アニメ「モンスター娘のお医者さん」特集 作者・折口良乃×「モンスター娘のいる日常」作者・オカヤド対談|人間ではないことが逆にプラスとなるように 両作家が語り尽くすモン娘への愛

人間でないことは逆にプラスである。そんなお話になるように

──モン娘を題材にした物語を作る中で、特に大事にしていることはありますか?

尻尾を使ってグラスを掴むサーフェ。

折口 やっぱり、モン娘らしさをどう描いていくかですね。人間を描いている小説だったら、長いセリフの間に「頭を掻いた」とか「コーヒーを飲んだ」といった地の文を入れるんです。そういうところで、例えば「蛇の尻尾を使って●●をした」といった描写を入れると、「この子は人間ではない種族なんだ」とアピールができるんです。そういった何気ない描写からも“人外”ならではの魅力が伝わればと思っています。

オカヤド へえ……。

折口 そんな「考えもしなかった」みたいなリアクションやめてください(笑)。

──やはり、小説とマンガでは、意識するポイントが違うのでしょうか?

オカヤド きっと、真面目なマンガ家だと、「うんうん、そうだよね」と言うのだと思いますよ。僕が不真面目なだけです(笑)。

折口 あはは(笑)。

──では、オカヤドさんが大事にしていることも真面目に教えてください。

「モンスター娘のいる日常」3巻の表紙イラストより、ケンタウロスのセントレアと来留主。

オカヤド 僕は、ラミアだったら蛇、ケンタウロスだったら馬といった実際の動物の生態をキャラクター性にも生かせるように考えています。「モンスター娘のいる日常」の場合、そこをしっかり描くことで、その後のエッチな展開に問題なくつなげることができるんですよ。例えば、ケンタウロスだったら背中に乗ることができて乗るけれど、掴むところがないから、しょうがなくおっぱいを掴むとか(笑)。その「しょうがない」で主人公の行動を正当化するためにも、そういった生態はしっかりと考えています。

──確かに、ヒロインが人間ではなく、モンスター娘だからこそ起きるラッキースケベ的な展開は、作品の大きな魅力だと思います。では逆に、「こういった描き方はしない」と意識していることはありますか?

オカヤド 例えば、「人魚姫」などもそうなのですが、人間ではない種族であることが原因で不幸になってしまうお話も多いと思うんです。でも、「モンスター娘のいる日常」では絶対にそういうオチにはしない。人間でないことは不幸になる原因どころか、逆にプラスのことでもある。そんなお話になるようにしています。

折口 オカヤド先生のお話を聞いてハッとしたのですが、私も自分の種族や生まれを極端に否定するようなことは描かないようにしています。いろいろな事情で、自分の生まれについて嫌だと思っているキャラもいるのですが、「自分はこの種族、この身体だから嫌だ」とは思わせない。人間も普通は「もし手が6本あったらなあ」とか「下半身が馬だったらなあ」とか思わないじゃないですか(笑)。だから、モン娘の側も「人間だったらなあ」と思わないのは当たり前かなって。性格的に自信がなかったり、卑屈だったりする子はいますが……。

「モンスター娘のお医者さん」に登場するサイクロプスの少女・メメ。対人恐怖症の気があり、時々挙動不審になってしまう。

──「モンスター娘のお医者さん」のサイクロプスのメメ・ルドンなどは、そういうタイプですね。

折口 メメの性格に関しても、あくまでもあの子の個性なんです。物語のテーマとして、モン娘を否定的に書くことはしません。それは、たぶん「モンスター娘のいる日常」から教わったことだと思います。

「モンスター娘のいる日常」は聖典

──今のお話からも、モン娘への愛が伝わってきます。ちなみにおふたりは、モン娘のどこに魅力を感じて、そこまで好きになったのですか?

折口 逆説的になりますが、モン娘には、人間じゃないからこその魅力があると思うんです。魅力は種族ごとに違ったりするので「なぜ人間ではないことが魅力なのか?」と聞かれると答えに困るのですが……。昔、人に「根本的に人間が嫌いだから、人外が好きなのでは?」と言われたこともあるんですけれど、自分では違うと思っていて(笑)。ただ、人間じゃないからこそ惹かれてしまうという業は、昔から持っていた気がしますね。それを目に見える形ではっきり示してくれたのが、オカヤド先生の「モンスター娘のいる日常」。だから、私にとっては、本当に聖典みたいな本なんです。

オカヤド 聖典って、そんな偉そうなものではないですけれど(笑)。

2020年6月に1年ぶりの新刊として刊行された「モンスター娘のいる日常」16巻。温泉でのエピソードが収録されている。

折口 私にとってはそうなんですよ(笑)。

──オカヤドさんも、聖典というくらいに大きな影響を受けた作品はありますか?

オカヤド 子供の頃、モン娘に惹かれたきっかけはゲームに出てくる女の子型のモンスターなんです。一番強く意識したのは「ロマンシング サガ3」というゲームなのですが、あの作品って、妖精系の敵はほぼ全部が全裸の女の子だったんです。

──ドット絵でしたが、かわいい敵キャラも多い作品でしたね。

オカヤド そうなんですよ。だから、敵と戦いながら、「このかわいい子たちを倒す必要があるのかな? この子たちと仲良くなってもいいじゃん」と思ったんですよ(笑)。それと、先ほどお話しした「人間じゃないから幸せになれない」みたいなお話に対する疑問とかが頭の中で組み合わさって、「モンスターかどうかなんて関係ないじゃん。モンスターの女の子を好きになってもいいじゃん」って思うようになりました。「別に人間である必要はないんだ」ってことを認めれば、自分が幸せになれると気付いたんでしょうね。

頭をひねって、誤解されるような診療行為を考えています

──新しいモンスター娘を生み出すとき、どのように考えているのか教えてください。先にどの種族の子かを決めてから、人格的なキャラクター性を加えていくのでしょうか? それとも、先にキャラクター性を決めてから、それに合う種族を当てはめるのでしょうか?

オカヤド 僕は完全に種族的な特徴からキャラクターを作っていきますね。

折口 そうなんですか。

「モンスター娘のいる日常」より、ミーア、セントレア、パピのカラーイラスト。

オカヤド 例えば、ミーアだったら蛇で、蛇だったら執着心が強いだろうから、とにかく主人公にベッタリくっついていくタイプ。セントレアはケンタウロスで馬だから、騎士からイメージを持ってきているし、ハーピーのパピは鳥だから3歩歩いたら忘れるみたいなとにかくおバカなキャラ。そんな感じで生物的な特徴からキャラクターを作っています。折口先生は、どうしてますか?

折口 私はケースバイケースですが、診察行為において何をするか、どうすればちょっと誤解されるような診療になるのかから考えます。私としては真面目な診療でもいいのですが、担当編集が「エロを入れてほしい」と言うので、毎回頭をひねって、誤解されるような診療行為を考えています(笑)。

オカヤド 誤解される診療行為っていいですね(笑)。

折口 そういう意味では、どの種族とどんな診療行為をするのかから決めているので、キャラクター性よりも先に種族を決めていることになりますね。

「モンスター娘のお医者さん」第1話より。モンスター娘を触診するグレン。

──診療行為が決まることで、キャラクター性も固まっていくのでしょうか?

折口 グレンの診療行為を受けるということは、身体なり精神なりに悩みがあるということなので、そこからキャラクターのイメージが膨らむことは多いです。

──ちなみに、グレンの助手で診療行為を手伝う側のサーフェは、なぜ半人半蛇のラミアという種族になったのですか?

折口 まずは、私は鱗持ちの種族が好きで、ラミアも好きだからです(笑)。あと、「モンスター娘のいる日常」の(メインヒロインの)ミーアがラミアで人気も高いことは正直、意識していて、メインキャラに1人はラミアが欲しいなとも思いました。

オカヤド そうだったんですか。

「モンスター娘のお医者さん」第1話より。蹄鉄を付けられるティサリア。

折口 はい。でも実は最初期の案では助手はラミアではなく、植物娘だったんですよ。薬とかを作れるイメージもあるので。でも、人気のあるラミアをメインヒロインにすることになり、もとはメインヒロインだった(ケンタウロスの)ティサリアがサブに回ったんです。それから、メインヒロインのラミアを助手にすることになりました。だから、サーフェだけはほかのモン娘とは少し作り方が違いましたね。