コミックナタリー PowerPush - 矢上裕「エルフを狩るモノたち2」
矢上裕がとっておきのレシピを伝授!若手作家に囲まれ大いに語る
アイデアをくれた担当さんに一生感謝しないと
──「エルフを狩るモノたち2」はどういった経緯でスタートしたのでしょう。
自分の中では続編をやる予定はなかったんですよ。ただ「エルフを狩るモノたち2」の前に連載していた「環境保護隊モッタイ9」という作品が終盤に差し掛かったときに、担当さんに「次は『エルフ』の続編なんかどうですか」って言われて。考えたこともなかったんですけど、言われたらアイデアが浮かんできて、描きたくなったんです。
──「2」では麻衣という淳平の妹が、新キャラクターとして出てきますね。
これは読者と同じ目線のキャラを1人出したかったんです。前作も読んでいただいている方はいいんですが、続編になるので淳平たちを1歩引いたところから見る役割が必要だろうと。
──新規の読者が置いてけぼりにならないように。
はい。異世界を旅する上で淳平たちに対して「何なんだこいつらは」っていう目線で、ツッコミを入れられるキャラということですね。あと若い読者に読んでもらいたかったので、年齢もほかのキャラより若くしました。今作が妹キャラを脱がせて日本に戻るための「呪文のかけら」を探すという設定になったのも、麻衣に由来しています。
──そもそもエルフの服を脱がせて「呪文のかけら」の有無を確認するという発想はどのようにして生まれたのでしょう。
これは読者の方が聞いたらがっかりするかもしれないんですけど、いただいたアイデアなんです。キャラだけ作って、日本に帰るために異世界を旅するっていうプロットを当時の担当さんに相談したら、「刺激がほしい。呪文を集めるために、女性を脱がすっていうのはどうですか」って言われて。聞いた瞬間、それしかないと思いました。
──発明ですよね。
すごい遠慮しながら言われたんですけどね。「下品かもしれないし、矢上さんは嫌かもしれないけど」って。当時の担当さんには、本当に一生感謝をしないといけない(笑)。
「エルフ」の基本は1話完結
──前作も「2」も異世界を旅するというのが物語の根幹にありますが、ストーリーの展開が被らないよう気をつけていることはありますか?
そこに関しては自分でも描いていて不安になるくらい何も考えてない(笑)。ただ「エルフを狩るモノたち」は、前作も「2」もそうですけど「カレーが食べたいからがんばって日本に帰ろうとする」っていうのが大元にあるんですよね。
──淳平の行動原理が。
はい。そこを踏まえつつ、お馬鹿な1話完結の話を描いていきたいですね。
──「エルフ」の基本は1話完結の話だと。
そうですね。1話でまとめるのが好きなんです。ネタ出しには毎回苦労しますけど、落語みたいな感じで1話の中に1つ小噺を入れてっていうのが、自分の性に合っているんだと思います。あっ、真田先生とTOBI先生がいらしたようなので、カレーを盛り付けましょうか。
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「呪文のかけら」を集めるため旅を続ける淳平たち一行の前に度々現れ邪魔をする、額に印を浮かばせた謎の「エルフを狩るモノたち」。
その魔の手が迫り、セルシアは淳平たちの敵となってしまう。
シリーズ累計200万部を超える異世界招喚ファンタジー第4巻。
矢上裕(ヤガミユウ)
1969年7月11日生まれ。兵庫県出身。1994年より代表作「エルフを狩るモノたち」の連載をスタートさせ、アニメ化を果たす。無類のカレー好きとして知られる。そのほかの著作に「環境保護隊モッタイ9」「アゲハを追うモノたち」など。