「シャインポスト」キーワードは“嘘”、輝くアイドルたちの一筋縄ではいかない人間ドラマをキャストが語る (2/2)

「いっくよー!」のイントネーションは「スンドゥブ」で

──ちなみに蟹沢さんは今回が声優初挑戦、中川さん、長谷川さんも経験が少ないということで、3人で演技レッスンを受けたそうですね。

中川 岩男潤子さんのレッスンを1年間も受けさせていただいて。アフレコが始まってからも何回かあったんですけど、最近はだんだん回数も減ってきました。

蟹沢 私は声優初挑戦で、アフレコも初めてだったんですけど、やっぱり声だけでのお芝居って本当に難しくって。紗弓さんやゆうゆ(夏吉)さんにも本当にアフレコで助けていただきました。

中川 ヘッドフォンと受信機の付け方、教えてもらったよね!

長谷川 あとセリフのイントネーションがわからないときに、ほかの言葉に置き換えてくれたり。アフレコではなく楽曲のレコーディングの話になるんですけど、「Be Your Light!!」という曲の中に「いっくよー!」って言う箇所があるんです。「いっく↑よー!」って言わなきゃいけないところを、私は静岡県出身だから「いっ↑く↓よー!」って言っちゃって……「どうしよう」と思っていたら「『スンドゥブ』のイントネーションでいいよ」ってさゆみん(鈴代)が言ってくれたんだよね。

TVアニメ「シャインポスト」より。

TVアニメ「シャインポスト」より。

──及川監督や駱駝先生から何か言われたことはありましたか?

鈴代 アフレコが始まる前にプロモーション映像のナレーション録りがあったんですけど、そこに及川監督が来てくださって。「これからアフレコが始まるけど、けっこうテンポがいい作品だから、ナレーション録りのときにやったキャラよりもやり過ぎるぐらいやっちゃって大丈夫」「好きにやっていいよ」って言っていただいたのが印象的でした。「めちゃくちゃ楽しみだな」と思うと同時に「試されるな」と気が引き締まった覚えがあります。

夏吉 私は及川監督には「そのまんまやってください」って言われましたね。第1話のテスト段階から演技をそんなに変えていないというか、あんまりお芝居をしている感覚がなくしゃべっています。あと物語が進むといつもの理王とのギャップが垣間見える展開があるから、そのギャップを引き立たせるためにも「最初はめちゃめちゃはっちゃけた方がいいんじゃないか」とおっしゃっていただきました。全力全開で演じているので、収録終わった後で「喉がしんどいな」というときもあるぐらい(笑)。

蟹沢 駱駝先生に言っていただいたというか、お世話になったことなんですけど、まだアニメの台本がない段階で演技レッスンを受けていたときに、短いレッスン用台本を書いてくださったことがあって。杏夏ちゃんたちがいろんなシチュエーションで掛け合いをしているものなんですけど、それを使ってレッスンをさせていただけたおかげで、掛け合いの雰囲気とか、「杏夏ちゃんはこういうタイミングでこういうことを言う子なんだな」ということがわかって。お忙しい中だったのに書いてくださって、感謝しています。

長谷川 雪音は序盤と第7話以降で演じ方をスイッチしないといけないキャラで、及川監督には「その切り替えが難しいよ」と言われていました。特に序盤の、春ちゃんたちに意地悪なことを言ってみたり、熱血キャラとしてふるまったりしている雪音の演技は難しくて。第7話や第8話では雪音の素が出てくるんですけど、第7話の収録後には「今のが雪音の素だから覚えといて。今のがいいから覚えといて!」って直接言いにきてくださって、「今のだな、今のを覚えておこう」と思いました。

中川 紅葉も第7話と第8話にけっこうしゃべるシーンがあったので、岩男さんにレッスンしていただいたんですけど、そのときに及川監督からの伝言で「あんまり考えすぎずに、素直な感情で演じてほしい」って言われて。前半の紅葉はおバカキャラなんですけど、第7話くらいからシリアスになるので……その二面性を表現するのが難しくてすごく悩んでたときに、そう言ってもらえたのがうれしかったですね。

キャラに会いにきてくれるお客さんのためにパフォーマンスしたい

──2021年11月にはTINGSお披露目のミニライブ、今年の5月にはライバルユニット・HY:RAINとの対バンライブを行いましたね。印象に残っていることはありますか。

アイドルグループ・HY:RAINのメンバーで、左から苗川柔(CV:香里有佐)、氷海菜花(CV:高柳知葉)、黒金蓮(CV:芹澤優)、唐林絃葉(CV:久保田未夢)、唐林青葉(CV:高瀬くるみ)。5月14日に東京・山野ホールで行われたライブには、芹澤らキャスト5人が出演した。

アイドルグループ・HY:RAINのメンバーで、左から苗川柔(CV:香里有佐)、氷海菜花(CV:高柳知葉)、黒金蓮(CV:芹澤優)、唐林絃葉(CV:久保田未夢)、唐林青葉(CV:高瀬くるみ)。5月14日に東京・山野ホールで行われたライブには、芹澤らキャスト5人が出演した。

鈴代 私はあまりアイドルコンテンツに携わったことがなかったので、アイドルらしい振り付けで踊ったこともなかったんですけど、「芝居と似ているな」と思う部分がありました。見せ方によって、各々の踊り方にも個性が出てくるところとか……リハーサルで録った動画を1人ひとりのメンバーに注目して何回も見直したことがあったんですけど「あ、もえぴ(蟹沢)はここでこういう角度のポーズを取るからこういうニュアンスが出るなんだな」とか「りかりん(中川)はここでこうしているからキラキラして見えるんだ」とか、それぞれ違うんですよね。そういうことを学ぶ中で、演技のほうでも新しい表現の幅が広がったなと感じています。

夏吉 すごい、めっちゃ春ちゃんっぽい!

──蟹沢さんは普段からアイドルとしてステージに立っていらっしゃいますが、そのときと比べて違うところはありますか。

蟹沢 「シャインポスト」のライブのお客さんは、やっぱり玉城杏夏ちゃんに会いに来ていると思うので、普段の自分のステージと杏夏ちゃんとしてのステージは違いますね。≠MEのライブでは楽曲の主人公を想像して、その主人公を演じるような気持ちでパフォーマンスをしていて、アイドルっぽさよりも、楽曲の物語を表現することを優先していたんです。でもTINGSのライブについては「杏夏ちゃんはすごくアイドルっぽい見せ方をするタイプだろうな」と思うので、曲の雰囲気を掴みつつ、さらにアイドルらしい見せ方とか動き、角度を研究してパフォーマンスしていて。それが≠MEでの活動でも活かされることがあって、杏夏ちゃんにアイドルを学ばせてもらっています。

鈴代 そういえば振り入れが終わった後の休憩時間にもえぴがダンスの復習をしていたことがあったんだけど、それを見た振付師さんが「あそこのところのこの角度さ、俺にはない引き出しだったな」って言っていて。普段そうやって研究しているからこそ気付く人は気付くんだろうし、今の話を聞いて改めて「カッコいい!」って思いました。

中川 もえぴの普段の活動を私も見させていただいているんですけど、「同じもえぴなのにTINGSのときと違う!」って思うんです。どっちも魅力的なんですけど、全然魅せ方が違って、その引き出しがすごいよね。

蟹沢 いやあ……(照れつつ)私もMC中に「その切り返しすごい!」ってほかのメンバーに思うことがありましたし、歌やダンスでもすごく刺激をもらっています。あと2回目のときは、HY:RAINさんもゲストに来て対バンという形でやらせていただいたり、1回目よりもさらにSNSでの感想が多かったり、「シャインポスト」を一緒に盛り上げていただける方が増えていくのを実感してうれしかったですね。

左から長谷川里桃、蟹沢萌子、鈴代紗弓、夏吉ゆうこ、中川梨花。

左から長谷川里桃、蟹沢萌子、鈴代紗弓、夏吉ゆうこ、中川梨花。

夏吉 私は「現実にTINGSがいたらきっとこんな感じなんだろうな」という感じのライブをやらせてもらっているのが楽しくて。1回目のライブの箱が最初にTINGSがライブをする箱とほぼ同じキャパだったり、2回目では物語よりペースは速いけど、HY:RAINさんとライブさせてもらったり。TINGSが成長するにつれてどんどん立つ舞台も変わっていく、それを体験できるのは「シャインポスト」ならではだと思っています。さっき紗弓ちゃんも言っていた通り、声のお芝居で関わらせていただくだけだと中々こういうことは体験できないので、本当に青春っぽいことさせてもらっていて(笑)。

一同 (笑)。

夏吉 ライブに向けてみんなで練習したりする時間も長いですし、大人になってから同年代の子たちと一緒にこういうことをやる機会はないから、楽しませていただいていますね。

長谷川 私は人前で自分の言葉でお話しすることが苦手なんですけど、「シャインポスト」はありがたいことに、ラジオも生放送もそうですし、ライブでも自分の言葉でしゃべらなきゃいけないシーンが多くて。「あーまた今回も逃げられないな」って思うんですけど(笑)、そのたびに、さゆみんもゆうゆも萌ちゃんもりかりんも、人前で自分の言葉で届けるっていうことがすごく上手だなと感じます。尊敬できる存在がこんなに近くにいることは、すごくありがたいです。あとパフォーマンスについては、最初の振り入れのときに振付師の方から「柔らかい踊り方、丸い角がない踊り方をするけど、どっちかっていうとそれって女の子らしい踊り方だよね。でも雪音ちゃんはイケメンキャラだから、もっとカッコよく、美しい感じでテキパキ踊ってみて」と言われたのが印象的でした。

中川 私も中川梨花としてというよりは伊藤紅葉ちゃんとしてステージに立っている、そうありたいと思っているので、MCのときも別に「こうやってください」とは言われないんですけど、自然と紅葉ちゃんっぽいしゃべり方になっていますね。紅葉はあんまり敬語とか使わないから、私も「ありがとうございます」じゃなく「ありがとう」って言っちゃうとか。そういうふうに成りきっている感覚がすごく楽しいです。それからライブ中に強く感じたのは「ライブはみんなで作るものなんだな」ということでした。TINGSのペンライトは色が切り替わるようになっているんですけど、センター曲のときはお客さんがそれぞれのメンバーの色に切り替えてくださるんです。それぞれに推しはいるのかもしれないけど、TINGSのみんなのことを応援してくれている。「ありがたい景色だな」と思いつつ、パフォーマンスさせていただきました。

左から長谷川里桃、蟹沢萌子、鈴代紗弓、夏吉ゆうこ、中川梨花。

左から長谷川里桃、蟹沢萌子、鈴代紗弓、夏吉ゆうこ、中川梨花。

「シャインポスト」は一歩踏み出す勇気をもらえる作品

──これからいよいよアニメの放送が始まります。視聴者の皆さんへメッセージをいただけますでしょうか。

中川 「アイドル」がテーマのアニメですが、「アイドルには興味がないな」という方にこそ観ていただきたい作品です。アイドルといえばキラキラしているイメージがあるんですけど、いろんなものを抱えてステージに立っているからこそ、輝いているんだということを感じられるんじゃないかなって。それと何かをがんばっている方とか、一歩踏み出したいけどちょっと戸惑ってる方も勇気をもらえる作品になっていると思いますので、ぜひご自身の経験とも照らし合わせて観ていただきたいです。

長谷川 アイドルコンテンツって世の中に溢れていて、レッドオーシャンだと思うんですね。「今更こんな正統派なもので来るか」って思う方も、もしかしたらいるかもしれません。でもだからこそ、他の追随を許さないぐらい面白い作品になったらいいなと思います。アイドルコンテンツの一時代の鍵閉めができるぐらい、「シャインポストの次は出てこないんじゃないか」って思ってもらえるぐらいのものになるようがんばりますので、楽しんでいただけたらうれしいです。

蟹沢 物語が進んでいくほどにどんどん奥深さが感じられて、しかもキャラクター全員をもれなく大好きになってしまう作品だと思うので、本当にたくさんの方に観ていただきたいです。「シャインポスト」の世界はもちろんなんですけど、どのキャラクターも本当にいいところがたくさんあるので、皆さんにたくさん愛していただきたいです。

夏吉 「シャインポスト」にはたくさん魅力があると思いますが、私は特に楽曲がすばらしいと思っています。物語が進むにつれて、まだ発表されてない新しい曲も出てくるので楽しみにしていてください。ぜひアニメを観ていただいて、物語と照らし合わせながら楽曲を聴いて覚えて、あわよくばライブに来てもらって、いろんな媒体で楽しんでもらえれば。まずはアニメをよろしくお願いします。

鈴代 「シャインポスト」の世界観やキャラクターには本当に元気や明るい気持ちをもらえるんですけど、それと同時に勇気ももらえるなと思っています。一歩踏み出す勇気、じゃないですけど、「がんばるって素敵なことだな」と思わせてくれる作品だと強く感じているので、そういったところに注目しつつ、会話のテンポ感や人間ドラマも楽しみながらご覧ください。

プロフィール

鈴代紗弓(スズシロサユミ)

2月4日生まれ、神奈川県出身。声優。アーツビジョン所属。主な出演作に「かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-」(白銀圭役)、「ぼくたちは勉強ができない」(武元うるか役)、「ハイスコアガール」(大野晶役)、「荒野のコトブキ飛行隊」(キリエ役)など。

蟹沢萌子(カニサワモエコ)

1999年10月25日生まれ、神奈川県出身。アイドル。指原莉乃によるプロデュースのもと2019年2月に結成された、=LOVEの姉妹グループ・≠ME(ノットイコールミー)に所属している。

夏吉ゆうこ(ナツヨシユウコ)

5月1日生まれ、大阪府出身。声優。アニソン、ロック、歌謡曲、イタリア歌曲などさまざまな音楽に触れながら学生生活を送る。声優アーティスト育成プログラムセレクションで賢プロダクションの門を叩き、2018年より所属。代表作に「くノ一ツバキの胸の内」(ツバキ役)、「SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!」(マシマヒメコ役)、「魔王学院の不適合者~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~」(サーシャ・ネクロン役)、「アサルトリリィ BOUQUET」(白井夢結役)など。

長谷川里桃(ハセガワリモ)

1998年11月24日生まれ、静岡県出身。俳優、声優。mitt management所属。ドラマ、映画、舞台などに出演。代表作に映画「チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」(由美役)、ドラマ「黒崎くんの言いなりになんてならない」(山田菜摘役)、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」(愛野美奈子 / セーラーヴィーナス役)、舞台「アサルトリリィ・御台場女学校編」(長沢雪役)、ゲーム「けものフレンズ3」(アフリカゾウ役)など。

中川梨花(ナカガワリカ)

1998年4月21日生まれ、北海道札幌市出身。タレント、役者、声優。「踊る!さんま御殿!!」「しゃべくり007」「ネプリーグ」などのテレビ番組に出演。代表作に、映画「写真甲子園 0.5秒の夏」(霧島絢香役)、ドラマ「L 礼香の真実」(姫野礼香役)、舞台「時空警察 SIG-RAIDER 彷徨~エトランジェ~」(貴石きさらか役)など。