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カラノア「MIREMIRE」ジャケ写

カラノア MIREMIRE

思い通りにいかない現実、それでも未来へ

文 / 天野史彬

2020年に4ピースバンドとして活動を開始したカラノアは、今年8月にギタリストの脱退があり、3ピースバンドになった。そんなバンドの状況が直接的に反映されているのかは定かではないが、この新体制初の配信シングル曲「MIREMIRE」には、流れゆく時間や思い通りにいかない現実の中で、それでも足掻くように未来に進もうとする人間の姿が表れている。生きることの「取り返しのつかなさ」を背負い、遠くなればなるほどに美しく見える過去に目眩を覚えながら、それでも前に進もうとする──その足取りに、浮遊感のあるトラックと鮮やかなメロディが、吹き抜ける風のように癒しと力を与える。ギターバンドサウンドという範疇をナチュラルに超えていく自由なサウンドメイクと、しなやかに律動しながら音楽と絡み合う歌詞が、このバンドの音楽的な感性の豊かさを伝えている。

「MIREMIRE」というタイトルが印象的だが、「MIRE」は「泥沼」とか「ぬかるみ」という意味の単語であり、つまり「MIREMIRE」とは「泥泥」というような意味を持つ造語である。日常的な言葉ではなく、自らが作った言葉をタイトルに掲げていることが、この曲がいかに作者にとってパーソナルなものであるかを表している。歌詞には「腹が痛いくらい考えるけど 頭悪いから脳が勿体無い」とあるが、心の痛みだけではなく体の痛みまで書きつけるところもリアルだ。体の痛みは他者と共有ができない。孤独だ。そういう場所から、この音楽は生まれている。

立ち止まっていたら静かにゆっくりと沈んでいってしまいそうで、しかし動こうにも、気を抜けばぬかるみに足は取られる。一歩一歩、足を抜き差しして、なんとか進んでいく。疲れて、ボロボロになる。過去だけが輝きを増していく。ただ「自分らしくありたい」という願いがお守りのようにポケットにある。さまざまな思いや状態が重なり、1曲の中に朝焼けのようなグラデーションを描いている。かけがえのない1曲である。

カラノア - MIREMIRE(Official Lyric Video)

カラノア「MIREMIRE」
2024年11月13日(水)配信開始 / SKID ZERO
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作詞:雄大
作曲:雄大
編曲:カラノア / 永田涼司

カラノア

カラノア

2020年11月に結成されたロックバンド。現在のメンバーは雄大(Vo, G)、樹(B)、かずき(Dr)の3人で、東京・渋谷や下北沢を中心に活動している。2022年11月に初音源となるシングル「ナイト」を配信リリースし、初の自主企画ライブを開催。翌2023年8月には「MONSTER baSH 2023 オーディション」のグランプリを獲得した。同年11月に東京・shibuya eggmanで初のワンマンライブを開催。2024年に「ROAD TO ROCK IN JAPAN FES. CHIBA 2024」の優勝アーティストに選出され、8月に「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024」へ出演を果たす。11月に現体制初のシングル「MIREMIRE」を配信リリースし、東名阪ツアーを開催。ツアーファイナルのワンマンライブは11月29日に東京・WWWにて行われる。