アニメ「多数欠」熊谷俊輝×浦和希“クライマックス直前”対談|17歳の俊輝くんが演じた頼音だからこそ、自然な龍太が生まれた

アニメ「多数欠」が、7月から連続2クールで放送されている。原作はGANMA!で連載中の宮川大河によるWebコミック。“多数派が失われる”過酷な生き残りゲーム・多数欠に突如巻き込まれた少年少女たちが、絶大な力を持つ首謀者・皇帝に立ち向かうべく、謎の特殊能力・特権利を駆使しながら奮闘するさまが描かれる。監督・シリーズ構成は佐藤竜雄が担当。キャラクターデザインを林奈美、音楽をR・O・N、制作をサテライトが手がけている。

コミックナタリーでは、アニメのクライマックスを前に、第2クールの主人公・王野頼音おうのらいおん役の熊谷俊輝くまがいとしきと、第1クールから重要な役どころを担う一之瀬龍太いちのせりゅうた役・浦和希うらかずきとの対談をセッティング。第1クールの思い出のシーンや、役を演じるうえで注力したこと、第2クールで特に推したいポイントなどを語り合ってもらった。

取材・文 / 太田祥暉撮影 / 小川遼

第1クールで印象的だったのは、龍太が臣に話しかけるシーン(浦)

──「多数欠」の特徴として、第10話までと第11話からで主人公が変わることが挙げられます。まず、第10話までの第1クールでは、成田実篤なりたさねあつを主人公に皇帝と戦うストーリーが描かれました。浦さん演じる龍太は、実篤の親友というポジションのキャラクター。それもあって、第1クールでは強い印象を与えていましたね。

浦和希 とはいえ、第1話でさっそく死んでしまうんですけど(笑)。

──(笑)。ですけど、第3話で龍太は復活しますから。

 そうですね(笑)。龍太は実篤のことをとても信頼しているとはいえ、ムードメーカーとして描かれていますし、一見するとふざけている男と思われたかもしれません。でも、実は彼は周囲の人々をよく観察していて、今何を言えば盛り上がるのかを考えて言葉を選んでいる聡い子なんですよね。その聡さを前面に出すとキャラクター像がブレてしまうので、胸の内に秘めることを軸にして龍太を演じていきました。

一ノ瀬龍太。実篤の幼なじみで、幼い頃に母親を亡くした実篤に寄り添う。ムードメーカーで運動神経抜群だが遅刻魔という一面も。変象属の特権・融合権を使い、アタッカーとして仲間を支える。

一ノ瀬龍太。実篤の幼なじみで、幼い頃に母親を亡くした実篤に寄り添う。ムードメーカーで運動神経抜群だが遅刻魔という一面も。変象属の特権・融合権を使い、アタッカーとして仲間を支える。

左から龍太、実篤。

左から龍太、実篤。

──第1クールで浦さんが特に印象に残っているシーンはどこですか?

 第1クールの終盤、実篤と(藤代ふじしろ紗綾さあやが皇帝との対決で死んでしまったあと、龍太がともに生き残った仲間の(じんおみに話しかけるシーンです。僕らは続きがあることを知っていますけど、原作を読んでいない視聴者からしたら「えっ、もうここで終わりなの?」と思ってしまうであろうシーンですから、龍太が実篤たちに対してどんな思いを抱いていたのか、感情をきちんと表現するように努めたことを覚えています。

左から熊谷俊輝、浦和希。

左から熊谷俊輝、浦和希。

頭脳戦はバチっと決める、頼音のカッコよさを意識(熊谷)

──第2クールから本格稼働になった頼音ですが、熊谷さんは第1クールの物語をご覧になって、特に気になったキャラクターは誰ですか?

熊谷 これは隣に浦さんがいるからではないんですが(笑)、龍太です。とてもいい子ですし、ムードメーカーだし、能力もカッコいいですからね。……本当は、第2クールの物語まで込みだと生徒会長の八木橋やぎはし藤十郎とうじゅうろう)が好きなんですけどね。

 褒めてもらえてうれしいけど、「本当は」以降、言う必要あった?(笑)

──(笑)。そんな第1クールにて皇帝との戦いが終結した後、第2クールがスタートします。こちらでは熊谷さん演じる頼音を主人公に、皇帝なき後の世界の戦いが描かれています。そもそも、熊谷さんは途中からいきなり主人公を務めることになってしまったわけですが……。

熊谷 最初はプレッシャーがありました。でも、実篤と頼音は対照的なキャラクターなので、あまり第1クールのことは気にせずに演じるようにしました。頼音は自分の頭のよさに自信があるので、のちのち八木橋やその親友でライバルの須藤すどう良平りょうへい)が出てくると、ブレーンとしての自分の地位に対する焦りを感じてしまうのですが、頭脳戦はバチっと決める。そこのカッコよさを意識して収録に臨んでいた記憶があります。でも、頼音って長セリフがとても多くて。

王野頼音。嘘をつくのがうまく、頭を使ったハッタリが得意。自身のことを認めていてくれた唯一無二の親友を多数欠で失ったことから、皇帝を激しく憎むようになる。

王野頼音。嘘をつくのがうまく、頭を使ったハッタリが得意。自身のことを認めていてくれた唯一無二の親友を多数欠で失ったことから、皇帝を激しく憎むようになる。

──推理と説明描写が多いですからね。

熊谷 その中でも特に大変だったのが、皇帝が入れ替わっていることに気づき、秩序を守るため皇帝に成りすましているごぼう(護国鳳天寺暴麟丸ごごくほうてんじぼうりんまる)側に頼音が突撃するシーンです。モノローグと本音と嘘が入り乱れていたので、演じ分けにかなり苦戦しました。

 頼音は嘘がうまいので、心の声と表の声の感情が乖離していることが多々あるんですよね。それが間髪入れず立て続けに描かれるので、そのスイッチの切り替えが大変だったと思うんです。なので、俊輝くんは本当によくやっていたと思いますよ。

左から熊谷俊輝、浦和希。

左から熊谷俊輝、浦和希。