タMAPPA×「GRANBLUE FANTASY The Animation Season 2」|挑戦をやめない、それがMAPPA魂(ソウル) 成長し続けるスタジオの最新作「グラブル」を見よ!

MAPPAと言えばこれ、という色がないのが強み

──梅本さんから見た場合のMAPPAらしさとは?

梅本 ほかの会社より馬鹿が多い。

一同 (笑)。

梅本 いい意味で、ですよもちろん。僕がこの業界に入った頃はまだオタクと呼ばれる人が多い、オールドスクールな匂いのするスタジオが多かった。なんとなくみんなどんよりとつまらなさそうな顔をしていて。でもMAPPAはそういう子も少しはいるけどそうじゃない子もいて。オタクな人が悪いというわけではなく、いろんな人たちで遊びに行ったりして社内の連携がうまく取れていた。割と社員同士で飲みに行くでしょう?

大塚 確かに飲みに行ったり、社員旅行とかも行ったりします。

梅本唯監督

梅本 いろんな経験という意味でもチーム作りという意味でも、そういう遊びはアニメ作りにおいて大事ですよ。だからMAPPAはほかの会社に比べると変わった人が多い印象はある。

大塚 (創業者の)丸山正雄の、みんなで飯を食べるのが好きとかそういう精神を引き継いでいるのかもしれませんね。

──作風の部分ではいかがでしょう?

梅本 僕が言うのは少しおかしいかもしれないけど、何かの作品を見て「MAPPAだ」と感じたことはないかな。普通、会社でも作品でも縛りがないと変な感じになると思うんです。うちの会社は、この作品はこういうルックでいくというルールというか……例えばジブリにはジブリの色があるし、「ドラえもん」だとリアルな作画はしない、みたいな。絵をワンカット見ただけでその会社、作品だとわかるような縛り。それがMAPPAという枠だとない。

──MAPPAの色ではなく、作品ごとに色がしっかり出ているということでしょうか。

梅本 そうです。さっき多様性みたいな話がありましたけど、会社の色ではなく、タイトルごとに色を作って勝負している。すごく器用だし、その幅広さは強さだと思います。

大塚 MAPPAといえばこういう作品、こういう絵柄みたいな色をまったく排除していて、少女マンガもやりますし、アクションもギャグもやる。その根底にあるのは、僕自身もそうですがスタジオにいるクリエイターや社員の「まだまだ成長しないといけない」という気持ちの強さなんですよね。だから「MAPPAももっと労力がかからない作品とかもやったほうがいいよ」と言われることもあるけど、それが本当に今の自分たちにとって必要なのか考えると……。まだまだ挑戦していきたいですね。

──いちアニメファンとしてMAPPAはすでに一大ブランドだと思っていましたが、内部にそんな気持ちは微塵もないと。

大塚 そうですね。いっぱい挑戦して、それを乗り越えることでアニメ制作会社としてのしっかりした土台を作っている段階ですよ。梅本監督は現場にいたからよくわかると思いますが、「BANANA FISH」なんてなかなか難易度が高くてうちのクリエイターも苦戦していたけど、大変だったぶん作りながら成長できた部分もあった。だから次に内海紘子監督と一緒にやるときはもう少しうまくやれるだろうし、ほかの作品でもその経験を活かせる場面が増えてくる。まだまだ、そういった挑戦の繰り返しです。

「グラブル」シーズン2では引き算の美学に挑戦する

──続いて、そのMAPPAの新たな挑戦となる「GRANBLUE FANTASY The Animation Season 2」について伺います。今回の制作にあたってシーズン1も観られたと思いますが、どんな印象でしたか?

大塚 「神撃のバハムート GENESIS」と同じCygames作品だし、よくテレビなどで流れていた「GRANBLUE FANTASY」のCMは観ていたんですよ。だからもともと存在は知っていたけど、そのアニメを観させてもらっての第一印象は「明るいアニメだな」と。

──「神撃のバハムート」がダークファンタジーでしたからね。

大塚 そうそう。「こっちも、もう少し軽く作ったほうがよかったかな」みたいな(笑)。同じアニメ会社から見ると、線の処理とか新しいことに挑戦しているなと驚きました。

──輪郭線をゲームのタッチに近づけるなど、線の処理は確かに「GRANBLUE FANTASY」らしいビジュアルを実現した前作の特徴でした。その点は、今回はどのようになりますか?

「GRANBLUE FANTASY The Animation Season 2」より。

梅本 シーズン1とは違ったアプローチですが、作画的には挑戦的なことをしています。具体的に言うと、線や影の色数はかなり少なくしていて。「GRANBLUE FANTASY」の絵ってけっこうこってりと塗ってあり情報量が多いのが特徴ですが、それをそのままアニメにすると、一枚絵としてはいいけど動かすと観ていて疲れるし、印象が散漫になってしまう。だから今回は線や色の引き算をしたうえでどれだけ「GRANBLUE FANTASY」らしい印象をアニメに落とし込めるかという工夫をしています。

──なるほど。ほかに今回の特徴を教えていただけますか。

梅本 世界観の広がりみたいなところですね。キャラクターの持っているものとか艇がどのようにして港に停泊するかとか、そういうディテールの部分で「GRANBLUE FANTASY」の世界観を見せたいです。

──ほかにどんなシーンに注目するべきでしょう?

梅本 ご飯を食べるシーンとか。最近だと福田里香さんの「フード理論」という言葉もありますけど。

大塚学社長

大塚 確かに、1話のコンテに目を通していてご飯を食べているところはよかったですね。キャラクターの関係性がすごくよくわかるし、彼らがどのように騎空艇で生活しているか伝わってきて。

梅本 そういうことです。アニメを作るときに逃げてもいいことと、逃げないほうがいいことがあるんですよ。例えば今回の序盤の舞台は城砦都市アルビオンという島ですが、前半はこういう小道があってこんな雰囲気だというのをしっかり描写するけど、後半になるとそういう街の描写は飛ばす。それは先に説明をしておかないと、視聴者が観ていて「これ何?」という部分が増えて集中できないからですね。

──架空の世界が舞台の作品ならではの難しさですね。

梅本 現実世界の学園が舞台なら、突然屋上を出しても視聴者も「これくらいの高さだよね」とわかったりするんですけどね。ただ、そうした世界観の説明をやり過ぎてもそれはそれで見づらい。

大塚 描けばいいというものでもなくって、騎空艇にエンジンがあるのか、化石燃料があるのかみたいな部分はゲームの設定があるから描ける。でもそれをアニメで説明しても面白いかというと……。

「GRANBLUE FANTASY The Animation Season 2」より。

梅本 そういった説明はキャラクターの動きの中でやればいいことですよね。その辺りのバランスは気を付けています。

──ストーリー面はいかがでしょう? 続編ものだと前作を観ていないと入りづらいと考える人もいそうですが。

梅本 先ほどの食事シーンもそうですが、1話はオリジナルの話で「こういうキャラクターたちがいます」という紹介になるように作っているので、初めての人にも臆せず観てほしいです。その後は前作からの続きでゲームのストーリーに沿って冒険します。ただ前作は仲間を集めて回りましたが、今回はそこからの展開ということで話がかなり動き始めるので面白くなると思います。

──最後に本作にかける意気込みをお聞かせください。

梅本 視聴者には原作を知っている方もたくさんいるので、そうした人たちの期待に添えるようにしたいし、その一方で「アニメではこうしたんだ」というオリジナルなところも愛してもらいたい。その両方を意識して一生懸命作っているので、よろしくお願い致します。

「GRANBLUE FANTASY The Animation Season 2」より。

大塚 現場が意識することではないんですけど、今回の「GRANBLUE FANTASY」の難しいところは前作に比べてどうするかというところで。A-1 PicturesさんはA-1 Picturesさんで素晴らしい形に辿り着いていたので、僕らはこのメンバーでどう「GRANBLUE FANTASY」をアニメ化するかという意識でやっています。

梅本 そうですね。

大塚 同じことをしようとしても、メンバーが違うから絶対に単なる真似にしかならない。だからMAPPAに集まってくれたメンバーのチームで何を作れるかという挑戦になっています。

──この挑戦によってまたMAPPAの多様性が広がると。

大塚 はい。梅本監督がうちでちゃんとシリーズ作品をやるのはこれが初めてだし、それが次にどう発展していくのかというのも楽しみですね。

左から大塚学社長、梅本唯監督。