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Jonah「独立計画」ジャケ写

Jonah 独立計画

「大人になり切れない」存在はどこに行くのだろう──18歳SSWが焦点を当てる家出少年の一夜

文 / 天野史彬

今年1月にシングル「エコー」でデビューを果たしたシンガーソングライターJonahの第2弾シングルは、「大人になり切れない子供」と「子供からの脱却」がテーマ。この2つのテーマは矛盾しているようだがそうではない。「子供からの脱却」を図ったからといって、誰もが「大人」というゴールにまっすぐにたどり着けるわけではないのだ。「こうすればちゃんとした大人になれますよ」「こう生きることがまともですよ」、そんな他人が書いた人生の説明書など捨ててしまいたいと思う人もいる。子供であり続けることを拒みながら、それでいて「大人になり切れない」存在はどこに行くのだろう──そんな問いに、この曲は焦点を当てている。

主人公はまるで迷子だ。子供にも大人にもなれず、人生のエアポケットのような空間でさまよう迷子。苛立ちながらも寂しくて、幼い全能感はすぐに最悪な孤独感に変わり、誰の手も借りたくないと思いながら、誰かに強く手を握られたいと思っている。この迷子は「素朴に生きたい」と思っているだけかもしれない。奪うことも奪われることもなく。でも、それが簡単にできない。Jonahは、そんな世界と摩擦を起こしまくっている主人公を、優しさと冷静さが混ざり合う視点で見つめている。温かくも醒めている、そんな視線が家出少年の一夜を切り取ったような歌詞とクールな歌声から感じられる。

アレンジは前作「エコー」に引き続きSUKISHAが手がけた。曲調自体は大人びてムーディでありながら、生々しい音の重なりが大人になり切れない主人公の騒々しい心象を表しているようだ。アンビバレントな感情を抱えながら、大人と子供の狭間で1人迷い踊る少年。今も世界のどこかに、こいつはいる。生き延びてほしい。いつか、自分を閉じ込めるものから抜け出して、生き抜いてほしい。そんなことを思う。

Jonah - 独立計画 (Official Music Video)

Jonah「独立計画」
2025年3月19日(水)配信開始 / Scrum Wave Music
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作詞・作曲:Jonah
編曲:SUKISHA

Jonah(ジョナ)

Jonah

イギリス人の父と日本人の母を持つシンガーソングライター。2007年、高知県生まれ。eggmanとNTTドコモ・スタジオ&ライブによる、次世代バンドおよびグローバルアーティストの発掘・育成を目的としたオーディションプロジェクト「Catching Wave Audition 2024」に出場後、2025年1月にプロジェクト内で発足されたレーベル・Scrum Wave Musicより第1弾シングル「エコー」を配信リリース。3月に第2弾シングル「独立計画」を発表した。