「その痛みもマイクに乗せろよ」と言われてんのかなって
阿座上 今おっしゃったように、「すごく激しいけど重すぎない」というのはポイントですよね。つらいだけじゃなくて、どこか希望がある。そこがザイロの“人間を諦めていない”に通ずるものがある気がしました。
MOMIKEN 歌詞に関しては、まずは「勇者刑に処す」という強いタイトルを引き受ける大枠のテーマとして“罪と罰”というモチーフを先に決めて。で、僕らが培ってきた、バンドのアイデンティティにもなっているような“背中を押すメッセージ”をゴールに据えて書いていった感じです。その道筋が最初から見えてたんで、割とすんなり書けましたね。
阿座上 へええー、すごい。こんなにも「勇者刑」のテーマをがっつり掴んでくださるのはすごいな、さすがだなと思いました。
MOMIKEN テーマがあったほうがむしろ僕は書きやすいんですよ。まっさらな状態で「好きに書いて」と言われるほうが大変で。SPYAIRが軸に持っているメッセージがあるので、常にゴールは決まってるんですけど、そのゴールにどう持っていくかという部分が苦労するところだから、その材料を与えてもらえると道筋が見えやすいんです。
阿座上 なるほど……。
YOSUKE この詞が上がってきたときは、「なんかいつもより暗いなあ」って(笑)。
阿座上・MOMIKEN (笑)。
YOSUKE 直接的に何かを伝える感じじゃなくて、いろんなキャラクターに当てはまるような歌詞だなと思って。もちろんザイロもそうだし、アニメの中だけじゃなくて、現実世界で普通に生きている自分たちにとってもこういう思いってあるよなあとすごく感じた。そのストレートすぎない表現がサウンドと合ってるなあ、というのはすごく思いましたね。
阿座上 最初にも言いましたけど、僕はやっぱりYOSUKEさんのシャウトにいろんな思いが乗っているのを強く感じました。聴くだけで気持ちが高揚しますよね。身ひとつで戦うザイロはもちろん、現代社会で戦っている人たちの背中も押してくれる楽曲だなと思います。歌に関しては「こういうふうに表現しよう」と意識していない、と先ほどもおっしゃっていましたけど……。
YOSUKE そうですね。ボーカル録りはナチュラル、自然体って感じで、そのまんまです。アバラをケアしていたぐらい(笑)。
阿座上 アバラのケア?
YOSUKE レコーディングの数週間前に出演したイベントで、ステージから客席に飛び込んだときにケガしちゃって。コルセットをつけた状態でレコーディングしたんですよ。
阿座上 ロックですねえ……!
MOMIKEN それだけ聞くとね。でも、実際はただの自業自得なんで(笑)。
YOSUKE 何か大いなる意思みたいなものに、「その痛みもマイクに乗せろよ」と言われてんのかな?って。無理やりこじつけてますけど(笑)。
阿座上 図らずも、勇者刑を科されているザイロを体現していたんですね。
YOSUKE そうそう。最終的にはコルセットを外してレコーディングしたんですが、その瞬間すごく声が抜けるようになって、「こんな縛りはいらねえ!」ってなりましたから。
阿座上 結果的に(笑)。
普段アニメを観ない人もたくさん観てきた人も、そしてドMなあなたもぜひ
YOSUKE この作品は観始めたらもう止まらなくて。アニメを観るというよりは、ザイロという1人の人間の生き様を見ている感覚に近かったかな。モンスターが出てきたりする世界観はもちろん現実的ではないんだけど、それぞれの人物の信念や考え方がリアルだから、彼らが抱えているような問題は形を変えれば現代社会でもありふれているものだったりする。だから、普段アニメにあまり触れていない人でもすんなり入り込めると思いますね。何かしら自分と重なる部分があるだろうし。
MOMIKEN 僕は普段からこういうファンタジー系のアニメをよく観るんです。だからこそ、“勇者=悪の象徴”みたいな設定が斬新すぎた。新しいものの見方をさせてくれる作品だと思うんで、これまでにいろんなファンタジー作品を観てきた人にこそ、ぜひ観てもらいたい。……YOSUKEと真逆のこと言ってますけど(笑)。YOSUKEは「普段アニメを観ない人にオススメ」って言ってて、僕は「たくさん観てきた人にこそオススメ」って。
阿座上 全員にオススメできちゃうってことですね(笑)。いやもう、おっしゃるとおり“勇者”という概念へのアンチテーゼみたいなものを担っている作品ですよね。いわゆるRPGの世界でいう勇者とは正反対の立場や性格のキャラクターたちが……それこそRPGの酒場で仲間を増やしていくのと同じように、ストーリーが進むにつれてどんどんクセの強い人たちが集まってくる。その全員がなんかヴィランっぽいっていうか、「スーサイド・スクワッド」感があるんですよね。
MOMIKEN 確かに、「アベンジャーズ」ではないですね(笑)。
阿座上 そうそう(笑)。そのデコボコなピースがなんとかハマることによって、ザイロ1人では倒せないような敵にも勝利していく過程がすごく泥臭くて魅力的だなあと思っています。1人ひとりが輝くシーンもちゃんとありますし、全体的に重い設定だからこそコメディシーンが際立つという側面もあるんですよね。意外とギャグシーンも多かったりするんで、ずっと張り詰め続けてはいないところもポイントだと思います。なので、まあ……ドMの人にオススメですかね。
MOMIKEN・YOSUKE (笑)。
阿座上 苦しいシーンが多いので(笑)。でも苦しいだけじゃなくて、一筋の光は差している。そこへ向かっていくことで、たまっているフラストレーションを解放できるカタルシスも味わえます。普段アニメを観ない方とアニメをたくさん観てきた方、そしてドMの方はぜひご覧ください!
プロフィール
阿座上洋平(アザカミヨウヘイ)
8月7日生まれ、群馬県出身。青二プロダクション所属。主な出演作に主な出演作に「機動戦士ガンダム 水星の魔女」(グエル・ジェターク役)、「忘却バッテリー」(藤堂葵役)、「鴨乃橋ロンの禁断推理」(鴨乃橋ロン役)、「勇気爆発バーンブレイバーン」(ルイス・スミス役)、「青のミブロ」(土方歳三役)、「スプリガン」(ジャン・ジャックモンド役)などがある。「第十八回 声優アワード」では助演声優賞に輝いた。
SPYAIR(スパイエアー)
2005年に愛知県で結成されたロックバンド。地元名古屋の野外ライブでキャリアを重ね、2010年8月にシングル「LIAR」でメジャーデビュー。数多くのアニメとのタイアップ曲を発表し、2012年12月には初の日本武道館ワンマンを成功のうちに収めた。2022年3月、IKE(Vo)が脱退。UZ(G, Programming)、MOMIKEN(B)、KENTA(Dr)によって同年11月から行われたオーディションを経て、2023年4月に新ボーカリスト・YOSUKEが加入。同年8月の野外ライブ「JUST LIKE THIS 2023」より新体制での活動を本格化させた。2024年2月に発表した「オレンジ」は映画「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」の主題歌として大ヒットし、自身初のストリーミング累計2億回再生を突破。2026年1月の仙台・東京での「SPYAIR TOUR 2025 - BUDDY -」振替公演を経て、2月から5月にかけて全国ツアー「SPYAIR TOUR 2026」を開催する。


