる1st EP「M.I.D. The First Annual Report of LAUSBUB」をリリース。2023年8月には地元・北海道の大型フェス「RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO」に出演。2024年7月に1stアルバム「ROMP」をリリースした。これまで北海電気工事や北海道アルバイト社「アルキタ」のテレビCM、バンダイのプロジェクト「TAMAGOTCHI REMIX」、札幌PARCO「2023 SPRING&SUMMER NEW&RENEWAL」のイメージソング、「札幌国際芸術祭 2024」のテーマソングのテーマソングなどタイアップも多数手がけている。