密かに、着実に、進化してきた“まんがタイムオリジナル”の現在 リニューアルで変わったことと、過去から受け継いだもの (2/2)

編集長による連載中の作品レビュー

雑誌の顔として安定した柱でありつづける「ラディカル・ホスピタル」

──せっかくなので編集者の視点から、現在連載されている作品を紹介してもらえますか。

では先日発売された5月号の掲載順に紹介しましょうか。「どうにも不器用な夫婦でして。」は、お見合いから始まる夫婦ものですね。見知らぬ者同士が家族になっていく過程が面白い。アンケートでの評価が高く、昔から4コママンガを読んでいる方からの支持が特に厚い印象があります。もどかしい関係を描くうまさがあり、落ちのテンポに安心感があるので、それが面白さにつながっている。ちょうどこの記事が公開される4月7日に第1巻が出るのでよろしくお願いします。

──元気な妻と物静かな夫、正反対な2人ですが、もともと小説家とその読者という関係なのが肝ですよね。これまた正反対な互いの家族の設定も含め、構成のうまさが光っている印象です。

「どうにも不器用な夫婦でして。」1巻 ©︎うみんちゅ/芳文社

「どうにも不器用な夫婦でして。」1巻 ©︎うみんちゅ/芳文社

そして「ラディカル・ホスピタル」。1998年から連載中で、言うまでもなく、まんがタイムオリジナルの顔です。「ラティカル・ホスピタル」が連載しているからと、一旦離れてしまった読者さんが久しぶりにまんがタイムオリジナルを手に取ってくれるとうれしいですね。

──現連載作品の中では希少なクラシックな4コママンガですよね。ストーリーマンガの方面にも振り切っていない。いつ読んでもいいし、どこから読んでもいい。この安定感、まるで実家ですね。

「ラディカル・ホスピタル」が常に安定した柱でいてくれるので、誌面に攻めた作品が掲載できる余地が生まれています。

「ラディカル・ホスピタル」42巻 ©︎ひらのあゆ/芳文社

「ラディカル・ホスピタル」42巻 ©︎ひらのあゆ/芳文社

「はらぺこ母娘と元カレ家主」は、元カノとその娘、そして元カレの奇妙な同居生活を描く作品で、非常に情感たっぷりなストーリーに仕上がっています。りおり先生はどんどんうまくなっていて、今すごく伸びている作家です。コマのぶち抜きだったり、コマを横に使ってキャラクターを立たせた状態の絵を描いたり、ワイド4コマの使い方が巧みで、表現の幅をすごく広げてくれています。

──キャラクターのかわいらしさと豊かな表情、明るい雰囲気がありながらどこか切なさも感じるストーリーが素敵です。猫のなーこちゃんもかわいいので、猫好きの方にも読んでほしいですね。

「はらぺこ母娘と元カレ家主」2巻 ©︎りおり/芳文社

「はらぺこ母娘と元カレ家主」2巻 ©︎りおり/芳文社

「沖浪荘202号の漫研部」は、クリエイターが集まる社員寮が舞台の作品です。社会人の再生と言いますか、大人になっても自分のやりたいことはやればいい、叶えられなかったことをやり直してもいいじゃん、というメッセージを込めて作っています。この作品の場合は社員寮ですが、同好の士が集まれる場があることの尊さも伝えていけたらいいですね。

──好きなものを共有できる人たちがすぐ近くにいるって最高ですよね。それだけでほかの嫌なことが全部帳消しになるぐらい、得難い環境だと思います。うらやましいです(笑)。

「沖浪荘202号の漫研部」2巻 ©︎ぎんもく/芳文社

「沖浪荘202号の漫研部」2巻 ©︎ぎんもく/芳文社

九石三羽による期待の新連載「エルフの歌い手」とは?

「クールな氷上さんは迫りたい」は、クール女子と朴念仁男性の王道の組み合わせですね。不愛想でクールな氷上さんが、上司の拓哉に思いを寄せることから人生が変わっていく。迫られる側の拓哉にも過去に女性関係で苦い過去があって……と、そんな2人のペアです。

──氷上さんは堅物なようで、心を許した相手には素直になる、多面的でユニークなキャラクターですよね。そんな氷上さんに拓哉はあと一歩踏み込めない。ヤキモキする関係がよいです。

「クールな氷上さんは迫りたい」1巻 ©︎にゃけ彦/芳文社

「クールな氷上さんは迫りたい」1巻 ©︎にゃけ彦/芳文社

──この5月号から連載が始まった、九石三羽先生による「エルフの歌い手」についても教えてください。

もともと九石先生がニコニコ全盛期に「歌ってみた」をやっていた人で、当時からマンガも描いてらっしゃいますから、その経験を活かした作品ですね。

──先に第1話を読ませていただきましたが、すぐに現代に馴染んでビール缶をプシュッと開けているエルフのエルエレーニ、すでに好きです。

エルエレーニは目に入るものがとにかく新鮮で、演歌も洋楽も、あれもこれも歌ってみたいと思う。長命のエルフなので歌に千年をかけてこられたから、歌声の深みが違う。そうして、モチベーションも実力も段違いのスーパーバーチャルシンガーができあがっていきます。エルエレーニをプロデュースするのは、元音楽Pのうらぶれた無職のおっさんです。今後明らかになるんですが、かつての仲間は成功していて、彼は劣等感がすごくある。そんな男が、凄まじい才能があるエルフと組んだらどうなるのか。ぜひ注目してほしいです。

「エルフの歌い手」カラーカット ©︎九石三羽/芳文社

「エルフの歌い手」カラーカット ©︎九石三羽/芳文社

「年下の酒先輩が可愛い」は、先輩と後輩の恋愛ものでありつつ、日本酒をテーマにした作品です。酒先輩ことスイは、お酒離れが日本でも進む今、自分が好きなお酒のよさを誰かに伝えられるほどの熱量がある人ですね。スイを通して、お酒が人生を豊かにしてくれるということが描かれています。お仕事マンガとはいかないまでも、お酒の知識を深めてもらえる作品でもあると思います。

──3月号に掲載されたエピソードで主人公の正宗が、自分はスイにとってふさわしい人間なのかと悩みますが、スイは別に気にしていなくて。そういう、もどかしい恋模様もいいですよね。

「年下の酒先輩が可愛い」2巻 ©︎上嶋ハルキ/芳文社

「年下の酒先輩が可愛い」2巻 ©︎上嶋ハルキ/芳文社

配信者の仕事にフォーカスをしながら、「今ってこういう暮らし方もありだよな」「いろんなお金の稼ぎ方があるよね」といったことを描いているのは「うちこもり妻はコスプレ配信者」です。何かと不安定な現代において、自分の立ち位置を社会のどこに置くのか。そして好きなことをしながら、どう食いぶちを稼ぐのか、そうした葛藤や模索を描きつつ、かといって作中のキャラクターたちは目の前の生活を楽しんでいるんですよね。そこがいいなと。

──“うちこもり妻”いぶきは好きなことをして、いつも生き生きとしているところが魅力的です。夫の駿はいつも頼もしくて優しい、傍から見ても素敵なパートナーで好感が持てます。

「うちこもり妻はコスプレ配信者」1巻 ©︎ねぎし匠美/芳文社

「うちこもり妻はコスプレ配信者」1巻 ©︎ねぎし匠美/芳文社

知られざる原型師の仕事を描く「となりのフィギュア原型師」

「ふたりの距離の10年後」は、比較的若く、社会人になったばかりのキャラクターによる恋を描く作品です。幼なじみの2人が社会人になり、仕事上の付き合いがある会社の社員同士として再会したらどうなる?なんて展開を楽しんでもらえるラブコメになっています。「久しぶりに会った幼なじみがすごくかわいくなっててどうしよう!?」ってシチュエーションは定番で、刺さる人は多いのではないでしょうか。

──幼なじみだからこそ意外と見えていなかった部分があって、改めて相手のことを知り好意を抱いてしまう……このシチュエーション、好きです。おっしゃる通り、刺さる人は多いと思います。

「ふたりの距離の10年後」カラーカット ©︎小日向麦/芳文社

「ふたりの距離の10年後」カラーカット ©︎小日向麦/芳文社

「ムクカノ:無垢で無口な職人彼女と、静かでにぎやかなふたり暮らし」は、口下手でしゃべるのが苦手な子と察するのが得意な彼氏のカップリングです。彼がいろいろと先に察してしまうがゆえに、上手にコミュニケーションができない状況が生まれてしまう。同居しているけど、まだキスぐらいしかしてない2人が、今後どういう関係になっていくのか。世間的には非常にゆっくりと進む関係なんでしょうけれど、自分たちのペースで生きていけばいいよねと。その温度感は伝えられているのではないでしょうか。

──一般的には話し合うのが人間関係を円滑にするベターな方法だと思いますが、この2人を見ていると、自分たちのペースでいいと思わされます。どことなく温かな空気感も好きです。

「ムクカノ:無垢で無口な職人彼女と、静かでにぎやかなふたり暮らし」2巻 ©︎原田繭/芳文社

「ムクカノ:無垢で無口な職人彼女と、静かでにぎやかなふたり暮らし」2巻 ©︎原田繭/芳文社

「もどかしコンプレックス」は、趣味を通じて出会った男女によるラブコメです。三本コヨリ先生はストーリーマンガでの経験が豊富なので、コマの崩し方が非常に巧みだと感じます。テーマとしては、居場所を作るのが簡単なようで難しい現代において、自分のコミュニティをどこに置くか?そのように言えるのではないでしょうか。1つの作品をきっかけに集まり、意気投合したり恋をしたり、そうした人間模様を楽しんでもらえると思います。

──好きなものを語り合える時間っていいよなあと思いつつ読んでいます。しーさん、もちさん以外の恋の話なんかも読みたいですね。

「もどかしコンプレックス」カラーカット ©︎三本コヨリ/芳文社

「もどかしコンプレックス」カラーカット ©︎三本コヨリ/芳文社

「となりのフィギュア原型師」は、フィギュア原型師の日常や、キャラクターたちの恋愛模様がテンポよく描かれているマンガです。フィクションですが一定のリアリティが保たれているので、「こんな愉快な人たちがひょっとしたら日本のどこかにいるかも?」っていう面白さが存分に出ている。キャラクターの個性も幅が広いです。昔から売れ続けていて、電子市場でも人気がありますね。

──キャラクターがみんな個性的でインパクトが強いし、かけ合いが軽妙でオチもうまいし、売れているというのも納得です。知られざる原型師の仕事を知れる面白さもありますね。

「となりのフィギュア原型師」7巻 ©︎丸井まお/芳文社

「となりのフィギュア原型師」7巻 ©︎丸井まお/芳文社

「かつては最強無敵の勇者様~姫には内緒のレベルダウン生活~」は、異世界に喚ばれて魔王を倒した勇者が、王家の姫様と仮面夫婦になる話です。高津ケイタ先生は前作「おしかけツインテール」とは異なり、16ページの中でストーリーマンガに挑戦されています。主人公の勇者のレベルがどんどん下がっているという秘密や、彼を異世界に連れてきた女神の正体にも話が及んでいて、非常に密度が高いですね。

──転生する前に上司として部下をうまく導けなかったことを勇者が反省し、冒険者稼業に活かすシーンが印象的で。レベルは下がっているけど人間的な魅力は上がっているのがいいですね。

「かつては最強無敵の勇者様~姫には内緒のレベルダウン生活~」2巻 ©︎高津ケイタ/芳文社

「かつては最強無敵の勇者様~姫には内緒のレベルダウン生活~」2巻 ©︎高津ケイタ/芳文社

──13作品を一気にご紹介していただきましたが、個人的にはアニメはもちろん、ドラマで観てみたい作品も多いです。シナリオもドラマに向いているのではと感じる作品がたくさんあります。

アニメもドラマも、メディア化のオファーはいつでもお待ちしております。

──あれもこれも観たいですね……。それでは最後に、まんがタイムオリジナルの読者へ一言お願いします。

まんがタイムオリジナルはまだまだ進化を続けていくので、これからも注目していただき、雑誌も、単行本も買ってもらえたらうれしいです。よろしくお願いします!

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