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Ayllton「ダメね」ジャケ写

Ayllton ダメね

イヤフォンの中に閉じ込めたくない軽快なソウルポップ

文 / ナカニシキュウ

イヤフォンやヘッドフォンで音楽を聴く体験は言うまでもなく素晴らしいものだが、世の中には“どうしてもスピーカーで鳴らしたくなる音楽”というものが厳然と存在する。昨年「出れんの!? サマソニ!? 2024」を通過して「SUMMER SONIC 2024」出演を果たし、注目度を急上昇させている現在21歳のシンガーソングライター・Aylltonの作り出す音楽は、まさにそういう種類のものだ。

例えば、このたびリリースされた彼の1st EP「ダメね」の表題曲は、ブラスをフィーチャーしたソウル色の濃い軽快なポップチューン。実直さのにじみ出る温かな中低音が心地よく響くボーカル、スタイリッシュさと泥臭さを兼ね備えたリズムセクション、柔らかなクランチトーンで重ねられるエレキギターなど、生々しいオーガニックサウンドが次々に押し寄せてくる。このような、一切のギミックを排して素材の味で勝負するタイプの音というのは、空気を震わせながら空間を通って耳に届いてこそ本来のポテンシャルを発揮するものだ。

さらに楽曲自体も極めて肉体的な作りとなっており、サビの「ただまっすぐ ただまっすぐ」を筆頭に、思わず口ずさみたくなるリズミカルなフレーズのオンパレード。ファンク / ソウルのマナーに則った音韻とリズムを重視する音楽的なリリックでありながら、その一方で内容的にも上京したてのナイーブな青年が抱く葛藤と情熱が瑞々しく描写されている。音としての機能性とメッセージ性の両面を高水準で共存させてしまう力量は、端的にいって非凡というほかない。

ちなみにAylltonは長崎・五島列島の出身だそう。安易に結び付けるべきではないかもしれないが、彼の生み出す音やメロディに充満する生命力や肉体性は、自然豊かな環境に生まれ育った出自とおそらく無関係ではないだろう。この音をイヤフォンの閉鎖的な空間に閉じ込めたくない気持ちにさせられるのは、案外そういうところにも要因があるのかもしれない。10月にはワンマンライブも控えているとのことなので、楽曲にピンと来たリスナーは彼の音を最もフィジカルに体感できるライブの場にもぜひ足を運んでみてほしい。

Ayllton - ダメね (Visualiser)

Ayllton「ダメね」
2025年6月11日(水)配信開始
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作詞・作曲・編曲:Ayllton

Ayllton(アイルトン)

Ayllton

長崎県・上五島出身、2004年生まれのシンガーソングライター。作詞、作曲、編曲のすべてを手がけ、ファンク、ソウル、ロックなどジャンルにとらわれないポップソングを発信している。現在は東京を拠点に活動中。10月18日には東京・ADRIFTにて初のワンマンライブ「Ayllton 1st LIVE 2025 "Be honest!"」を開催する。ローソンチケットでは6月29日23:59までチケットのオフィシャル最速先行予約を受付中。