そろそろヒロインを公募したほうがいいよ
──ちなみに「100」という数字は構想当初からあったんですか?
中村 10だと弱いし1000はさすがに……(笑)。ただキリの悪い数字にするのも違うし、50人だろうが100人だろうが無茶に違いはないので、だったらインパクトがあって覚えやすい数字にしようと100にしました。
──100人もヒロインを用意して動かすなんて相当無茶ですよね。
赤坂 大変でしょうし、オムニバスならまだしも、ヒロインたちを同じ話に同居させるというのがすごいですよ。今、何人いるんでしたっけ?
中村 原作は27人です。
赤坂 どうするんですか! これから!!
中村 ページ数という制約がどんどん重くのしかかってきています(笑)。コマの中に入れられる人数も限られていますし。正直、2桁になったあたりから大変だし、もう大ゴマ以外では1コマに全員入れようという考えを捨てる方向に進んでいますね。
──ちなみに、100人分の設定はもう考えられていますか?
中村 箇条書き程度ですが、100人分考えてはいるんですよ。
赤坂 そうなんですか!
中村 でも現時点でもう初期の構想からは脱線していますね。いざ登場させてみたらこの子とこの子がすごく似ちゃってるな、みたいなこともあって。
赤坂 じゃあ、そろそろ公募したほうがいいですよ。ヒロインコンペ。「キン肉マン」みたいに。
中村 「あなたの考えた最強のヒロインをお待ちしています」?(笑)。
赤坂 で、そのキャラが出てくるたびに応募してくれた人の名前がコマの外に出るみたいな(笑)。
──この作品の懐の深さならありかもしれませんね。今回の対談はラブコメ原作者同士というセッティングですが、おふたりはもともとラブコメが好きなんですか?
中村 実は僕はそこまでラブコメを読んでいなくて、本当にギャグマンガが好きなんです。僕が最後まで読んだラブコメ作品は本当に「かぐや様」くらいで、それもギャグがめちゃくちゃ面白いから好きでしたし。
赤坂 僕はラブコメ好きですよ。もともと「スクールランブル」や「天使な小生意気」みたいな、ラブコメというわりにはラブが中心ではなく、笑いが中心になってる作品がずっと大好きでした。そういうのをやりたくて、恋愛感情をお題にしたギャグマンガとして「かぐや様」を始めたんです。
中村 僕も「100カノ」はラブコメというよりラブギャグという意識ですね。
赤坂 その中でたまにラブコメになる瞬間があるかな、くらいの感じで。
──コメディとギャグはどこが違うと考えられていますか?
赤坂 我々の作品は「笑わせたい」が先に来てるんですよ。
中村 ああ、そうですね。確かにそうです。
赤坂 女の子がかわいいとか恋愛感情のドキドキをメインに持ってきたらラブコメ、あるいは少女マンガや恋愛マンガになるんでしょうけどね。
アニメ化に期待し過ぎないようにしていたけど……恵まれた作品になって感謝しかないです
──アニメ「100カノ」をご覧になっての感想をお聞かせください。
中村 僕はもう、恵まれた作品になって感謝しかないですね。一時期たくさんアニメを観ていた経験から、どうしても作品によって映像のクオリティに差があるというのはわかっていたので、いざ自分の作品がアニメ化することになってもあまり期待し過ぎないようにしていたんです。
赤坂 わかる(笑)。
中村 でも「100カノ」はクオリティも高く、しかも制作者さんや声優さんが作品を愛し、熱意を持って関わってくれていて本当にありがたいです。
赤坂 スタジオによっては割かれる人員などで差が出てきてしまう中で、覇権を狙えるくらいのクオリティで作られるのは幸せなことですよね。
──おふたりはアニメ化にあたってどんなふうに関わりましたか? 細かく修正を入れる方や、逆に完全にお任せする方もいるようですが。
赤坂 僕は面白かったらなんでもOKで、「原作通りにしてほしい」という気持ちもあまりないです。それでも原作ファンが本当に嫌がるようなことや、僕はマンガ家なので畑違いではあるけれども、アニメになっても面白くならなさそうと思う部分があったら伝えさせてもらっているくらいです。
中村 僕の場合は、事前にこうしてほしいみたいなことは言わなかったんですが、シナリオや絵コンテを頂いて自分の中のキャラ像と違っていると気づいたところは指摘させていただきました。細かいところも含めると数十、いや数百あったかな……。でもそれはあくまでお伝えしただけで、やっぱり餅は餅屋だと思うので、「絶対ここはこうしてほしい」みたいなところ以外はお任せしました。
──特にどういった部分を指摘されましたか。
中村 僕がマンガを描く際に気にする部分なんですけど、キャラに汗をかかせるかどうかですね。僕はけっこう汗をかかせますが、アニメのキャラってあまり汗だらけにならないじゃないですか。だからそこはお任せしつつ、「やっぱりここは汗がないとこのキャラっぽくないよな」という部分はお伝えしました。
赤坂 マンガ家は2つの種類に分けられるんですよ。汗を3つ以上描ける人と描けない人(笑)。描ける人は必要に応じて“汗ダラ”を表現できてコメディ向きなんですよ。でもアニメでは汗の表現って難しくって、描かれていても気づかないことがある。
中村 そうそう、白い線とかで描かれているので。
──そういったメディアの違いはありますよね。ギャグのある作品だと間やテンポ感も重要でしょうけど、アニメ「100カノ」におけるそういった部分はどう感じていますか?
中村 僕はアニメに関しては素人なので、絵コンテをチェックさせてもらっても、そこがどんな間になっているのかまではわからないんですよね。だからこちらで下手に口出しできないんです。
赤坂 アニメを観ていて、「原作の人は、ここのボケとツッコミの間を本当は縮めてほしかっただろうな」とか思うことがありますね。
中村 でも佐藤光監督が手がけてきた過去の作品(「帰宅部活動記録」や「邪神ちゃんドロップキック」シリーズなど)を見てもわかると思いますが、ギャグにすごく思い入れがある方で。「100カノ」に関してもちゃんとギャグを面白くしていただけてありがたいです。
──ほかにアニメに携わって、新鮮だったことなどはありますか?
中村 声の部分ですね。アフレコを拝見したときに少しツッコミが聞き取りづらいと感じて「もう少しはっきりしたほうがいいかも」と言わせていただいたんです。でも、そこは演技が乗ってる部分という見方もできると教えていただいて。マンガだとどんなツッコミでも文字で書くから情報を伝えることに重きを置いてしまうんですけど、アニメではテンションや勢いが優先されることもある。「確かにそれを大切にしなきゃアニメでやる意味もないな」と目から鱗でした。ほかにも誰かが話している後ろで(院田)唐音がギャーギャー言ってるところとか、マンガだと「ギャーギャー」と書いてるだけですが、アニメでは実際に声で言っているので、よりかわいく感じますね。
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羽々里の登場エピソードは最初の山場として用意した長編