TVアニメ「戦国妖狐」水上作品ファンの斉藤壮馬が、水上悟志と念願の対談!制作秘話も続々 (2/2)

クライマックスは「最近で一番ゾクゾクした収録」

──お気に入りのシーンなどはありますか? ネタバレに配慮しながらだと難しいと思いますが(笑)。

斉藤 確かに(笑)。僕は、第1部「世直し姉弟編」のクライマックスですね。原作でも本当に大好きなシーンなんですけど、台本をもらってチェックしたときも「ああ、やっぱり好きだな」とウルッときてしまいました。

──第1部、つまり第1クールのアフレコはもう全部終わっているんですよね。

斉藤 はい、先日終わりました。放送前なのであまり詳しくは話さないほうがいいと思うんですけど、本当に素晴らしいクライマックスシーンになっています。そのときはたま役の高田憂希さんと良平さん、僕の3人で収録してたんですけど、終わった後に良平さんが「最近で一番ゾクゾクした収録だったかもしれない。3人で録れてよかった」とメッセージをくださったんです。実際、高田さんのお芝居も良平さんのお芝居も本当に素敵で……特にたまが泣かせてくるんですよ!

水上 (笑)。

斉藤 良平さんとはよく飲んだりはするんですけど、そんな連絡をくれるのは本当に珍しくて。原作の素晴らしさがいろんな人たちの心に響いて、つながっているんだなと実感した出来事でしたね。原作があって、それを愛する方々が集まってアニメーションが作られ、僕らがそこに声を吹き込んで……たぶんこの先もつながって届いていくだろうなという確信が得られました。あれはグッときましたね。

木村良平演じる真介。

木村良平演じる真介。

──第1部クライマックスというと、原作を読む限りでは迅火もかなり演じがいがありそうです。

斉藤 そうですね! 迅火に関しては本当にそのクライマックスシーンもそうですし、その前の岩の里のエピソードなんかもそうなんですけど、序盤のイメージとは違う表情をかなり見せてくれるので、収録では毎回汗だくになっていました。毎週、終わった後はあまり声が出なかったです(笑)。そのくらい全力を賭して臨んでしまいたくなる、臨まざるを得ない素晴らしい物語だったと思いますね。

水上 あのあたりは、もちろん楽しく描いてはいたんですけど……途中で千夜が登場したときくらいから、だんだん迅火が動かしづらい主人公になってきていて。

斉藤 あはははは!(笑)

水上 その頃から「そのうち千夜を主人公にした話とかも描きたいな」と思ってたんです。ならばいっそのこと、この話は第1部ということにしていったん畳んで、急に主人公を変えて第2部として再スタートさせてしまおうと。そのためにも第1部は盛り上げるだけ盛り上げて、描き切ってやろうという思いでしたね。

斉藤 だからあれだけ熱量の高いクライマックスになったんですね。

水上 なっちゃいましたね。当時は「さみだれ」もかなり終盤だったんで……。

斉藤 すごい時期ですね(笑)。

水上 めちゃくちゃでしたね。あっちもこっちもバタバタで、描き込みがどんどん増えていって。けっこう大変でした(笑)。

「戦国妖狐」7巻第36回「千鬼夜行」より。

「戦国妖狐」7巻第36回「千鬼夜行」より。

「戦国妖狐」7巻第38回「千夜の旅」より。

「戦国妖狐」7巻第38回「千夜の旅」より。

──そんな先生のお気に入りシーンというと?

水上 全体のラストですね。(旧版)17巻の最終話。今までいろんな連載を描いてきましたけど、すべての作品の中で「戦国妖狐」が一番いい最終回を描けたなと今でも思っています。

斉藤 おおー!

水上 RPGで言うとクリア後の世界をちょっとブラブラするみたいな、「やり切ったぞ」という感覚を味わってほしいなと思って描いた最終話で。

斉藤 僕もそういうプレイ後感、読後感みたいなものは大好きで……マンガでも小説でもゲームでも、終わりが近づいてくると「結末は気になるけど、ページをめくりたくない」みたいな感覚になるじゃないですか(笑)。その感覚を「戦国妖狐」の終盤は特に味わいながら読んでいたので、あのエンディングは僕も大好きです。ラストがアニメでどういう描き方をされるのかは僕もまだ知らないんですけど、そこはすごく楽しみですね。

1話目ですでに大満足の仕上がり

──印象に残っているセリフなどはありますか? 好きなシーン以上にネタバレ配慮の難しい話題ですが。

斉藤 そうですね(笑)。大丈夫そうなところで言うと、序盤の迅火の「これから行われるのは私による一方的なただの害獣駆除です」というセリフですね。これは言ってて本当に楽しかった。

水上 (笑)。

斉藤 役者としてはやはり、そういう普段の生活ではまず言わないような上から目線すぎるセリフを言える快感というのはありますね。あとは、技名とかも。普段のクールな迅火と精霊転化モードのときの熱い迅火とのコントラストは演じていてすごく楽しかったです。

「戦国妖狐」1巻第4回「断怪衆」より。

「戦国妖狐」1巻第4回「断怪衆」より。

──水上先生はいかがですか? 「このセリフを書けてうれしかった」とか、「どこかでこいつにこれを言わせたい」をうまく言わせられたとか。

水上 うーん……ネームを描いてると、けっこうそういうことの連続だったりするんですよね。

斉藤 なるほど!

水上 なので、たぶんあると思うんだけど、忘れていっちゃうことも多いかな。

斉藤 水上先生のセリフ回しって、小難しいワードとかおしゃれな言い回しというよりは「誰もが持っている語彙なんだけど、この物語の中で使われるとすごくグッとくる」みたいなところがすごくいいなと思ってるんですけど……。

水上 それはけっこう意識していて。

斉藤 あ、そうなんですね!

水上 ええ。なんでもない言葉に重みを持たせるために文脈で補強する、という。それは言葉だけじゃなくて……例えばこれは「スピリットサークル」の話なんですけど、1巻の最初に出てくるオバケのちょっとした表情が、最終回まで読み終わった後に見返すと重みが出るような顔になってるんですよ。

斉藤 すごい……。

──斉藤さんはアーティストとしても活動されていますが、その「なんでもない言葉に言葉以上の意味合いを乗せる」みたいなことって、たぶん作詞とかでも同じですよね。

斉藤 そうですね。「同じことだ」と言い切っちゃうのはちょっとおこがましいですけど、僕も自分の曲を作詞作曲するときに「普通の言葉AとBを組み合わせてどこまで遠くへ行けるか」というのはすごく意識しています。そういうことをやっているから余計に先生のセリフ回しにグッとくるというのはあるかもしれないですね。言葉ってどうしても速度的には遅くなりがちなんですけど、絵があることによって言葉を飛ばして伝えられるダイナミズムというのも、マンガならではの素晴らしさだなと思いますね。

──いろいろお話を伺って、1月の放送がますます楽しみになりました。

水上 現時点で2話目まで完成映像を見せていただいているんですが、1話目ですでにかなり満足しておりまして……。

斉藤 おおー。それはうれしいです。

水上 「これだ!」と。「おれがアニメに求めているのはこのレベルのクオリティだ」というのを逆に教えてくれたような1話目に仕上がっていて……で、その後に来た2話目がさらにそれを超えてきたので「わあ、すごい」と(笑)。

斉藤 僕はまだ完成版を見せてもらってないんですよ。先生がそこまでおっしゃるなら、この後すぐにデータを請求しようと思います(笑)。

水上 ははは(笑)。本当に素晴らしい絵を入れていただいて、演出、仕上げ、そしてもちろん声優さんの演技も含めて素晴らしいアニメーションを作っていただきました。今後、この先の話を観るのも楽しみです。

斉藤 我々キャスト陣も含め、チーム一丸となってこの素晴らしい作品を皆さんにお届けできるよう全力で制作に努めているところなので、期待していてください。繰り返しになりますけど、読者としても役者としても心に深く残る素晴らしい作品に出会えたことがうれしいですし、誇りにも思います。この記事を読んでいる読者の皆さんにはぜひアニメのオンエアを楽しみにしていただきつつ、原作も併せて「戦国妖狐」を楽しんでいただけますと幸いです。ぜひよろしくお願いいたします!

プロフィール

水上悟志(ミズカミサトシ)

大阪府出身。2002年、ヤングキングアワーズ増刊号(少年画報社)に掲載された「弥一郎」でデビュー。同年ヤングキングアワーズ(少年画報社)にて初連載作「散人左道」を発表、以後同誌を中心に活躍する。代表作に「惑星のさみだれ」、「スピリットサークル」、月刊コミックブレイド(マッグガーデン)ほかにて連載された「戦国妖狐」など。2018年に放送されたTVアニメ「プラネット・ウィズ」では、シリーズ構成・ネーム・キャラクター原案を務めた。現在はマッグガーデンのWebマンガサイトMAGCOMIで「最果てのソルテ」を連載中。

斉藤壮馬(サイトウソウマ)

4月22日生まれ。山梨県出身。2013年より81プロデュースに所属。2014年に放送されたテレビアニメ「ハイキュー!!」の山口忠役で注目を浴びた。これまでの出演作は「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」(夢野幻太郎役)、「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」(緋村剣心役)、「アイドリッシュセブン」(九条天役)、「ブルーロック」(千切豹馬役)など。