俊輝くんだから頼音役を演じられた(浦)
──第2クールでも龍太は強い存在感を放つキャラクターとして描かれていますが、浦さんが印象に残っているシーンはどこですか?
浦 龍太が頼音を諭すシーンが、この作品で一番重要なシーンだと個人的に考えていて。自分で行動を起こさなきゃとガチガチになりながら考えている頼音に対して、ムードメーカーである龍太は優しく言葉を与えて導いていく役どころなのですが、言葉のニュアンスを間違えると、龍太は上から目線になったり、とても情けない男になったりしてしまう。なので演じるうえでは、その塩梅を調整しながら、頼音を正しく導けるように意識しました。でも、実際に収録ブースで俊輝くんと掛け合いをしていると、自然に芝居ができるんですよね。
──熊谷さんは17歳ですからね。実際の頼音の年齢に近い。
浦 龍太はいろいろな戦いを経て、おそらく実年齢より精神年齢が高くなっている。一方で頼音はいろいろな嘘を吐いて生き抜いてきたけれど、命のやり取りをできるほど大人にはなりきれていない。その対比を考えると、僕と俊輝くんの年齢差がとてもリアルに感じられて、ちょっと龍太と頼音に自分たちを投影して芝居の方向性を考えるときもありました。もし、自分がこのシチュエーションにいたら、俊輝くんにどう声をかけるかな、とか。
──もし熊谷さんが20代だったとしたら、芝居の方向性も変わっていた?
浦 絶対に違いますね。頼音の一番魅力的なところは、とても頭の回る人間なんだけど、感情が追いついていなくて葛藤してしまう人間臭さだと思います。そんな頼音を演じられたのは俊輝くんだからですし、僕も自然と彼を支えてあげられる龍太にしなければ、と考えられたので。
熊谷 (照れながら)ありがとうございます。僕も浦さんと掛け合いをしていたからこそ、自然に演じることができたシーンがありました。この作品は出演されているキャストさんの人数がとても多く、僕自身がコロナ禍に声優のお仕事を始めたこともあったので、みんなで一堂に会して収録することが初めてで……。マイクワークも初めてだったのでどんな風に収録しているのか第1話から何度か見学させていただきました。
──頼音が登場しない第1クールのアフレコ現場でも、収録ブースには熊谷さんがいらっしゃったんですね。
熊谷 ほとんどの話数で収録の様子を間近で見させていただきました。その中でも特に浦さんが話しかけてくださっていたからこそ、第2クールでいざ頼音を演じるときになっても、あまり緊張せずにいられたんだと思っています。
入賀は敵?味方? 頼音たちが女王側を倒せるのかにも注目(熊谷)
──ちなみに、間近で浦さんのお芝居を見学されていて、特にすさまじいなと感じられたのはどの場面でしたか?
熊谷 もちろん全部ではあるんですけど……! 強いて1つに絞るのであれば、ギャグシーンと熱い思いをぶつけるシーンのギャップです。その使い分けがすさまじかったです。龍太というキャラクターをものすごく分析されてらっしゃるからこそなんだなと、役に向き合う姿勢を学ばせていただきました。それに、アドリブの使い方も絶妙で、特にマッサージチェアを使う龍太には笑わされましたね(笑)。
浦 最初はやりすぎて、音響監督さんから「もっとまともにして!」って指摘を受けました(笑)。
熊谷 ブースにいた皆さん、全員笑っていました(笑)。
浦 いや、だってこの作品でコメディリリーフを担っているのって、龍太と(佐藤)一彦くらいでしょ? だからこそ、バカをやれるシーンでははっちゃけないといけないなと思っていて。
熊谷 アドリブの幅の広さも、とても尊敬しています!
浦 とんでもない。
──対して、浦さんが熊谷さんのお芝居ですさまじいと感じられたのはどこですか?
浦 そうだな……。俊輝くんって、ご兄弟は……?
熊谷 歳の離れた姉がいるんですが、あまり構ってくれないし、母に間違えられるときすらあるというくらいの温度感ですね。
浦 なるほど。実は、頼音が親戚のお兄ちゃんのことを思うシーンを観ていると、セリフへの感情の込め方にとてもリアリティが感じられたんです。なので、もしかしたらご兄弟への思いを重ねられているのかな、と思っていたんですけど……。
熊谷 無意識だったかもしれません(笑)。
浦 だとしたら素晴らしいですよね。僕は人を思い遣るセリフって、形だけ演じることはたやすくできると思うんですけど、そこにどう思いを込めるかによってキャラクター像が左右されると思っているので、実はすごく難しい部分だと感じていて。なので、自然にあのお芝居ができる俊輝くんは素晴らしすぎる!
熊谷 ありがとうございます!
──さて、これからいよいよ頼音や龍太たちと第2クールでの敵となる女王・如月麻里亜たちとの最終決戦が描かれます。クライマックスへ向かう「多数欠」で、おふたりが特に推したいポイントを教えてください。
熊谷 第1クールからのキーマン・入賀(煉)が今のところ、敵か味方かよくわからないじゃないですか。なので、彼がどちらに着くのか予想しながら観ていただきたいです。頼音たち側なのか如月側なのか、はたまた第三者なのか……。女王の仲間のセラフィエルや(霧島)輝といった強敵を頼音たちが本当に倒せるの?という点にも注目していただきたいです。
浦 龍太役としては、第2クールから登場するチーマーの深見(傭平)が許せないんですよ! 原作を読んでいたときはそこまでだったのに、いざ龍太を演じてみると急に現れて見せ場を持っていく深見に対し「何だこいつ! イイとこさらっていきすぎ」と思ってしまって(笑)。でも、振り返れば彼に限らず、「多数欠」という作品の登場人物は誰もが強烈な印象を残しています。しかも、1話ずつ関係性や生死の状況が更新されていって、第1話からご覧いただいている方は最終回でどうなるのかまったく予想がついていないのではないでしょうか。そんな戦いの行方はもちろん、最後に描かれるみんなの表情まで楽しみにしていただきたいですね。
プロフィール
熊谷俊輝(クマガイトシキ)
2007年9月18日生まれ、岡山県出身。エイベックス・ピクチャーズ所属。幼少期は数々のミュージカルに出演し、その後声優として映画「ライオンキング」日本語吹き替え版のシンバ役(子供時代)、劇場版「家なき子 希望の歌声」日本語吹き替え版の主人公・レミ役に抜擢される。主なアニメの出演作に「遊戯王ゴーラッシュ!!」(王道遊飛役)、「君は冥土様。」(横谷人好役)などがある。
熊谷 俊輝(くまがい としき) (@toshi__joy) | X
浦和希(ウラカズキ)
10月18日生まれ、大阪府出身。ヴィムス所属。主な出演作に「ブルーロック」(潔世一役)のほか、「カミエラビ GOD.app」(小野護郎役)、「終末のハーレム」(土井翔太役)、「シンカリオン チェンジ ザ ワールド」(西大路ヤマト役)、「テクノロイド オーバーマインド」(コバルト役)、「シャドウバースF」(真壁スバル役)などがある。2024年に「第十八回声優アワード」で主演声優賞を受賞した。