コミックナタリー Power Push -「ユリ熊嵐」森島明子×「少女決戦オルギア」江島絵理

百合好きマンガ家が目指す“女の子パラダイス宇宙”とは

百合は宇宙!(森島)

江島 わかります! 使命感みたいな感じですよね! ヤングマガジン サードVol.12に載る原稿を今描いているんですが、「これはどう見ても百合だな」というシーンがあって、そこは体力があるうちに描き始めて……。

森島 ペース配分を(笑)。

江島 ここを一番いい出来にしなくてはならない、という使命感ですね。

森島 わかります、わかります! 私、自分が百合を描くために生まれてきた、と思っています。

江島 すごい……。

「少女決戦オルギア」2巻より、もえと舞子のバトルシーン。

森島 例えばすごく上手なバトルマンガを読んだら、「こんなに上手な人がもういるんだから、私はバトルは描かなくていい」と思うんですが、本当にバトルを描くのが好きな人だったら、どんなに敵わない人がいようと描くと思うんですよ。私はそうじゃない。でも百合マンガならば、どんなに上手な人がいても、どんなに自分が売れなくても、一生描きたいんです。周囲の編集さんや出版社、アニメの幾原(邦彦)監督やスタッフさんにも本当に恵まれて、これはもう巡り合わせだ!と。

江島 ああ、すごい……。私は女の子が好きなので、百合マンガは私の好きなものによって完結する宇宙だと思っています。

森島 百合は宇宙!

江島 男キャラが邪魔だとは思っていないんです。でもやっぱりかわいい女の子がメイン。かわいい女の子とかわいい女の子の、かわいいやり取りにピントが合う……こんなに幸せなことはない。男キャラといえば、「ユリ熊嵐」に出てくる男3人はすごくバランスがよくて、キャラが立ってると思いました。

森島 はい、私は気に入ってていろいろエピソードを考えているんですが、「“ユリ”熊嵐」だから男3人はどうしてもカットになってしまう場面が多くて。だからおまけマンガに収録したりしてますね。

森島明子「星学院工科大学 夜間部」

江島 「星学院工科大学 夜間部」には男キャラがたくさん出てきますよね。

森島 あれはイケメンいっぱいの雑誌(カグヤSPADE・新書館)で描いたので(笑)。でも私自身、男の人を描くのは全然嫌じゃないんですよ。一般誌で描くなら百合マンガに男キャラが出てきても大丈夫。でも百合専門誌では……ここは私の女の子パラダイス宇宙なので、あんまり出てきてほしくないんです。例えば普通のカフェに行ったら、男女のスタッフがいても何も思わないけど、メイドカフェに行ったら男のスタッフに給仕してほしくない(笑)。

「私が考えたかわいいキャラを見てくれ!!」という気持ち(江島)

──すごくよくわかりました(笑)。森島先生の百合作品には、目がキリッとした“イケメン女子”ともいうべきカッコいい女性たちが出てきますよね。

「ユリ熊嵐」2巻より、ユリーカ。

江島 そう! 私、「ユリ熊嵐」のユリーカみたいな目のキャラが出てくると、「ああ、いま私は森島先生のマンガを読んでるんだ……」という実感に包まれます。あと「半熟女子」のマリ先輩もカッコいい女の子ですよね。「女同士でどこまでやればセックスか」って聞かれたときに「やればいいじゃない どこまでも」のセリフ! 私すごく好きで……!

森島 あれは定番の質問なので、とりあえず答えさせておこうと思って(笑)。現実の同性愛者の女性にボーイッシュな人が多いんですよ。だからイケメン女子をマンガに入れないと、自分の中でリアル感が出ないんです。ただ私の好みかと言われるとそうでもないんですが……私にはフェチをぶち込むという癖があって(笑)。ボーイッシュなキャラには、あえてシャツの下にミニスカートとブーツにするとか。

江島 好みの設定やキャラがいると、モチベーションが上がりますよね! 私も「少女決戦オルギア」の中では西見堂さんが好みで……。

森島 伝わってきます、めちゃくちゃ(笑)。

「少女決戦オルギア」1巻より、西見堂亜子の登場シーン。

江島 西見堂さんはメガネをかけているんですが、「メガネを外すとかわいい」ではなく、むしろ「メガネによってかわいさが完成するんだ!」というフェチをぶち込みました。西見堂さんともえは、「私が考えたかわいいキャラを見てくれ!!」という気持ちが炸裂しているかもしれないですね。

森島 伝わってきますよ! 江島先生のキャラはぷにぷに柔らかそう。ほっぺたが特に! ゆるふわ! ゆるふわ!

江島 (笑)。普通に描くと、輪郭がぷにぷにになり過ぎてしまって。輪郭を削って、ちょっと時間を置いて見てみるとまだぷにぷにしすぎているので削って……と3段階くらいを経て世に出ます(笑)。

森島 わかるわー。ほっぺはインフレが起きますよね。どんどんどんどんぷにぷにしていく。

「ユリ熊嵐」1巻より、紅羽と銀子。

江島 先生の描く女の子もラインが柔らかいですよね。質感というか、触感というか、ぷにぷにしてる。

森島 ぷには正義ですから。

江島 ぷには正義!?

森島 ぷには正義です。百合マンガを描くときに、私は「触感」と「食感」を大事にしようと思っていて。女性を性的に好きではない女の人にも読んでほしいと思っているのですが、そういう人にも抵抗ないエロティックでセクシャルな表現を入れるにはどうすればいいんだろうって考えたんです。そこで「食欲で描こう!」と。

江島絵理「少女決戦オルギア」 / 発売中 / 講談社
1巻 / 650円
2巻 / 650円

20年に一度、秘密裏に開催されるという「ゲーム」と呼ばれる魔法・武器・格闘なんでもありのバトルロイヤル。日本国内に100以上ある魔術団体から各1名ずつ参加する「宿主」の女子高生が、夜な夜な命をかけた戦いを繰り返していた。その参加者の1人・水巻舞子は、怪物に魅入られた親友・緋乃の命を救うため「ゲーム」で最後まで勝ち残り、最強の怪物「サンダルフォン」を手に入れる必要があった。

原作:イクニゴマキナコ 作画:森島明子「ユリ熊嵐」 / 発売中 / 幻冬舎コミックス
1巻 / 680円
2巻 / 680円

地味で存在感のない“透明な高校生”椿輝紅羽に話しかけてくれるのは、先月編入してきた美少女転校生・百合城銀子。しかし元気で明るく可愛くて人気者の銀子の笑顔に違和感を覚える紅羽は、銀子が本当は人間ではなく熊なのでは? と思っていて……。

江島絵理(エジマエリ)

2014年発売のヤングマガジン サードVol.2(講談社)にてスタートした「少女決戦オルギア」でデビュー。現在もヤングマガジン サードにて同作を連載中。

森島明子(モリシマアキコ)

anise(テラ出版)の「しあわせ絵日記」で1997年にデビュー。百合ものや4コマ漫画を多く手がけ、2015年1月放送のTVアニメ「ユリ熊嵐」ではキャラクター原案を担当。現在「ユリ熊嵐」マンガ版を月刊コミックバーズ(幻冬舎コミックス)にて連載中。著作に「半熟女子」「レンアイ★女子課」「女の子合わせ」「初めて、彼女と。」「聖純少女パラダイム」など。