望月淳原作によるTVアニメ「ヴァニタスの手記(カルテ)」は19世紀のフランス・パリを舞台に、吸血鬼(ヴァンピール)に呪いを振りまくという魔導書(グリモワール)“ヴァニタスの書”を探す吸血鬼の青年ノエと、吸血鬼の専門医を自称し、“ヴァニタスの書”を持つ人間・ヴァニタスが織りなすスチームパンクファンタジー。7月2日より順次放送される。
コミックナタリーはアニメの放送を前にヴァニタス役の花江夏樹にインタビューを実施。原作を初めて読んだ際の感想に始まり、自身が演じるヴァニタスの印象、石川界人演じるノエとの関係性などについて語ってもらった。
取材・文 / 佐藤希
ヴァニタスはあまり演じてこなかったタイプかも
──まず「ヴァニタスの手記」の原作を初めて読んだときの感想を教えてください。
原作はとても絵がきれいで、魅力的なキャラクターと設定に惹かれました。煌びやかで艶やかな雰囲気が特徴ですが、僕はスチームパンクが好きなので、小物1つひとつにそういう要素を感じて、とってもテンションが上がってしまいますね。
──花江さんが演じるヴァニタスは、目的のためなら手段を選ばないところがあり、周囲を巻き込み翻弄しがちなキャラクターです。彼にどのような印象を持ちましたか?
初めてヴァニタスを見たときは、色気のある生意気キャラという印象を受けたんですが、彼の行動理念をもとに実際に演じてみたら、純粋でかわいらしい部分も多いなと。奥に秘めた優しさや、憂いも感じさせるキャラクターなので、そこも見せられるように意識してアフレコに臨みました。
──なるほど。ミステリアスでなかなか本心を見せないヴァニタスは、花江さんが今までアニメで演じられてきたキャラクターにはあまりいないタイプでは?と感じました。ヴァニタスを演じるうえで、どのような演技プランを考えていたんでしょうか。
確かに、あまりいなかったキャラクターかもしれませんね。ヴァニタスは、少し舞台寄りの口調や演技を意識している部分があって、ミュージカルのように歌いながらしゃべるようなイメージも僕の中であります。実際にオーディションのときには、そういったディレクションがあったんですよ。でもあまり大仰になりすぎず、要所要所でその感じを出せたらなと意識して演じています。
──ちなみに、板村智幸監督からはアフレコの際にどういうディレクションを受けたんでしょうか。
初登場の際は「悪人として見えないように意識してほしい」というディレクションがありました。でも、バランスが難しいですよね。ヴァニタスはよく嘘をつくキャラクターですし(笑)。
──確かにそうですね(笑)。普段は明るくて、嘘もつきながら周囲を煙に巻くヴァニタスですが、複雑な生い立ちが徐々に物語へ影響を及ぼしていきます。台本を読み進めてイメージは変わりましたでしょうか?
かなりイメージは変わりましたね。というのも「これは本心なのか?」と思う場面が多くて、どこに彼の真意があるのかがわからないことが多くて……。そのたびに監督から説明をいただいて、「なるほど、かなり複雑な思いなんだな」とだんだんヴァニタスへの印象が変化していきました。
界人くんに本当にぴったりな役
──「ヴァニタスの手記」のもう1人の主人公・ノエについてもお話を伺わせてください。自分の感情に対して素直で、少し天然な部分もあるノエについて、花江さんはどんな印象を持たれましたか。
「かわいいのに強い、眩しい」ですね。
──ノエ役を演じているのは、「東京喰種:re」などで共演され、プライベートでも親交の深い石川界人さんです。
界人くんに本当にぴったりな役だなと思いました。普段界人くんはクールな完璧人間を演じることが多いので、意外かもしれませんが、界人くんが持つ天然な部分と自分の信念を曲げないまっすぐな部分が、ノエにマッチしているんじゃないかと思っています。
──板村監督はヴァニタスとノエの関係を「まるでホームズとワトソンのような不即不離の関係」と表現していますが、花江さんは2人の関係をどのようなものだと捉えていらっしゃいますか?
お互い全然表には出しませんが、なんだかんだで信頼し合っている、いい関係だと思っています。アニメでも、2人の掛け合いのテンポがよくて楽しいですね!
──ちなみに石川さんは、別媒体のインタビューで「(花江さんがとても器用な役者なため、どうくるのか読めず)花江さんがヴァニタスとして第一声を発するまでは、ノエの芝居もなかなか固まらなかった」とおっしゃっていました。逆に花江さんは石川さんとの掛け合いの中で、ヴァニタスの演技に変化が生まれた部分はありますか?
そこまで大きな変化はありませんでしたね。基本的にはヴァニタスがノエを振り回すので、そんなに引っ張られることはありませんでしたが、中盤のお話からはノエが主導になるシーンが増えてくるので、そこではあらかじめ考えてきたものと違った演技になったかと思います。
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ワンシーンごとが絵画みたい