設定を考えても、キャラクターが動くかは描いてみないとわからない
──今回はおふたりの作品に共通している“キレイなお姉さん”について、ぜひお話を伺いたいと思っていました。おふたりは主人公のキャラクターをどうやって作っていきましたか?
はっとり 僕は今回、金目さんを実在する子として描きたいなと思ってました。だから、あくまでこの子が熱海に住んでいて、それをカメラで追いかけているような感覚で描いてます。ただ、ビジュアルは感覚的に作っていったところが大きいと思いますね。なんとなく描きながら、自分の中でしっくりとくるまで突き詰めていくみたいな。いくら文字で設定を考えていたとしても、そのキャラクターが動くかどうかは描いてみないとわからないんです。
里見U 私もそうですね。キャラクターを考えるときは、考えた設定をもとに10~20体とラフを描きながらしっくりくる絵を探してます。でも、描きながら設定を離れてだんだんと自分好みのビジュアルに近づいちゃうことはあります。八雲さんも読み切りのときは切れ長の猫目っぽいキャラクターだったのですが、改めて連載企画としてスタートするときには、自分の好きなタヌキ顔の女性になっていました(笑)。
はっとり 当初のイメージから変わることってありますよね。僕も金目さんは最初、褐色のキャラクターでいくつもりだったんですよ。活発に外を出歩くような女性だから、日に焼けて健康的な姿のほうがいいと思ってて。でも、クリーニング屋という仕事を考えたときに、色白のほうがシンボルカラーとしてわかりやすいのかなと。それで1話目のペン入れギリギリで今の外見に変更したんです。
──ビジュアルを作るうえでモチーフになったキャラクターや実在の人物はいますか?
里見U 全然違いますけど、私の中では「美少女戦士セーラームーン」の水野亜美ちゃんはイメージの中にありました。亜美ちゃんみたいな、メガネ姿で真面目かつおとなしい女の子が、私の理想のお姉さん像だったんです(笑)。だから作品のPVで八雲さんの声を久川綾さんが演じてくださったときは、めちゃくちゃ感動しました。
はっとり 僕は昔から描いている自分のキャラクターの延長というか、奇をてらわないイメージで描いていましたね。ただ、金目さんを作ったあとに、テレビでNHKの番組(NHK総合「ニュース シブ5時」)などに出ている福岡良子さんという気象予報士の方を見て、実写だとこの方に近いのかもって思いました。
里見U なるほど! そういえば私も描きながらですが、もし実写化するなら八雲さんは綾瀬はるかさんに演じてほしいと思ったりしました。また、細かいところなのですが、八雲さんのエプロンは先ほど名前が挙がった大ヒット作品(「めぞん一刻」)に影響を受けています。私自身がその作品の大ファンというのもありますが、“未亡人”という設定を使用するにあたり、ぜひ取り入れてみたいと……。オマージュというのもおこがましいのですが、サイン会などで読者の方に質問されることがあってうれしく思います。
Tシャツのシワにもエロスがある
──余談ですが、里見さんのペンネームって男女がわからない名前ですけど、性別を隠している感覚ってありますか?
里見U 男性名のほうがいいのかなと思ったことはあるけれど、特に隠してはいないですよ。サイン会では実際に読者さんと会っていますし。
はっとり 男性作家だと間違われることありますか?
里見U 確かに読者の方から「50代くらいの男性だと思ってました」と言われたことがありますね。年上の作家だと思われるみたいです(笑)。
里見Uの担当編集 サイン会で初めて里見先生をご覧になって、「まさか女性の作家だったとは!」と驚かれる方が結構います。
はっとり (笑)。そうだったんですか。僕は初めて「八雲さん」を読んだとき、「この方はきっと女性だな」と思っていたんですよ。
──どこをご覧になって気づかれましたか?
はっとり やっぱり男性キャラクターの描き方ですね。女性キャラだけじゃなくて、大和くんみたいな男性キャラにも愛情というか、慈しみ目線があるなって。
里見U うわー、そうなんです。気をつけてはいるのですが……。ヤングガンガンは男性向けの雑誌なので、大和のかわいい部分よりも八雲さんのかわいさを表現することを第一にしなければと思っているんです。ただ、好きという感情をセーブするのはなかなか難しいと気付きました。
はっとり 隠しきれない大和くん愛がにじみ出てると思います。でも、僕はかわいい男の子を描くことができないから、それがうらやましかったんですよ。いいなあ、うまく描けるようになりたいなあ、女の子になりたいなあって(笑)。
里見U いやいや、何を言ってるんですか! 「きにして」のキュウ君(石持毬祥)もめちゃくちゃかわいいじゃないですか。
──男性キャラクターのかわいらしさって、男性が描くと違うものになっちゃうんですか?
はっとり どうもうまく表現できないんですよ。きっと愛情を注いで描けるのもフェチの一部だと思うんですけど。
里見U フェチ……なのかもしれませんね(笑)。描いていて単純に楽しいですし。それで言うと、これはキャラの性別関係なくですが、私は服のシワを描くのが好きなんです。八雲さんがブラウスを着る回が作中にあるんですが、八雲さんは胸が大きいのでボタンホールのところが横に引っ張られるんです。そこはもう、すっごい本気で描きました(笑)。編集さんとも相談して「もっとシワのエロスを!」みたいな感じで。
はっとり シワのエロス(笑)。それで思い出したけど、女性作家さんのTシャツの描き方を見てて「なんでこんなにシワを入れるんだろう」って思ってたんですけど、あれってフェチなんですかね。
里見U だと思います。例えばゆったりとしたTシャツを着ている男性だったら肩甲骨からタテ線が入るけど、タイトめのTシャツを着ている女性だと腰回りにヨコ線が入るとか。でも、男性作家さんにも服のシワなど繊細に描かれる方っていませんか?
はっとり それはきっとリアリティとして省略せずに描きたい、っていうデッサン的な必然性だと思いますね。だって、シワのエロスって初めて聞きましたから(笑)。
里見U なるほど、私は完全にエロのイメージでした(笑)。
──逆に男性が描く女性キャラクターについてはいかがですか?
里見U くびれのラインがキレイだなって思います。私が腰回りを描くときは、好みというのもあるんですが、どうしてもリアル寄りというか、肉感的な描き方をしてしまうんです。その点、はっとり先生をはじめとする男性作家のみなさんはキレイで理想的なS字のくびれを描かれるなあと。
はっとり 肉感的なビジュアルが好きな男性は多いけど、やり過ぎるとたしかにエロマンガになっちゃいそうですね。男性作家はわりと指とかくびれとか、すらっと描く傾向があると思います。僕も実在する女性を描こうとしているけど、体の描き方は理想化されていて、アニメっぽいというかリアルから離れている気がします。
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八雲さんと大和の恋愛はアリ? ナシ?
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- 里見U(サトミユー)
- 東京都出身。ヤングガンガン2016年No.06(スクウェア・エニックス)に掲載された「八雲さんは餌づけがしたい。」にてデビュー。同作は既刊5巻で累計75万部を突破するスマッシュヒットとなる。2018年4月6日発売のヤングガンガンNo.08からは「八雲さんは餌づけがしたい。」と同時連載となる「マリア先生は妹ガチ勢!」を開始。
- はっとりみつる
- 三重県出身。ヤングマガジンアッパーズ2000年9号(講談社)に掲載された「イヌっネコっジャンプ!」にてデビュー。2009年から2014年まで別冊少年マガジン(講談社)にて連載された「さんかれあ」は全11巻で刊行され、テレビアニメ化も果たした。2015年から2016年にかけては、ヤングマガジン(講談社)にて西尾維新の小説「少女不十分」のコミカライズを担当。2017年からはヤングガンガン(スクウェア・エニックス)で「綺麗にしてもらえますか。」を連載している。