ペンギンが人間に混じっていても「京都だし、そんなもんかな」って(夏目)
──では、夏目さんのデビューのきっかけはなんだったんでしょうか。
夏目 もともと小学生のときからマンガは描いてたんですが、大学に入ったくらいからコミティアに参加するようになって。恐らく4年間ぐらい作品を発表していたんですけど、そこでBE・LOVE編集部の前担当さんに声をかけていただいたのがきっかけですね。そのまま本誌で「ちとせちゃん」が始まった感じです。
にゃんぞぬデシ ちとせちゃんってどうやって思いついたんですか?
夏目 うーん、なんで描いたんだっけな……?(笑) ペンギンはもともとかわいくて大好きで、コミティアで声をかけてもらうきっかけになった同人誌も、京都にペンギンがいるお話だったんですよね。ペンギンって、背中を丸めているところがおじさんっぽく見えたり、どことなく人間に近いところがあるじゃないですか。厳密にいうと直立二足歩行ではないんですけど、パッと見は直立二足歩行に見えるし、似た同じ歩き方をする動物として、人間の中に自然に混ざっていたら面白いんじゃないかなって。
にゃんぞぬデシ なるほど。ちとせちゃんってなんか憎めないっていうか……人間っぽいところがあるなって思ってて。
夏目 ああ、なんか調子に乗ってるところがあったり(笑)。
にゃんぞぬデシ いやいや! あの、なんていうか、ただかわいいとかただひたすら優しいとかじゃなくて、そういう人間味のあるところもまたかわいいっていうか。
夏目 一応、ペンギンとして描いてはいるんですけど、イメージ的には幼稚園生、4~5歳ぐらいの子供みたいな感じなんですよ。あまりそういう年代の子と接する機会がないので、正確に描写しているわけではないんですけど。
にゃんぞぬデシ 確かにちょっと自我が芽生えてきたぐらいの子供……。
夏目 そうそう。自分の意思もあってわがままもたくさん言うけど、見た目はかわいいっていうそんな年頃の子供かな。
──当たり前のようにちとせちゃんが人間の中に混ざっているのも面白いですよね。
夏目 なんか京都という土地柄、そんなことがあっても受け入れられちゃうかなって……「まあ京都だし、そんなもんかな」って(笑)。
にゃんぞぬデシ ああ、わかります。京都ってなんか不思議なパワーがあるところだなって思います。
夏目 京都ってそういうところありますよね。
にゃんぞぬデシ 私、京都に行ったら絶対鴨川に行くんですよ。夜の鴨川が大好きで。
夏目 ああ、いいですよね。
にゃんぞぬデシ 水面に光が反射しているのが超キレイで。まず鴨川の橋から川を見て、その後下に降りて川のギリギリまで行って、くるりを聴きます(笑)。
夏目 確かに、それはくるりを聴かないと(笑)。
デシさんの勢いに振り回されるちとせを描いてみたい(夏目)
──もしデシさんがちとせちゃんと京都で出会ったら、どこに行ってみたいですか?
にゃんぞぬデシ 私、今年の春くらいに京都に旅行に行ったんですけど、そのとき、街にちとせちゃんがいたらという妄想をしていたところでした(笑)。え、でもどうしようかな……。マンガで、ちとせちゃんがライブハウスに行く回がありますよね。
夏目 ありますね、激しめのライブに行く回(笑)。
──原作の第28話ですね。
にゃんぞぬデシ はい。あれ、ヘドバンしているちとせちゃんがかわいいんですよね(笑)。だから私も夜の鴨川に行って、新たな曲をちとせちゃんと一緒に作りたいなって。私がアコギで歌ってちとせちゃんにはヘドバンしてもらいたいです。
夏目 デシさんの曲でヘドバンするんですか(笑)。
にゃんぞぬデシ はい(笑)。絶対かわいいと思います!
──ではもし、「ちとせちゃん」の世界にデシさんを投入するとしたら?
にゃんぞぬデシ それはやばい!
夏目 投入するとしたら……。なんかでも、ご本人のキャラがかなり濃いから(笑)。ちとせって基本的には人を振り回す側が多いと思うんですけど、逆にデシさんの勢いに振り回されるちとせみたいなのを描いてみたいですね。
にゃんぞぬデシ わ……想像するだけでかわいいです!
夏目 私は今も京都で暮らしているんですが、京都で音楽活動をしている方って四条河原町の交差点とか、京阪の祇園四条駅とか、四条大橋のところで弾き語りをされるんですよね。そこにデシさんが立って、その横にちとせがいるみたいな感じとか。
にゃんぞぬデシ うわあ!(興奮気味)
夏目 なんか絵面が想像できてしまって(笑)。すごくしっくり来ると思う。
なんでこんなに生命を宿せるんだろうって(にゃんぞぬデシ)
──「ちとせちゃん」が大好きなにゃんぞぬデシさんですが、特にお気に入りのエピソードはありますか?
にゃんぞぬデシ アニメ第4話の、カエルとちとせちゃんのエピソードが大好きで。
夏目 わかります! 私もあのお話好きです。
にゃんぞぬデシ 本当ですか! カエルと競争したり、並んで雨宿りしてるのがめっちゃかわいくて好きなんですよ。あと、アニメの第1話で、ちとせちゃんを橋の上に乗せてくれた修学旅行中の女子高生に、桜を見せてあげるシーンも好きです。ほかにもいっぱいあります。
──本当に読み込まれてますね、付箋の数がすごいですし。
にゃんぞぬデシ 「ちとせちゃん」のストーリーって、実はすごくドラマティックだなって思うんですよ。いったいどうやってこういうストーリーが浮かんでくるんですか?
夏目 基本的には担当さんと一緒にお話を決める打ち合わせをして、まず場所を決めて。そのあと、すぐに行ける場所なら自分で実際にその場所に行って考えます。歩きながらパッと思いつくこともあるんですけど、最近はなんとなくぼんやり話をイメージしてから、描きたい場所に行って詳細を詰めるっていうのが多いです。
にゃんぞぬデシ 事前に場所に行ってから描くんですね。だから読んでいて旅行したような気分になるのかな。
夏目 ああ、そんなふうに感じてもらえてたらうれしいですね。
にゃんぞぬデシ マンガやアニメを観ていると、だんだんちとせちゃんって本当に存在しているんじゃないかと思えてきて。なんでこんなに生命を宿せるんだろうって。もうなんかリアルすぎて。ちとせちゃんの存在が。だから「ちとせちゃん」を読んでいると、私なんか感動しちゃうんですよね。
夏目 感動ですか?
にゃんぞぬデシ ちとせちゃんは人間の言葉を発さないけど、行動や仕草、表情で言葉以上のものを伝えて相手の誰の心に中にも入り込むというか、染み込む優しさがあるというか。言葉を話さないのに、言葉以上のものを伝えることができるちとせちゃんに、勝手に生き方を教えてもらってるんです。私も、こんなに愛のあるちとせちゃんみたいな人間になるのが目標だなって思ってます。
夏目 ちとせちゃんみたいな人間(笑)。
にゃんぞぬデシ (笑)。でも、思いやりがあって、気付かないようなところに気付ける、本当に憧れです! ちとせちゃんを通してみんな登場人物が優しくなっていると思うんですよ。本当に大好きです。
夏目 こちらこそ、そんなふうに言ってもらえて……もう、熱量がうれしいです。ありがとうございます。
夢はGRASS STAGEに7年連続で出ること(にゃんぞぬデシ)
夏目 私もお聞きしたいことがあって。これから音楽を続けていくうえで、夢とか目標ってありますか? 私、そういうお話を聞くのが大好きで……。
にゃんぞぬデシ 「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」っていう大きなフェスがあるんですけど、そのフェスの一番大きいGRASS STAGEに7年連続で出るのが夢です!
夏目 7年連続!
にゃんぞぬデシ まず曲も愛されていてライブも楽しんでもらえるようなアーティストにならないと、大きいステージに出るのは難しいし、何年も大きなステージに出続けるのは難しい。だから1度だけじゃなくて、何年も続けて大きなステージに出続けられる長く愛されるアーティストになれたらいいなって思っています。
夏目 素晴らしいと思います。最近、がんばっている人を見守りたい気持ちが強くて。デシさんのTwitterとかを観ていると、本当にその夢を叶えて欲しいって気持ちになります。これからも応援してます。
にゃんぞぬデシ ありがとうございます、がんばります!
──これからもどんどん活動の場を広げていかれると思うんですが、早速年明けの1月14日には成人式代わりのワンマンライブが決まってますよね。
夏目 今年成人式ですか?
にゃんぞぬデシ そうです!
夏目 わーお若い。
にゃんぞぬデシ 以前から、Shibuya eggmanというライブハウスでライブをやりたいと思っていて、祝日の月曜日ならお客さんも来やすいだろうなと思って1月14日に予約をしたんですよ。そしたらその2週間後ぐらいにカレンダーを見て、「この日、成人式行く日じゃん」って気付いたんですよね……(笑)。でもお客さんには、遊園地に来たみたいに楽しんでもらえるライブにしたいなって思います。
──「ちとせちゃん」をきっかけに、にゃんぞぬデシさんのことが気になるって人も増えてきていると思います。
にゃんぞぬデシ そうなんですよ! 私、Twitterとかですごいエゴサーチをするんですけど(笑)、「ちとせちゃん」を観てほかの曲も聴いたって方がけっこういらっしゃって……めっちゃうれしくて。
夏目 よかった、私もうれしいです。
にゃんぞぬデシ 「泣く子も笑う」も歌うので、遊びに来てください。
夏目 実は14日、東京にいるんですよ。
にゃんぞぬデシ えー! ぜひ来てください!
夏目 行きたいな。時間確認します!
- にゃんぞぬデシ「泣く子も笑う」
- 配信中 / 三毛猫レコーズ
- ライブ情報
にゃんぞぬデシワンマンライブ
「成にゃん式ワンマンライブ~会場はにゃんぞぬランドです~」 -
- 2019年1月14日(月・祝)
会場:東京・Shibuya eggman
時間:18:00開場、18:30開演
チケット料金:前売り2800円、学生1300円(※ドリンク代別)
- 2019年1月14日(月・祝)
会場:東京・Shibuya eggman
- TVアニメ「おこしやす、ちとせちゃん」
- 放送情報
-
TOKYO MX、KBS京都にて毎週金曜日25:35~
- スタッフ / キャスト
-
原作:夏目靫子(「BE・LOVE」連載)
監督:矢立きょう
制作会社:ギャザリング
音楽:こぐま
製作・著作:株式会社VAP
ナレーション:堤真一
キャスト:遊佐浩二、小岩井ことり
©夏目靫子・講談社 / VAP
- 夏目靫子「おこしやす、ちとせちゃん③」
- 発売中 / 講談社
- にゃんぞぬデシ
- 1998年8月4日、福島県生まれのシンガーソングライター。中学校3年生のときに曲を作り始め、高校2年生からライブ活動をスタートさせる。ギター弾き語りを中心にしながらもバンドスタイルを取り入れるなど、多彩なライブ活動を精力的に展開。みずみずしい感性から生み出されるポップセンス溢れる楽曲と、情感豊かな澄んだ歌声で支持を集める。
- 夏目靫子(ナツメユキコ)
- 京都生まれ、京都在住。現在、BE・LOVE(講談社)にて「おこしやす、ちとせちゃん」を連載中。最新4巻は2月13日に発売。