コミックナタリー Power Push - 「思い、思われ、ふり、ふられ」特集、咲坂伊緒×井上苑子対談

“正反対な2人のヒロイン”描く最新作を、現役女子高生シンガーと大解剖

現実とかけ離れたことを描いていないか、いつも考えている

──女子高生って咲坂先生の作品のメイン読者層だと思うんですが、普段お話しする機会ってありますか?

咲坂伊緒

咲坂 ないんですよ。だから今日すごく楽しみにしていて。最近の子の告白事情を聞いてみたかったんです。やっぱりLINEなの?

井上 LINEか、LINE電話、それか直接会うの3択ですね。でもLINEで告白するときって、みんな悩むんですよ。「本当にLINEでいいのかな」って。

咲坂 悩むんですね! 当たり前のようにLINEで告白しちゃうのかと思ってた。これはいいことを聞きました。直接会って告白するみたいなのは?

井上 する子はしますね。放課後とかに。

「思い、思われ、ふり、ふられ」より、理央。

咲坂 そうなんだ。正直ちょっとホッとしました。あまりにも現実とかけ離れたことを描いていないかっていうのは、いつも考えているんです。だからマンガで直接告白するシーンとか、「今どきこんなことやらないよね」って言われていたらどうしようと思っていたので。描いていいんだ。

井上 逆にリアルすぎても、少女マンガの意味がなくなっちゃうんじゃないかと思うんです。新作の「ふり、ふら」にも、女の子が手紙で理央を呼び出すシーンがあるじゃないですか。手紙って今だと、渡す子はあんまりいないんです。でもマンガで読むとすごく共感できるんですよね。「私にもこういうことあるかも」って夢を見れるのは、少女マンガならではだと思います。

動かない子をそのまま終わらせてもしょうがない

井上 「ふり、ふら」を読んでると、こういう関係性って実際にあるよなってすごく思います。「ストロボ・エッジ」とか「アオハライド」だと三角関係が描かれてましたけど、恋愛ってそれ以外にもいろんな人が関わるじゃないですか。だから4人の並びを見てすごくいいなって。あと由奈ちゃんの彼氏に対して夢見がちなところとか、自分からなかなか動けない部分は共感しちゃうんですよ。きっとこの由奈ちゃんが覚醒していくんだろうなって思って読んでます。

「思い、思われ、ふり、ふられ」より、朱里の誤解を解くため、知らないクラスに乗り込んだ由奈。

咲坂 (深く頷きながら)そうなんです。やっぱり動かない子が動かないまま終わってもしょうがないですし。この年代の女の子の何が描きたいかって言えば……、喪失っていうんですかね。女子高生って自分の領域を何かに脅かされて、無垢であることを諦めて大人になるような時期じゃないですか。そういう部分が一番描けるのって、由奈かなって。

井上 3話目の由奈ちゃん、めっちゃカッコよかったです。朱里ちゃんの悪い噂を止めるために、単身で知らないクラスに乗り込んでいって。「理央もっと見てあげて! 惹かれて!」って思ってました(笑)。

咲坂 あの話の前半部分を描いているとき、私は由奈に本当にムカついていたんですよ。「噂を鵜呑みにしやがって、コノヤロ!」って。

井上 いやあ、でもああなっちゃいますよ。

咲坂 でも許せなくて。このままだと由奈を描いてられないなと思ったんで、後半は悪い噂を止めるためにがんばるっていう展開にしました。あれをやらなかったら、私は由奈を好きになれなかったんじゃないかな。

「思い、思われ、ふり、ふられ」のカラーカット。

──由奈はビジュアルも特徴的ですよね。ヒロインなのに目が少し小さくて、咲坂先生のこれまでのキャラクターにはいなかったような。

咲坂 気づいたら目が大きくなっちゃっているときもあるんですけどね。もともと朱里を見た目がかわいいキャラクターにしようと思っていたので、そこから対比させて、由奈は奥二重か一重まぶたにして地味な女の子にしようと思って。地味な女の子が、どうやって恋をゲットしていくのか描けたら楽しいかなって。

井上 朱里と比べたらちっちゃいですけど、由奈もかわいいです! 朱里はどっちかって言うときれい系って感じがします。

──先ほど井上さんは由奈に共感するとおっしゃっていましたが、咲坂先生ご自身の恋愛観はどちらに近いですか。

咲坂 どっちの気持ちもわかりますけどね。誰かを好きになったらまず由奈みたいな引っ込み思案な感じになっちゃうんですけど、世の中、かわいくて性格がいい子なんてたくさんいるじゃないですか。そういうところで戦うには自分でがんばるしかない、みたいに考えて由奈から脱皮していく。

「思い、思われ、ふり、ふられ」より、涙の理由を和臣に説明する朱里。

井上 でも、朱里ちゃんもガンガンいくみたいに言ってますけど、結構ピュアですよね? 彼氏に振られて保健室で泣いていたり。

咲坂 あれは自分のほうが優位に立ってるって思ってた彼氏に振られたから、恥ずかしいっていうのもあるんですよね。朱里もまだ成長の途中なんです。彼女はそこそこ自分の気持ちをコントロールできてると思っているので、それができなくなるような展開になったらいいですよね。

井上 わー、いい、いいですね!

咲坂伊緒「思い、思われ、ふり、ふられ」1巻 / 2015年10月13日発売 / 432円 / 集英社

ひょんなことから出会ったタイプの違う女子ふたり。恋愛の経験もスタンスも全然違う朱里・由奈が高1になり、相談&応援しあい、されあいながらそれぞれの恋愛に乗り出していく──!

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別冊マーガレット11月号 / 2015年10月13日発売 / 480円 / 集英社

「思い、思われ、ふり、ふられ」はセンターカラーで登場。1巻の続きが掲載されている。表紙および巻頭は、10月31日に実写映画の公開も控えた河原和音原作によるアルコ「俺物語!!」。このほか、渡辺カナ「ハンキー・ドリー」が新連載としてスタートした。

あなたのRTで決まる!ダブルイケメンRT対決

自由奔放なモテ男の理央と、明るく無邪気な和臣。異なる魅力を持つ2人が、支持率をTwitterのRT数で競う。別冊マーガレット(集英社)の公式アカウントから流れる「理央推し」「和臣推し」のツイートを選んで、応援する側をリツイートしよう。特設サイトではRT状況をリアルタイムでお届け。

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咲坂伊緒(サキサカイオ)
咲坂伊緒

6月8日生まれ。B型。東京都出身。「サクラ、チル」でデビュー。代表作に、2007年から2010年まで別冊マーガレット(集英社)にて連載された「ストロボ・エッジ」および、同誌にて2011年から2015年まで連載された「アオハライド」。「アオハライド」は2014年7月にTVアニメ化、同年12月には実写映画化を果たしたほか、「ストロボ・エッジ」も2015年に実写映画化された。このほか2013年公開の劇場アニメーション「ハル」ではキャラクター原案も務めている。2015年6月発売の別冊マーガレット7月号より「思い、思われ、ふり、ふられ」を連載中。

井上苑子(イノウエソノコ)
井上苑子

1997年12月11日生まれ。兵庫県出身。11歳から大阪の心斎橋で路上ライブを始め、手売りでCDを1万枚売り上げる。2015年7月にミニアルバム「#17」でメジャーデビュー。リード曲の「大切な君へ」はLINE MUSICで250万再生、YouTubeでも150万再生を突破。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」にも出演したほか、9月には主演映画「私たちのハァハァ」が公開された。また動画配信サービス・ツイキャスでも活動しており、累計視聴者数は200万人を超える。11月4日にはメジャー1stシングル「だいすき。」をリリース。