コミックナタリー PowerPush - 村生ミオ「終のすみか」

「いつもキャッチャーのつもりで描いてる」孤高の恋愛マンガ職人がWEB初登場

気づくといつも、ヒロインの胸やお尻がボンって出てしまっている

──キャラクターのモデルになったりもするんですか。

マドンナ社員・由佳は自ら田島の言いなりになる。

直接じゃないけど、素材にはなりますよね。まあ映画やドラマ、小説なんかからヒントを得たりもしてますけど、担当がいちばん話す人だからね。それって結構マンガに反映されますよ。「終のすみか」に登場する由佳なんてまさにそうで、担当のエピソードがもとになっています。

──主人公の言いなりになってみせる、ワケありのマドンナ社員ですね。

担当に「どんな女の子と付き合ったことがある?」って話をしてたら、何も要求をしてこない、ただただ言いなりになる女の子がいたっていうんですよ。で、突っ込んで聞いてみれば、言いなりになるにはなるだけの理由があった。それがすごく面白くて、そこから膨らませていきました。

──女性キャラのルックスには、誰かモデルがいたりするんですか。村生さんの作品にはグラマーな美女が多く登場しますが。

あれはね、不思議なことに、描いてるとどうしてもそうなっちゃうんですよね。僕自身はグラマーな人もスレンダーな人も、それぞれ魅力的だと感じているんですけど、絵で描くとどうしても肉感的になってしまう。これは技術的な問題なんですが、オードリー・ヘップバーンやイザベル・アジャーニを魅力的に描くのはすごく難しい。痩身の人の魅力って描きづらいもんなんですよ。でもモニカ・ベルッチの魅力なら描ける。で、気づくといつも、僕のヒロインは胸やお尻がボンって出てしまっている(笑)。

──先生の好みが投影されているというわけじゃないんですね。

まあ、それもあるかもしれない(笑)。最近で言うと壇蜜さんとか佐々木心音さんみたいな、ああいうボディラインが好きなんですよ。グラビアは参考になりますね。

22ページの中で内角内角で攻めて、外角で仕留めるっていう

──グラマー美女ともうひとつ、村生マンガの名物ともいえるのが「見開き使い」だと思うのですが。ネットでは「見開き芸」なんて呼ばれたりもしています。

ははは。ちょっと前だけど「サークルゲーム」という作品があって、あれを毎回見開きを必ず使うって縛りでやったんです。それも担当が言い出したんだけど、ルールにしちゃったもんだからそればっかり考えてて(笑)。結局そのときは過剰な演出にしかならなかったけど、「SとM」ではもうちょっとアプローチの方法が増やせて、笑いにも使えるようになった。

──そういうステップがあったんですね。

村生ミオ

見開きは物語のテンポに緩急を付ける仕掛けなんですよね。意外性をもたらして、話がダラダラ流れてしまわないように一度止めるというか。週刊で言うと22ページの中で2カ所は変化がほしくて、そのひとつに見開きを使ったりします。クリント・イーストウッドの映画がそういう手を使ってるような気がするんだけど。観てるこっちが「あれ?」って思うようなシーンが入ってくるんです。「なんでこいつ唐突に怒り出したんだろう」みたいな違和感とか。

──敢えて流れを止めて、注意を惹くようなやり方を。

あれ、わざとやってると思うんだよなー。僕はネームの前にジョナサンでプロットというか、シナリオを起こすんですけど、

──ジョナサン(笑)。

走り書きのアイデアメモ。

ここ数年はもっぱらジョナサン(笑)。そのシナリオを読んでいると、何か物足りないというか「この辺で何かが必要だな」っていうのが見えてくるんです。それはストーリーとは関係ないんだけど、スピード感とか動きという面で。そこに差し込む仕掛けのひとつとして、見開きがある。

──テンポが良いだけじゃダメで、どこかで壊す必要があるということですね。

うん、メリハリですよね。僕はいつもキャッチャーのつもりで描いてるから。サインを出して、まず内角攻めて、仕留めるのは外角っていう。そういう考えはやっぱりありますね。

──前と違う球を投げて意表を突いたりとか。

だから、22ページの中で、煽り方ですよね。最後に向けての煽り方というか。内角内角で煽って、実は外角でしたっていう。

盤 [CD] / 000円 / 品番
作品紹介

田島修一は大手商社に勤める42歳。仕事もプライベートも充実、全てが順風満帆な人生を送っていた。が、ある日突然、妻から離婚を切り出されて彼の生活は一変する。

そして、失意の田島になぜか好意を示す社のマドンナ・神崎由佳。バツイチ中年と若い女の奇妙な関係は、やがて波乱を呼び…!?

大ヒット作「SとM」の村生ミオが描く、ショッキング・ラブ・ストーリー!!

村生ミオ(むらおみお)

1952年4月28日生まれ、徳島県徳島市出身。1972年、別冊少年ジャンプ(集英社)より「かっぱラブラブ大作戦」でデビュー。代表作に「胸騒ぎの放課後」「微熱 MY LOVE」「サークルゲーム」「バージン・ママ」「WOMEN」「SとM」など多数。現在はプレイコミック(秋田書店)にて「1夫5妻 ~僕がモテる理由~」、週刊漫画ゴラク(日本文芸社)にて「終のすみか」 、週刊実話(日本ジャーナル出版)にて「すえぜん」を連載中。