コミックナタリー PowerPush - いたち「僕は友達が少ない」
「はがない」作家のオリジナル読切 全24ページを無料で公開
動きを出すために、あえて原作と絵のテイストを変えた
──いたち先生の描く「僕は友達が少ない」は、原作小説でイラストを執筆しているブリキ先生とは、まったく絵のテイストが違います。それは、わざと変えようとしているんでしょうか。
最初「はがない」の原作を何度も読み返してできた自分なりのキャラクターイメージは、元気でにぎやかな雰囲気でした。そのキャラクターをマンガにして動かしてみようとすると、ブリキさんを真似た絵では難しいと思ったんですね。ブリキさんの絵は綺麗さが魅力ですが、“動き”を出すには難しいタイプなんです。それで、あえてテイストを変えてみました。
──なるほど。アニメはブリキさんの絵を元にした作画でしたが、アニメといたちさんのマンガでは、同じシーンでもキャラの表情が全然違いました。かなり変顔にも力が入っているというか。逆に、ブリキさんのテイストを取り入れようとしている部分はあるんでしょうか。
そうですね、絵の方向性がまったく違うので難しいんですが、ここ最近は特に女の子らしい、柔らかさを取り入れようとしています。
──そもそもまったく絵のテイストが違うのに「はがない」のコミカライズを手がけることになったのは、どういう経緯だったんでしょう。
2004年からコミケで同人活動をしていたんですが、同人誌を見た担当さんから連絡をいただきまして。担当さんいわく、原作と僕のマンガのテンションが似ていたかららしいです。
──いたち先生は「はがない」が商業デビュー作になるわけですが、それ以前はどのような活動をされていたんでしょうか。
活動していたのは同人だけで、アシスタント経験も、投稿経験もないんです。ちなみにマンガ以外では商業施設のシャッター絵や、扉とか、ドアのデザインをしたりしていました。
──「はがない」以外に描いてみたい作品はありますか。
シリアスは性に合わないので、基本的にギャグマンガですかね。あ、ホラー系の作品は描いてみたいです。
コミスタの鉛筆ツールの濃淡を調節して、柔らかい印象に
──カラーの作画についても聞かせてください。「はがない」連載当初はアニメっぽい塗り方でしたが、だんだんと淡い色遣いに変化しています。
塗りについては、実は特に意識して変えているわけではないんです。ただマンガの制作上、にぎやかな印象が出るように線にはこだわっているので、それに合わせて線画がよりよく見えるように色選びをした結果、自然に変化していってるのかもしれませんね。
──意識して変えているのかと思っていたので、それは意外です。線画については、どのような工夫をされているんでしょう。
とにかく、硬い絵にするのが嫌なんです。なので、自分の感覚に合うようにコミスタの鉛筆ツールの濃淡を調節して、柔らかい印象が出るようにしています。あ、あと直線もできる限り使わないで作画していますね。
──ほかにも柔らかい印象にするようなコツはあるんでしょうか。
そうですね、ネームを作るときは、いったん重要なシーンの絵を決めたあと、それをすべてなかったことにして一気に描き上げます。
──え、なかったことに?
はい。重要なシーンも、流れの中のひとコマ、ひとつのシーンにすぎないので、あまり意識しすぎないようにするためです。やはり、何よりもテンポが重要なので。そのあと、おかしいところを修正して下描きを作成。絵が決まってきたら、さらに細かい修正をして流れを調整していきます。そうすると、硬い印象がなくなるというか。線画には苦手意識があるのと、あとはやっぱり常に時間との戦いなので、つらい作業ですが……。
コミカライズのこだわりはテンポ感
──コミカライズをするうえで、こだわっているところ、気を付けていることがあれば教えてください。
テンポ感ですかね。文字ベースの原作と、絵が中心のマンガとでは、どうしても表現の作法が異なるので、動きをどう表現して、わかりやすく読者に伝えるかを常に考えてます。ちなみに第24話(単行本5巻収録)での、全裸の星奈の目隠しは、かなりこだわりました(笑)。
──「肉」で目隠しする部分ですね。とても衝撃的なギャグシーンでした。
絵に合わせて「肉」の動きを出すのに、とくに角度が重要だったんです。なので、その微妙な角度は妥協することなく何度もデザイナーさんに直してもらいましたね。あとフォントについてもインパクトを出すために、立体感やサイズの調整にこだわりました。
──ギャグだけではなく、人間ドラマも「はがない」の魅力のひとつです。6巻の最終ページでは、本文中にカラーページが挟まれる印象的なシーンがありました。
このラストシーンについては、5巻の構想を練る段階ですでに考えていました。特に夜空の感情の部分を、原作より掘り下げて追う必要性を感じていたので。
──そんなに早い段階から考えていたんですね。
はい。カラー部分については、ラストのネームを仕上げた時点で担当さんから「単行本収録のときには、最後の見開きをカラーにしてみませんか?」と提案があったんです。時間的に難しい面もあったんですが、大きな山場なのでぜひ、と。
──ありがとうございました。今後の連載も楽しみにしています。
あらすじ
羽瀬川小鷹は相変わらず友達のいない学校生活を送っていた。これまでどおりの残念な日常を繰り広げる隣人部だが、謎のシスター(ゲップをする)が登場したり、星奈の父・天馬(ペガサス)と小鷹の仲が深まったりとさらに賑やかなことに……? 大人気・残念系青春ラブコメのコミカライズ第8巻!!
いたち
東京都奥多摩出身。平坂読によるライトノベル「僕は友達が少ない」のコミカライズ連載を、月刊コミックアライブ(メディアファクトリー)にて、2010年より連載中。