TVアニメ「GRANBLUE FANTASY The Animation Season 2」が10月4日に放送開始する。2017年に放送されたシーズン1より2年ぶりとなる新作は、MAPPAがアニメーション制作を担当。アニメファンからは信頼の厚いスタジオが「グラブル」をどのように映像化したのか。
放送スタートを記念して、コミックナタリーではMAPPA×「GRANBLUE FANTASY The Animation Season 2」特集を実施。大塚学社長と梅本唯監督にスタジオの歩みと歴代作品を振り返ってもらい、その最新作である「グラブル」シーズン2の魅力に迫る。
取材・文 / はるのおと 撮影 / 稲垣謙一
MAPPAとは
2011年、マッドハウスでアニメーションプロデューサーとして活躍した丸山正雄が設立。2012年放送の「坂道のアポロン」を皮切りに、「てーきゅう」「牙狼」「神撃のバハムート」などのアニメを制作する。大塚学が2代目社長となった2016年には「この世界の片隅に」「ユーリ!!! on ICE」がヒット。2019年には「ユーリ!!! on ICE」「BANANA FISH」「ゾンビランドサガ」「どろろ」「賭ケグルイ××」をフィーチャーした企画展「MAPPA SHOW CASE」が国内4カ所で開催された。
大塚社長が語る
MAPPAの新境地を切り開いた歴代作品
「坂道のアポロン」(2012年放送)
渡辺信一郎が久々に監督をすることで話題を集めた本作を、大塚社長は「MAPPAのすべての始まり」と位置づける。それは単にMAPPAが制作して最初に放送されたからというわけではなく、この作品を通じて作られた縁が現在のMAPPAの礎となっているためだ。
「神撃のバハムート GENESIS」(2014年放送)
大塚社長が「業界内のMAPPAを見る目が変わった」と自負する節目が「神撃のバハムート GENESIS」「残響のテロル」「牙狼〈GARO〉-炎の刻印-」という3作品が一挙に放送された2014年。「神撃のバハムート GENESIS」のPVには、梅本監督も「このクオリティの作品をテレビでやるのか」と驚いたという。
挑戦と変化を続けるのがMAPPA
──MAPPAの歴代作品として大塚社長に挙げていただいた3つのタイトルについて、1つずつ詳しくお聞かせください。まずはMAPPAの第1作となる「坂道のアポロン」です。
大塚 すべては「坂道のアポロン」から始まったし、その後への影響も大きい。あのときのメンバーは癖の強い人ばかりだったけど、彼らがその後もしっかりと支えてくれたおかげで会社を軌道に乗せることができましたし、今の会社の主軸になっている。梅本さんにも参加していただきましたしね。
梅本 仲がいいアニメーターから「MAPPAの人を紹介したい」と言われて、その後すぐに大塚くんから電話が来たんですよ。それで「すぐに会おう」と言われて、いいなって。そういう紹介の連絡ってダラダラと待たされることが多いので。実際会ってみて人柄のよさも感じたので絵コンテで参加させてもらいました。
大塚 それからも梅本さんと付き合いはあったものの、別の長期作品の監督などをされていたのでなかなかお願いするタイミングがなくって。
梅本 「坂道のアポロン」からのメンバーがたくさん残っているから、MAPPAにはたまに遊びには行っていたけどね。それで「牙狼〈GARO〉-VANISHING LINE-」や「BANANA FISH」をやったところで「『GRANBLUE FANTASY The Animation Season 2』の監督をやってほしい」と頼まれて今に至ります。
大塚 そんな梅本さんと同じように、「坂道のアポロン」のメンバーは長くお付き合いさせてもらっています。
──次に挙げられたのは「神撃のバハムート GENESIS」など2014年に作られた3作品。こちらについては?
大塚 世間的な知名度という点では「ユーリ!!! on ICE」や「この世界の片隅に」がヒットした2016年作品の影響は大きかったと思います。でも会社として一番変化があったのは2014年に「残響のテロル」「神撃のバハムート GENESIS」「牙狼〈GARO〉-炎の刻印-」の3作品を一気に作ったことなんですよ。
──どれも手が込んでいて作るのが大変そうだと感じます。
大塚 MAPPAは渡辺信一郎さんの「坂道のアポロン」で始まった会社なので、彼のオリジナル作品である「残響のテロル」は気合いが入っていたし、「神撃のバハムート GENESIS」や「牙狼〈GARO〉-炎の刻印-」も潤沢な予算のおかげでそれまでにできないことができた。普通は同時に作るのは避けるところですが、当時は会社としていかに成長できるかをすごく考えていたので、あえて挑戦しました。
──その挑戦の結果が力作揃いになったと。
大塚 その3作品をなんとかやりきったおかげで、うちの業界内での見られ方が変わってきたんです。それまでは企画が通らなかったり、思うように仕事を作れなかったりだったけど、2014年以降は常に仕事が来るようになりました。
梅本 「神撃のバハムート GENESIS」のPVを観たとき「これ、本当にテレビでやるの?」って思ったんですよ。渡辺さんの「残響のテロル」と同時に重そうなのをやるとは聞いていたけど、あのPVを観たときは「こんなことテレビでできるんだ」と驚いたのを覚えています。
──「神撃のバハムート GENESIS」はPVだけでなく、放送中もずっとクオリティが高いままでしたよね。
大塚 アニメーターのみんなが全力でやってくれたおかげです。でもまだまだ京都アニメーションさんだったりの完成度に比べるとスタジオとして力不足なこともあって、そこに追いつくにはどうするべきかというのがリアリティを持って感じられるようになりました。
梅本 あと外から見ていて、2014年の少し前くらいから多様性が増したと感じたかな。もともとMAPPAはうまい方が多いし、がっちり作るっていうのはわかっていたけど。
大塚 そこはあえて、ですね。それまでハードな作風の監督が多かったので変えようとしていました。だから東映アニメーションの宇田鋼之介さんや境宗久さんにお願いして「DAYS」を作って。その成果が、境さんが監督した「ゾンビランドサガ」につながるという。
──確かに最近の「ゾンビランドサガ」や「さらざんまい」、「ユーリ!!! on ICE」などは以前のMAPPAのイメージとは違ってポップな作風ですね。
大塚 「ゾンビランドサガ」なんかは監督と若い演出家が集まって、特にチームで作ってるという感覚はすごく強かったです。境監督がすごくお酒を好きなので仲良く飲みに行ったりしていて。そういうチームワークで作られた作品が最近は増えてきた印象です。アニメって集団作業なので、やっぱりチーム戦なんですよ。
──そのチームで作られたグルーヴ感が、「ゾンビランドサガ」のあの妙なノリにつながったと。アイドルものはライブシーンの演出など独特の技術が求められますし、難しいジャンルという印象があるのですが、取り組みへの不安などはありませんでしたか?
大塚 確かに難しい作品ではありましたが、うちはどんどん新しいことに挑戦したい会社なので。アイドルものだって全然やりたかったですよ。最初のほうは3Dに慣れてないおかげで動きが硬くて(笑)。12話の間で3Dも成長したので、そういった挑戦をして成長していくのがうちのスタジオとしての特徴なのかなと思います。
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MAPPAと言えばこれ、という色がないのが強み