阿笠博士のヤバさは笑いを堪えるのが大変でした
──蒼井さんが好きな「犯沢さん」のシーンについても教えていただけますか。
アニメに「名探偵コナン」本編の声優さんが出るっていうのは告知されてきているので、皆さんも原作のキャラクターがそのままの声優さんで出るっていうのはお察しがついてると思うんですが……。どのシーンを挙げるにしてもヤバいんですけど。
──(笑)。
僕の中ではやっぱり博士……ですかね。阿笠博士のヤバさは演じていても笑いを堪えるのが大変でした。もちろんご本人は真面目に演じていらっしゃるんです。「犯沢さん」としての博士を真面目に演じていらっしゃる。それも「あ、きっと楽しんでやっていらっしゃるんだろうな」って感じるくらい、「犯沢さん」のユーモアな雰囲気に溢れているんですね。それがもう本当に面白かったです。あとは犯沢さんが出会うキャラクターたちですね。犯沢さんが米花町に来て初めて意気投合する犯林さんっていう方がいらっしゃるんですけど、犯林さんを演じられる声優さんとも相まって、もうめっちゃ面白いんです。
──気になります。
アニメなのでAパート、Bパートとあるんですけど、Aパート終わりのフックがすごいんですよ。これはもうぜひ観ていただきたいです。あとは犯沢さんが真の目的を忘れてしまうぐらいのよき仲間っていうんですかね。そういう出会いもあったりして。自分は上京してからずっと一人暮らしなので、そこは憧れるな、なんて感じましたね。それと終盤になるんですけど、「犯沢さん」とご家族とのお話っていうのが僕はね、泣けちゃいました。上京してから自分もこういうふうに不安を感じることがあったなって、「僕を見てたの?」っていうぐらい重なるところがあって。「ときどき考えるな、こういうこと」「どうしようこうなっちゃったら」みたいなところがすごく繊細に書かれていて、その回の確認VTRをいただいたときはグッと来てしまいました。
──へええ。
実は、監督が毎話のVTRにすべての音を入れておいてくれたんですよ。こういうイメージですよっていう簡単なアフレコ音声と、SEから何からすべての音を。それがまためちゃくちゃ面白くて! これでいいじゃん!このバージョンをみんなに聞いてもらいたいくらいだよ!って。
──そのバージョンも観てみたいです(笑)。でもそこまで声優さんに入り込ませてくれる環境を整えてくださっていたっていうことですよね。
そうです、そうです。「これだけテンポが速いですよ」とか、イメージを教えてくださる意味もあったと思うんですが。ご本人は「すごく苦労した」というふうにおっしゃっていたんですけど、監督が本当に「犯沢さん」が好きなんだなっていうのが伝わるVTRだったので、そこは監督に奮い立たせられました。
──愛がないとそこまでできないですもんね。
できないですよー! なので僕はその愛を受け取りました。
アフレコは甘いものを貪りながら挑みました
──犯沢さんってアニメが決まるまでも、読んでいて声の想像がつかないというか、性別不明のように描かれていることもあって、どんな声のキャラクターかっていうのを考えたことがなかったんです。
うんうん、そうですよね。
──そういう読者も少なくないと思うんですが、アフレコの現場ではどういうアプローチで演じていこうというお話になっていったんですか?
出演のお話をいただいたときに、それこそ性別の話になりまして。視聴者の方が声を聞いたときに「どっちなんだろう?」って感じるアプローチになったら面白いと思う、という話は聞いていたんです。でも、僕自身としてはベースとなるものはきっちり決めておきたいなという思いもありまして。もちろん、声のいろんな違いで楽しませていくのもいいんだけど、せっかく「犯沢さん」という作品自体がボケも仕掛けもたくさん用意されているので、それが頭に入ってこないと、僕が視聴者として考えたときにも、声が邪魔になると嫌だなという気持ちもあって。なので、大地監督ともベースはありながらも、要所要所で「え? 声が変わった」「これは犯沢さんなのか?」と楽しんでもらえたらいいなという話になりました。
──確かに犯沢さん自身、振り幅が大きいキャラクターですもんね。
目が赤くなったり、一番の目的である“チョメチョメ”について考える殺気立った瞬間だったりは、絶対ドスがきいていたほうがいいなと思っていたので、そこはしっかりと出そうと。一方で親近感のあるシーンや、ちょっと落ち込んでシュン……っとなっちゃうときの犯沢さんの部分ではギャップを出していきたいなと思って、いろいろと遊ばせてもらいました。
──あとはPVを観ただけでもすごく早口でテンポが速くて。カロリーの消費が激しそうな作品だなと感じました。
なので「犯沢さん」の現場には、必ずコンビニで甘いものをしっかりと買い込んでから来るようにしてました。スタッフの方々が差し入れしてくださったチョコレートとかも、ありがたくキープさせていただいて。それで自分が買ってきたビスケットとかと一緒に貪りながら演じましたね。
──(笑)。
それとテンポが速い中でも、先程言ったドスがきいたところとシュンとするようなところも、切らずにそのままの流れでザーッと一気にアフレコしたので、僕の中でも役者としてとても貴重な体験をさせていただきました。共演した「コナン」本編に出てくる先輩方からは「翔太くん、これ1日何本録ったの? 1本録りだよね?」と聞かれて、「いえ、3本録りなんです」なんて話をしたら「3本も録ってるの!?」「大変だよね、これ!」って言われることもあって(笑)。「残りもがんばって!」って応援をたくさんいただきました。
師匠である鈴木園子役・松井菜桜子さんとの共演
──公式Twitterでも「世界一豪華な10分アニメ」と書かれているように、豪華な声優陣の方々がいわゆる“ちょい役”で出る作品ですが、犯沢さんがほぼ1人しゃべりで駆け抜ける様子を先輩方はそうやって温かく見守っていたんですね。
少し話が逸れるかもしれませんが、鈴木園子役の松井菜桜子さんは、僕の声優人生の中での講師の方なんですよ。新人の頃に菜桜子さんのところにレッスンで通いに行ってたときがあって、菜桜子さんとご一緒させていただくのは実はそれ以降初めてのことで。
──ああ、そうだったんですね。
僕の活動は見ていてくださっていたみたいなんですけど、実際に同じブースで、しっかり掛け合いをさせていただけるというのは、それ以来だったんです。
──しかも蒼井さんが主役であり、膨大なセリフ量の作品という。今までの声優人生で培ってきたものを見ていただくことにもなりそうですね。
なのでとても緊張しました。台本の1話の半分以上をしゃべってる僕と、ちょっとだけ出てくる師匠っていう絡みも極端すぎて(笑)。すごく、あっという間の時間でした。
──そういう視点でも見どころがありますね。ファンの方も「犯沢さん」のPVを観て新たな蒼井さんが見られるんじゃないかと感じているんじゃないでしょうか。
「犯沢さん」のアニメ化が発表されたあとに、公式Twitterで犯沢さんの声優は誰でしょう?っていうクイズを出している動画があって、僕も一発で蒼井翔太って気付かれたくないっていう変なプライドがあったので(笑)、「(幼児のような声で)私は誰でしょう?」ってわからないような感じでしゃべったんですよ。そうしたらリプ欄には誰一人「蒼井翔太」って言っている方がいなくて。でも、僕のファンの方だけは、「えっ……もしかして?」って察してくれていましたね。
──ざわ……みたいな(笑)。さすが蒼井さんのファンですね。
「犯沢さん」では、そうやって本編のアフレコに入る前から楽しく関わらせていただけて。スタッフの皆様がすごく温かくて、作品に対する全力の愛を感じたんです。なのでありがたいことに初めのアフレコから楽しく、すんなりと入り込ませていただきました。
──確かに作品のファンとしても声優情報が解禁されるたびに、そりゃコナン役は高山みなみさんなんだろうけど、それが発表されるだけでちょっと笑ってしまうみたいな(笑)、情報が更新されるたびに楽しませてもらっている部分があります。それでは最後になりますが、改めてアニメを楽しみにしている皆さまにメッセージをいただけますでしょうか。
とあるターゲットを“チョメチョメ”したいこと以外は、皆さんが感じる、日頃から考えていることや“あるある”がたくさん詰まった作品になっております。その真の目的と日常的なシーンのギャップとともに、1人ひとりぶっ飛んだいい味を出しているキャラクターたちの姿も楽しんでもらえたらと思います。皆さんが疲れてるとき、怒られてへこんだとき、必ず元気をもらえる作品だなというふうに思いますので、一度だけと言わず、何度でも繰り返して観ていただけたらうれしいです。笑いだけではなくて、ホロリと泣けるときもありますよ。(突然)ポメ太郎、お楽しみに!
プロフィール
蒼井翔太(アオイショウタ)
2011年に声優デビューし、「うたの☆プリンスさまっ♪」シリーズの美風藍役で注目を集める。2013年6月にミニアルバム「ブルーバード」でアーティストデビュー。これまでの出演作に「少年ハリウッド」シリーズ(富井大樹役)、「この音とまれ!」(神崎澪役)、「KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-」(如月ルヰ役)、「ヴィジュアルプリズン」(ハイド・ジャイエ)など多数。またブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」、ミュージカル「DOROTHY(ドロシー)~オズの魔法使い~」などの舞台でも活躍。ABEMAのトークバラエティ番組「声優と夜あそび」の水曜日MCを務めるほか、地上波の歌番組、バラエティ番組に多数出演するなど活躍の幅を広げている。