TVアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」エムアイカード特集 小林裕介(ナツキ・スバル役)&高橋李依(エミリア役)インタビュー|すべては「エミリアのために」レムの喪失から始まった、怒涛の2nd seasonを振り返る

レムが魔女教の大罪司教“暴食”担当のライに襲われ、人々の記憶から消えて眠り続ける状態となる衝撃の展開で幕を開けた「Re:ゼロから始める異世界生活」2nd season。2クールにわたる放送がいよいよクライマックスを迎える。亜人族が暮らす“聖域”の解放を目指す中で、スバルとエミリアは蓋をしていた自身の過去と向き合い、互いの本音をぶつけ合って、大きく成長を遂げていく。

コミックナタリーでは「Re:ゼロから始める異世界生活」とコラボしたエムアイカードの登場を記念して、スバル役・小林裕介とエミリア役・高橋李依の2ショットインタビューを実施した。ガーフィールやロズワールなどそれぞれの思惑が絡み合い、新たな事実も続々と明らかになった怒涛の2nd seasonを、2人はどのように感じ、演じたのか。そしてレムの不在は、スバルにどのような影響を与えたのか。今だからこそ語れる思いや、「全部が名セリフ」というクライマックスに向けた2人からのメッセージをお届けする。

取材・文 / 柳川春香

2期が来たら向き合わなきゃいけないと思っていた

──まずは遡ってのお話になりますが、「リゼロ」2期の制作が発表されたのは約2年前の「AnimeJapan 2019」でした。会場の歓声の大きさや、おふたりがステージ上で涙ぐんでいらっしゃったのをよく覚えています(参照:「Re:ゼロから始める異世界生活」TVアニメ2期発表に小林裕介、高橋李依が涙)。

高橋李依 「2期が決まったよ」というのは、アニメの関係者からイベントに先行して教えていただいていたんですが、そのときに聞いていたのが私だけだったので、今ここで大喜びするっていうのはちょっと違う気がして。本当に心からうれしかったんですけど、「リゼロ」ファンの皆さんと一緒に喜べる日まで、大きな声を出して喜ぶのはやめようって思っていたんです。そのずっと我慢していた気持ちが、AJの場で一気に溢れたというのと、皆さんの反応が見られて本当にほっとしたっていうのもありました。

小林裕介 僕はマネージャーから最初に聞いたんですよ。「2期が決まって、この期間にスケジュールが入ります」って。もちろん内心喜びつつ、でもやっぱり僕ら以上に、ファンの方たちが今か今かと待ち望んでくれていたと思うので、AJで発表できて、皆さんの歓声を受けて、それに感極まっての涙だったと思います。本当に待っててくれたんだなって。

高橋 あのときの喜びは忘れられないですね。

──待望の2nd seasonでしたが、前半クールの放送開始に先がけて、1期新編集版の最終回で「レムって、誰のこと?」という衝撃のシーンがお披露目されました。おふたりは1期のアフレコ当時、この展開はご存知だったんでしょうか?

小林 僕は確か、最終話の1話前くらいに知っていました。当時駅に出されていた屋外広告でも、レムがいなくなるようなことが示唆されていて。それを見つつ、心を痛めておりました。正直、2期が来たら向き合わなきゃいけないとは思ってたので、うれしいような、きついような気持ちでしたね。

2016年9月、アニメ終了直後の原作小説9巻発売時に駅に掲出された大型広告。「これでは絶対に終われない」というフレーズの「れ」の字のみが水色で彩られていた。

高橋 私は確か、アフレコのときは知らなかったと思います。最終話の放送直前に、「リゼロ」ファンの方が何かを気にしているな……と、その辺りで知ったんじゃないかな?

──レムに何かが起きているという伏線は、1期最終話にもちゃんと描かれていましたからね。

高橋 ただ、1期のときは本当に2期のことは知らなかったし、そこでは幸せな結末を描き切るべきだったと思うので、知らない状態でアフレコができててよかったと思います。逆に2期が決まったときは、「つかみは絶対に大丈夫だろう」という自信もありました。「リゼロ」の中でもトップクラスの衝撃だろうなと。

今までとはまったく違う芝居で臨んだ、29話「親子」

──そんな衝撃のシーンから始まった2nd seasonの前半クールでは、魔女教大罪司教“暴食”担当のライ、“強欲”担当のレグルスをはじめ、“聖域”の住人であるガーフィールやリューズ、さらに大罪の魔女も勢揃いするなど、新キャラクターが次々登場しました。それぞれ個性が強いですが、新キャラクターの中で印象深い存在を挙げるとしたら?

小林 僕は、エキドナですね。

──そうなんですか! ちょっと意外というか、スバル自身はエキドナに複雑な気持ちを持っていると思いますが……。

小林 エキドナはスバルの事情をいろいろ知ってくれていますし、何より死に戻りを初めて誰かに打ち明けることができて、今まで彼が抱えてきたものを少なからず軽くしてくれたのは事実ですから。最終的には少し裏切られる形にはなっちゃいましたけど、それも含めて、プラスマイナスで言うと、スバルにとってはプラスの出会いになったんじゃないかと。癒された存在だったと思うし、前半で一番影響を受けた存在だと思います。

──確かに、スバルが他者に死に戻りを告白できたことは、ファンとしてもホッとする部分はありました。高橋さんはいかがでしょうか?

高橋 迷いますね……! 新キャラクターかあ……。

小林 エミリア、ぶっちゃけそんなに関わってないもんね。

高橋 関わってないことないよ!!

小林 ごめんなさーい(笑)。

高橋 (笑)。2nd seasonで活躍を見せてくれたのは、1期のときからいてくれたペトラとかオットーもなんですよね。すごく頼もしく、たくましくなってくれた。力になっていないキャラクターが1人もいないんです。2期から出てきたキャラクターに関しても、登場シーンの短かった魔女たちの主張もしっかり描かれていたし、限られた尺の中で丁寧に作ってくださったなと思います。

小林 とはいえ、情報量は1期と比べてもかなり多かったですよね。今思うとそれはキャラクターの数に比例していたのかもしれません。

──前半クールはほかにも、スバルの両親が登場する29話「親子」や、嫉妬の魔女・サテラが姿を現す34話「らぶらぶらぶらぶらぶらぶゆー」、スバルが“試練”で自分が死に戻りしたあとの景色を目にする37話「魔女たちの茶会」など、インパクトのあるエピソードが続きました。特に印象に残った1話を挙げるとしたら、どれになりますか?

高橋 個人的には、スバルの親子回です。お芝居はもちろんですが、演出も本当に素敵だなって思いました。私は「リゼロ」のラジオをやらせていただいていて、皆さんのメールをいただきながら考察していったりもするんですけど、あのとき舞っていた桜の花言葉がフランスでは「私を忘れないで」であるとか、お父さんとは隣に座っていて、お母さんとは向き合って話すとか、女親と男親との会話の違いとか……その1つひとつが物語をとても効果的に見せてくれていて、大好きな話です。

小林 僕もやっぱり、「親子」になっちゃいますね。そもそも、スバルって1期の頃から引きこもりという設定ですけど、説得力がちょっと薄かったと思うんです。引きこもりにしてはやたらコミュニケーション取ろうとしてくるし、しゃべり方も陽気でうっとうしいし。

──引きこもりと言われると、もっと暗くて引っ込み思案なキャラクターをイメージしますよね。

小林 それが実際なんで引きこもりになったのかということが描かれて、彼のことをまた深くわかるようになりました。何より、両親はスバルのすべてを知っていて、いつものスバルみたいにテンションを高くしても見透かされてしまうから、ほかのキャラクターとは会話の仕方が全然変わっちゃうなと、台本を読んだときに感じて。ナツキ・スバルとしてのお芝居を、今までとまったく違うものにしたいと思って臨んだものだったんです。両親とそれ以外だけじゃなく、対お父さんと対お母さんでもまた振る舞いが変わるし。そういうふうに芝居をあれこれ考えることができた話数なので、面白かったですし、ずっと泣いていたのでしんどかったというのもあります(笑)。

エミリアの精神年齢はあんまり変わっていない

──改めてお芝居に注目して29話を観返したくなりました。そしてスバルの過去に加えて、2nd seasonの後半クールでは、ついにエミリアの過去も明らかになりましたね。

高橋 過去編が終わったということで、やっと言えます! OVA「氷結の絆」のキービジュアルもそうですが、これまで描かれていたエミリアのスタート地点は、氷の中からだったんですよ。「氷結の絆」も前日譚とはいえ、生まれたての頃から描いた話ではなかった。その氷の中“から”始まったエミリアの、氷の中“まで”が今回の“試練”で描かれて、「つながった……!」って、すごくすっきりしました。

──過去編はつらいエピソードでしたけど、小さい頃のエミリアはめちゃくちゃかわいかったです。

高橋 ありがとうございます! すごく楽しくこだわってやらせていただきました。エミリアの子供時代を演じるにあたって、精神年齢を下げるってことは実はそこまでやっていなくて、エミリアの魂はあんまり変わってないってことに気が付きました(笑)。こうしたい、ああしてほしい、私はこう思う!みたいな意志の強さが、今とあんまり変わってないのが、かわいいポイントの1つだと思います。個人的なお話ですが、1期と2期の間に、他作品でも小さい子を演じさせていただく機会があったので、過去編のエピソードを演じる前に、自分のお芝居の引き出しを一個作れていたのはよかったなと思いました。

──エミリアの過去を見て、ペテルギウスのかつての姿であるジュースの登場に驚いた視聴者も多かったと思います。

高橋 そうですよね! それで言うと、スバルがガーフとの戦いでなぜか使えた「不可視なる神の一撃(インビジブル・プロヴィデンス)」と、ジュースが戦いの中で使った「見えざる手」が同じだってことも、視覚的になってわかりやすくなったと思います。

──今改めて過去の話数を観返すと、いろんなことがわかりそうです。

小林 それこそ1期のペテルギウスの登場シーンを観返したりするといいかも。

高橋 ねえ、ペテルギウス殺さないでよー!!

小林 (笑)。1期も、2期の前半クールも、今ならあれもこれも伏線だったんだなってことがわかると思います。

レムの存在はスバルの足かせでもあった

──小林さんは、後半クールで明らかになった事柄の中で、印象深いものはありますか?

小林 本当にいろいろわかってきましたよね。ガーフィールがなんで聖域に縛られていたのか、聖域がなんでできたのか。その中で僕が一番「ああ、そうなんだ」って思ったのは、ちょうど45話で明らかになりましたが、ロズワールの真意。これまで全然何を考えているかわからないロズワールでしたが、蓋を開けてみれば、すごく“人っぽい”ことを考えてたんだなって。

──愛する人にもう一度会いたいという思いも、自分が信じ続けてきたものを否定されたくないという気持ちも、ごく普通のものですもんね。

小林 愛情の深さがかなり狂気じみているだけで、誰もが持ちうる感情に縛られていたんですよね。そう思うと、謎の人物だったロズワールが、一気に身近に思えて。正直ロズワールとスバルの主張は、どちらが正しいとも言い切れないんですよ。とはいえスバルの中には、今までいろんな人からもらった思いがあるので、あくまで自分の決めた正しさに向かって突き進んでいく。本当の意味でスバルとロズワールの対決が始まったのは、45話だったなと思います。

──ロズワールの思惑も、ガーフが聖域に縛られている理由も、すごく個人的なものでしたよね。1期はスバルが強大な敵に立ち向かうエピソードが中心でしたが、2期では個々人の内面と向き合っていく話が多かったように感じます。

高橋 確かにそうかも。

小林 でもそうやって、スバルが人に対して真正面から向き合えるようになったのは、レムのおかげなんだろうなって思います。スバルはほかの人を説得する中で、かつてレムが自分に言ってくれたことと同じような言葉を語りかけているんですよ。エミリアに対しても、ガーフィールに対しても。だからレムの言葉がなかったら2期は成立しない、レムのおかげでスバルは成長を遂げたんだなって、改めて感じることができました。

──2nd seasonでのレムの不在が、スバルにどういう影響を与えていると思うか?というのは伺いたかったんですが、そばにいなくても、レムの言葉がスバルを支え続けていると。

小林 でありつつ、レムの存在はスバルにとって、足かせになってるところもあったと思うんですよ。

──足かせ、ですか。

小林 本人はそう思ってないんですけど、「レムのためにがんばらなきゃいけない」って思いが強すぎて、万が一、またレムみたいなことが起こったらダメだって死に戻りを急いだりして。前半クールでスバルが自分をどんどんないがしろにしていったのも、大本を辿ればレムの悲劇があったからなんです。

──周りの人をレムのような目に合わせないために、自分だけが無理をすればいいという考えになっていたと。

小林 そこが本当にジレンマというか、今のスバルを作っているのはレムであり、それと同じくらいスバルを負の方向に走らせていたのもレムだった。でもそれを、魔女たちとの対話を経てようやく吹っ切ることができたので、後半クールからはただただ起爆剤として、「レムがいたから今の俺はこうやって行動できる」という存在に、改めてなれた気がします。