「吸血鬼すぐ死ぬ」盆ノ木至が、師匠である「モブサイコ100」のONEと対談!ONEによる描き下ろしイラストも (3/3)

ナギリみたいな“登場するマンガを間違えた”系のキャラってすごい好き(ONE)

──さて今回、対談用の特別企画として、ONE先生に「吸血鬼すぐ死ぬ」のキャラを描いていただきました。対談の時点ではまだラフですが……。

盆ノ木 拝見させていただきました……!

対談後、完成したONEのイラストと2人からのコメントが到着!

ONEによる描き下ろしイラスト。

ONEによる描き下ろしイラスト。

ONE

アニメ化おめでとうございます。面白いです。個性が溢れまくっている吸死キャラ達の活躍を今後とも楽しみにしております。

盆ノ木至

心臓が5拍ぐらい止まりました。全身から嬉汗が止まらないです。本編でほとんど絡まない3人がメチャクチャ楽しそうにしている…ONE先生の絵で…嬉しすぎる…スマホの待ち受けにします 本当にありがとうございます!!

──今は3キャラ描かれてますが、盆ノ木先生からは当初、「ロナルドかジョンかナギリを」というリクエストがありました。

盆ノ木 これは理由があって、ロナルドは主役だからで、ジョンはマスコットだから。そしてナギリに関しては完全に僕の欲で、ONE先生の絵柄で拝見したかったんですよ。

──ドラルクがいないのが意外ですね。

盆ノ木 「吸血鬼すぐ死ぬ」の絵を誰かに描いていただくことがたまにあるんですけど、けっこう「ドラルクは描くのがすごく難しい」って言われることが多くて……。僕の手クセ全開のキャラだからだと思いますが。

──ONEさんはこのリクエストを受けて、3体とも描いていただきました。

ONE ナギリはジョンと絡むエピソードがあったし、ロナルドと2人でジョンを持てばいいかなって。

盆ノ木 ありがとうございます、最高です。

ONE ナギリも好きなキャラクターです。ああいう“登場するマンガを間違えた”系のキャラってすごい好きで。シリアス系のキャラなんだけど、どんどんギャグに侵食されていって、それによって人間味を獲得するみたいな(笑)。

「吸血鬼すぐ死ぬ」に登場する辻斬りナギリ。極めて凶暴な特A級高等吸血鬼で、戦闘能力も高い。最初はシリアスなキャラとして登場したが……。

「吸血鬼すぐ死ぬ」に登場する辻斬りナギリ。極めて凶暴な特A級高等吸血鬼で、戦闘能力も高い。最初はシリアスなキャラとして登場したが……。

──ちなみに、ほかに描いてみたいキャラはいましたか?

ONE ドラルクは顔が好きなので描いてみたかったですね。

盆ノ木 やっぱりリクエストすればよかった!(笑) 顔が好きって言っていただけて光栄ですが、僕は先生の絵が大好きなので、僕の描く絵が先生の絵に寄ってるからかもしれないですね……。

僕がここにいられるのは、師匠に拾っていただいたおかげ(盆ノ木)

──アニメ「吸血鬼すぐ死ぬ」の話も伺っておきたいんですが。まずアニメ化決定と聞いたときはどんな気持ちでしたか?

盆ノ木 最初に感じたのは、「もしかしたらこれで打ち切られなくて済むかもしれん」ということですね……。とにかく毎回毎回、ずーっと「いつ打ち切られるんだ」と思ってたので、これで秋田書店もしばらくは置いといてくれるんじゃないかと。首の皮がつながったぞと思いました。

──うれしさより安堵なんですね。

ONE アニメ化の報告は以前にも受けて、そのときも伝えましたけど、改めておめでとうございます。こういうことを言うといつも「先生のおかげ」って言ってくださるんですけど、盆ノ木さんの地力が強かったからだと思うので。僕も盆ノ木さんは尊敬してるし、すごいなと思ってますよ。週刊連載をずっと続けるのも、僕にとってはすごいことだし。アニメ化と聞いて、単純に僕もがんばろうって気持ちになりましたね。

盆ノ木 ありがとうございます……。

──この取材の時点ではまだ1話しか放送されてないんですが、ONEさんは観られましたか?

ONE もちろん観ました。1話は若干特殊というか、まだ城が残ってた唯一の回でしたけど、原作に忠実で面白かったですね。

アニメ「吸血鬼すぐ死ぬ」第1話より。ドラルクは福山潤、ロナルドは古川慎が演じている。©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ

アニメ「吸血鬼すぐ死ぬ」第1話より。ドラルクは福山潤、ロナルドは古川慎が演じている。©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ

──原作って1コマでボケとツッコミが2往復することもあって、ギャグが詰め込まれてるじゃないですか。あの会話のテンポってアニメでは難しいのかなと思ってたんですけど、忠実に再現されてましたね。

盆ノ木 あんなにいいものになったのは、ひとえにスタッフの皆さん、監督さん、背景描いてくださる人、色を決めてくださる人、皆さんのおかげです。

ONE アニメ化すると作品に関わる人数がドーンと増えて、作品の強度が増すみたいなところはありますよね。「モブサイコ100」にしても、僕の描いたマンガとは別の、アニメの関係者が作ってくれた物が観られてすごくうれしいです。それがテレビで放送されて多くの人に観てもらえるのもすごいことだし、その種を蒔いた人間になれてるのもうれしいですし。宝物ですよ。

──まだ現時点では1話のみですが、盆ノ木先さんはアニメの反響を受けてどんなお気持ちですか。

盆ノ木 実を言うとTwitterとかネットニュースとか、おっかなくて直接見られなくて。家族に見てもらって「こうだったよ」と教えてもらってるんですけど、でもいろんないい反響をもらって本当にうれしいです。あとは身内の話になっちゃって申し訳ないんですけど、祖母がちょっと今、ボケてきちゃっているんですね。その祖母のところにジョンのぬいぐるみがあって、祖母は何のぬいぐるみとはあまりわかってなかったみたいなんですけど、アニメの1話を観てくれて「あなた、ジョンっていうのね。すごくかわいい」と膝に抱えて撫でてくれるようになりました。それはすごくうれしかったです。

画像左は、秋田書店オンラインストアで発売された、アルマジロのジョンのぬいぐるみ。画像右は、同ストアにて現在発売中のデスク用クッション。©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ

画像左は、秋田書店オンラインストアで発売された、アルマジロのジョンのぬいぐるみ。画像右は、同ストアにて現在発売中のデスク用クッション。©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ

──すごくいい話をありがとうございます。ジョンのぬいぐるみはもう売ってないんですが、デスク用クッションは10月31日24時まで販売中(参照:「吸血鬼すぐ死ぬ」アルマジロのジョン デスク用クッション - 秋田書店オンラインストア)、ということも書いておきます。あと「吸血鬼すぐ死ぬ」は声優さんが、メインじゃないキャラまでかなり豪華ですよね。今日何回も名前が出たゼンラニウムも大塚明夫さんで(笑)。声優さんってある程度、原作者からの希望はあったんでしょうか?

盆ノ木 実は事前に「希望する声優のリストをください」って言われて提出したんですよ。でもあくまで「その系統の声の人をお呼びします」みたいな、イメージの話だったので、気軽に大御所の方をリクエストしちゃったりして。そしたら、その名前を書いた方がどんどん来るっていう。「嘘だろ、何が起きてるんだ」って。

──作品公式Twitterに載っていたアフレコマンガにもありましたけど、その声優さんたちが、自分が書いたひどいセリフを……(笑)。

盆ノ木 そうなんですよ。アフレコも見学させていただいたんですけど、すごい大御所の人たちに何を言わせてるんだ、ごめんなさい!って感じでした(笑)。

──今後も楽しみにしております。最後になりますが、お互いへメッセージを贈っていただければ。

ONE さっきも言ったので繰り返しにはなるんですけど。盆ノ木さんは僕のおかげとか言ってくれますが、僕は最初から、面白いマンガを作る人だと思ってましたよ。もっともっと有名になって、もっともっと作品が広まって、アニメもみんなに観てもらえたら僕もうれしいなと思ってますので。アニメの続き、楽しみにしてますよ。

盆ノ木 1話が一番ゆっくりで、一番静かです。これからどんどんうるさくなっていきます(笑)。

ONE そうなんだ(笑)。あとは週刊連載、大変だと思いますけど体をお大事に。

盆ノ木 ありがとうございます。体を壊した時期もあるんですが、ペースを作れるようにがんばりたいです。先生はとてもご謙遜なさいましたけど、僕がここまで来られたのは、あの時先生に拾っていただいたからです。心のお師匠様なので、どうかこれからもよろしくお願いいたします。

ONE こちらこそ、よろしくお願いしますね。

プロフィール

盆ノ木至(ボンノキイタル)

2013年に週刊少年チャンピオン(秋田書店)の新人まんが賞で「吸血鬼すぐ死ぬ」が佳作を受賞し、雑誌に掲載。「モブサイコ100」で知られるONEのもとでアシスタント経験を積んだのち、2015年に「吸血鬼すぐ死ぬ」の連載を開始する。同作は2021年10月にTVアニメ化された。

ONE(ワン)

自身のサイトでWebマンガ「ワンパンマン」を公開し人気を博す。「ワンパンマン」は2012年より村田雄介を作画担当に迎えたリメイク版がとなりのヤングジャンプ(集英社)にて連載され、2015年にアニメ化。また2012年には小学館のWebマンガサイト・裏サンデーにて「モブサイコ100」の連載をスタートさせる。同作は2014年よりアプリ・マンガワンにも掲載。アニメ化、実写ドラマ化、舞台化を果たし、アニメ第3期「モブサイコ100 III」の制作も決定している。そのほか代表作に「魔界のオッサン」などがある。