アニメをはじめ多様なジャンルの動画が月額税込618円で視聴できる動画配信サービス・TELASA(テラサ)の特集として、コミックナタリーではハライチの岩井勇気へインタビューを実施。アニメ好きで知られる岩井に、TELASA(テラサ)で見放題配信中の2022年冬アニメお気に入り作品と、これから配信される春アニメの期待作品をピックアップしてもらった。BLファンから見た「佐々木と宮野」の特色とは。「その着せ替え人形は恋をする」に登場する喜多川海夢のギャルならではの魅力は。社会人によるバドミントンものという珍しい題材を扱った「リーマンズクラブ」を観て気付かされたこととは。さらに注目の春アニメ「SPY×FAMILY」「であいもん」の選出理由など縦横無尽に語ってもらいつつ、花澤香菜とともにMCを務めるTELASA(テラサ)配信中の番組「まんが未知」についても聞いた。
取材・文 / はるのおと撮影 / 曽我美芽
「佐々木と宮野」はずっとデッドヒートをやっている
──今回、岩井さんには冬クールのアニメからお気に入りの3本を選んでいただきましたが、全体の印象としてはいかがですか?
冬クールは作品が少なかったですよね。
──毎年春と秋が多くて冬と夏は少ない傾向ではありますが、とはいえ新作だけで50本以上ありました。それでも少なかったと。
はい、著しく少ないおかげでだいたいチェックできてます。
──それだけチェックしている岩井さんは、普段どんなふうにアニメを観ているんでしょうか?
日によって違いますけど、20時~21時くらいに家に帰ってきてそこから28時くらいに寝るまでずっとテレビでアニメを流して、飯を作ったり携帯ゲームをやったり、ゴロゴロしながら観てます。
──テレビで放送されているものを観ているんですか?
いや、配信サイトで観ることが多いです。それをChromecastでテレビに映して。
──大画面でしっかり観たいと。
まあ聴いているだけみたいなこともありますけどね。ラジオみたいな感じで。
──そんな空気のようにアニメを摂取している岩井さんが選んだ冬クールのお気に入りのアニメが「その着せ替え人形は恋をする」「リーマンズクラブ」「佐々木と宮野」の3本です。それぞれ好きなポイントを伺っていきますが、まずBL好きな岩井さんらしいセレクトの「佐々木と宮野」からお願いします。
これは佐々木と宮野という高校生同士の話ですが、片思いは第2話くらいで終わって、お互いを好きなことになんとなく気付いているけどなかなか確かめ合わない期間が長いんですよ。こっちとしてはどちらの気持ちも知ってるから「ひゃーもう! お前らもう、気持ちは一緒なんだよ!」とか言いながら観て、「今週も確かめ合わなかったな……」と思うのを毎週楽しんでいます。
──焦らされ感が楽しい?
焦らされ感というより、恋愛において付き合う直前が一番楽しい時期じゃないですか。それは本来あまり長く味わえないものだけど、「佐々木と宮野」はずっと続いているんです。最終的にはお互いに気持ちを確かめ合うんでしょうけど、そこからはもうウィニングランみたいなもんなので。この作品はそこに至る最後のデッドヒートをずっとやってるみたいな感じです。
──「佐々木と宮野」は高校生同士の話だから初々しい感じがするのもいいですよね。
そうなんですよ。まだ「この気持ちは恋愛感情なのか?」という疑いを2人とも持っていて。それがすごくピュアな感じがします。「佐々木と宮野」は割とBL入門としていいかもしれません。まあ、僕はちょっとBL好きとして何周かしているからそう感じるだけかもしれないけど(笑)。
──恋愛ものと言えば、「その着せ替え人形は恋をする」もコスプレに憧れる女子高校生・喜多川海夢が、雛人形の頭師を目指す男子・五条新菜に恋をする物語です。この作品はどの辺りが好きですか?
まず絵がきれいですよね。あと王子様気質じゃなく引っ込み思案な五条くんに手を差し伸べるギャルの喜多川さんという、昔の一般的な恋愛アニメと逆の構図になっていて。それからヒロインがギャルだからか、全体的にカラッとした雰囲気ですよね。
──「オタクに優しいギャル」という概念がありますが、喜多川さんは自身がアニメやゲームが好きというキャラクターですよね。
でもギャルもチャラいギャルとヤンキー系のギャルの2種類いますからね。あくまで心持ちの話ですが、喜多川さんは後者。ヤンキーは一途なところがあるので、そういう一本筋の通ったギャルが今熱いんじゃないですか。
──そんな子が美少女ゲームを遊んでいて、コスプレまでしようとするんだからファンタジー作品のような感触もあります。
確かに、不思議ですよね。ただ美少女ゲームをやってるところまではいいですけど、コスプレして好きなキャラになるときのテンションがオタクというよりギャルだなと思います。
──と言いますと?
オタクの場合はコスプレをしようとしても「私が○○になるなんて……」「こんな服を着ていいのかな」という戸惑いも少しはある。でも喜多川さんはそもそもギャルだから堂々としているし、五条くんに作ってもらった服を着て、「めっちゃかわいくない?」と素直に言っちゃう。ギャル特有のストレートな部分がスッキリするんですよね。
「今まで見たことない」を見せてくれるアニメが好き
──最後の一作は企業のバドミントン部の活動を描く「リーマンズクラブ」です。
この作品は題材が面白いです。バドミントンのアニメが珍しいし、しかも学生でなく社会人がスポーツする作品もあまりないじゃないですか。でも「リーマンズクラブ」で社会人がスポーツをするカッコよさに気付かされました。主人公たちはバドミントンをするだけでなく、普段はスーツでバリバリ仕事をしているのがカッコいいんですよ。
──主人公の尊も、当初は「バドミントンだけできる」と思って会社に入社してましたね。
でも実際は主人公も企画を考えたり営業もしたりするし、仕事が終わったら同僚と飲んだりする。自分なんかは社会人と言っても堅気じゃないくらいの仕事だし、スーツなんて漫才で着ることがあるくらいだけど、彼らはしっかり会社勤めをして、それに加えてスポーツもガッツリする。そのギャップがカッコいいですよね。今後は社会人スポーツものらしく、試合以外でも競合する会社との営業のやり合いみたいなのも見てみたいです。
──話も面白いし、試合シーンも迫力があっていいですよね。
バドミントンは割と緩急がすごくて、スマッシュしたときのシャトルなんかもすごく速いですけど、それをきちんと再現してますよね。めちゃめちゃいいリズムで気持ちいいです。
──今回選んだ作品以外に印象的なものはありますか?
いろいろあって迷いますけど……「怪人開発部の黒井津さん」は楽しく観てます。
──秘密結社でヒーローを倒す怪人を作り出すためにがんばる人々のコメディですね。特撮好き向けのネタも多いという。
ローカルヒーローも出ていますしね。それも面白いし全体的にほのぼのしているのも好きなんですが、僕は会社とクリエイターのせめぎ合いのような展開が描かれるところが特に好きです。アニメ業界でも、「こういうキャラクターを生み出したい」「こういうアニメを作りたい」みたいな思いがあるけど、会社の事情やスポンサーの思惑のおかげで違うものになることもあるんだろうなとか想像しちゃう(笑)。そういう路線の面白さだと「オンエアできない!」はもっと身に覚えがあるし。
──テレビ業界の裏側をAD視点で描く作品ですが、やはり中の人だからこそわかることもありますか。
僕も少し業界の様子を見てきてるんで、「そうだよなー確かになー」と思いながら観ています。例えば自分がアイデアを出してADさんなどに何かを作ってもらうことになっても、できあがってきたものがちょっと違ったりするとそれをボツにさせてもらうこともあります。こちらもプロですから。でもそれをAD側の視点で見るとこうなるよな、とか。あとは「東京24区」はリアリティがあるというか、ご都合主義じゃないストーリーが面白いです。
──「東京24区」は東京湾に浮かぶ人工島で幼なじみの青年3人が活躍するサスペンスですね。確かにスリリングな展開が続いています。
普通に人が死にますもんね。毎回選択肢が2つ与えられるけど、それがトロッコ問題で、どちらを選択しても犠牲が出る。その中でどうにか解決方法を探すけどあまりうまくいかず……視聴者がすっきりするような落としどころに無理やり行かないから、主要人物もいつどこで死ぬかわからなくてハラハラします。
──ここまでいろんな作品について語っていただきましたが、岩井さんはどんな作品が自身にヒットしやすいと感じますか?
挑戦的な作品が好きなんでしょうね。アニメーションの表現も話もそうなんですけど、「こういうの今まで見たことないな」というのを味わわせてくれるのが一番好き。だから「異世界美少女受肉おじさんと」も楽しんでますし。あれは数多い異世界ものの中でも行くところまで行ってますよね。
──30代サラリーマン2人が異世界に転生し、一方は金髪碧眼美少女になっていて、2人が恋愛関係に陥らないよう気を付けながら冒険する作品ですね。そうすると同じ恋愛ものでも、逆に安定感のある「からかい上手の高木さん3」は……。
でも「からかい上手の高木さん3」みたいな安心して観られるものも好きですよ。「俺、こういうの好きだな」というのを再確認させてくれるやつ。10作品観るとなったら、全部濃い作品じゃなくて2つくらいそういう安心できるものを入れておかないとこっちも持たないので。
──幕の内弁当で言う箸休め的なポジションというか、どちらも欠かせないと。
そうそう。
──つまり今回岩井さんは3作品挙げる企画だからメインのおかずになるような作品ばかりでしたが、それと一緒に楽しみたい作品もあるんですね。
はい。だから3つじゃなくてもっと多く作品を挙げるということなら、「からかい上手の高木さん3」もそうだし、「スローループ」みたいなものも入ってくるんですよね。