コミックナタリー PowerPush -「コンクリート・レボルティオ」
氷川へきるの猛投を水島精二がキャッチ キャラクター原案と監督の理想的な関係
得意なものだけじゃなく、遊びの要素も入れたい
水島 でも、初めに考えてたものとはずいぶん変わったね。
氷川 ホント、そうですね。
水島 會川さんとは長年やってるので企画書通りにはならないとわかってたんですが、やっぱり一緒に関わってくれるクリエーターたちの思いも大事にしたいですから。展開が変わっても納得して、面白がってもらえる内容にしようとは意識してるんですけどね。氷川さんも続けてくださる以上は諸々許容してもらえていると思ってますが……どうですか?
氷川 大丈夫ですよ!(笑) ただ僕、全然女の子を描かせてもらえてなかったので、1回「モブキャラでいいから女の子をぜひ!」って思わずお願いしたことはありました。
水島 安心してください、そのうち振りますから(笑)。そういえば家族も描いてもらったよね。あれもかなりの無茶振りで。
氷川 ええ……。
水島 まあ、せっかく一緒にやるなら得意なもの以外に、皆さんの遊びの要素があるものを入れたいですからね。氷川さんに描いてもらった家族にヒロユキって子どもがいるんですが、結構シリアスな回なのに、来た絵がまたえらく小汚い感じで(笑)。
氷川 描き直すべきでしたかねえ……。
水島 何を今さら(笑)。
氷川 でもあれ、保留扱いだったのが気付いたら採用されてたんですよ。
水島 確かに少し迷ったけど、ある時に「イケる!」って思ったんです。結果的にすごくいいキャラクターになりましたよ、怪獣を育ててる小汚い子供。
氷川 ふふふ。
水島 氷川さんは無茶振りしても必ず面白い絵をあげてくれるから、ついそれを楽しみにしちゃうんだよね。中年オヤジも描いてくれるし。
氷川 そう。老人やおじさんばっかりでしたね。
水島 もしかして不満でした?
氷川 いやいや。でもさすがにもう引き出しがないなって(笑)。
左目が隠れてるのはカッコいいから、特別な理由はなくていい
──氷川さんがご担当されたキャラクターの特徴を伺えますか。まず、主人公の人吉爾朗はどんな点に注意されました?
氷川 一番には主人公っぽさを意識しました。昭和アニメらしい感じの。
水島 すごく心配されてましたよね、主人公ぽくなるのかなって。
氷川 はい。あと発注が「存在に違和感がある印象」ってことだったので、それなら髪はピンクとか、変わった色かなと。あとは描きやすさですね。誰が描いても爾朗になるように、普段の僕の絵柄や手癖ではなく、彼の個性を重視してデザインしました。
水島 うんうん。
氷川 アニメだと、ほかの方も描きやすい形が理想だと思うんです。だからアンテナぽい髪や斜めの前髪など、特徴を入れてキャラをわかりやすくして。だから、隠れてる左目はキャラ付けで特に意味はないんですけど(笑)。
水島 そこは拾えなかったんだよねえ。今のアニメって何か要素があれば必ず意味を持たせるのだけれど、昔はそうでもなかったんです。矢吹丈の目が隠れてるのは単にカッコいいからだったし、それでも別にいいよねって。
氷川 僕も、拾ってもらえたらラッキーくらいの感覚です。
水島 會川さんにはデザインからインスパイアされたものがあれば生かしたいとは伝えているので、もちろん意識はしてますけどね。
氷川 初期段階から関わってきたので、「何かに使えたらいいな」というアイデア出しを絵でしてる感じがあります。
水島 洋服とか、すごく氷川さんのセンスが出てますよね。平尾さんが描かれた世界観の設定を氷川さんにも共有していただき、その上で提案いただいたのがこのスーツで。60年代ファッションって、最新の要素が加わりながら何度も世間でリバイバルしてるじゃないですか。その感覚で描いてほしいと思っていたらまさに、という。
氷川 僕と平尾さんで、60年代っていう時代設定やファッションの話になったんです。そのときに見たファッションの資料のエネルギーに圧倒されつつ考えた結果が、あのスーツで。
水島 すごくいいバランスですよね。氷川さんの絵は、昭和の匂いと言っても過去の派生ではなくてニューモードでカッコいい。めちゃくちゃ「主人公」だと思います。
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- TVアニメ「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」
- TVアニメ「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」
放送情報
- TOKYO MX:2015年10月4日(日) 23:00~23:30予定
- サンテレビ:2015年10月4日(日) 24:30~25:00予定
- KBS京都:2015年10月4日(日) 23:30~24:00予定
- BS11:2015年10月6日(火) 24:30~25:00予定
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水島精二(ミズシマセイジ)
1966年、東京都生まれのアニメーション監督。1998年の監督デビュー以来「シャーマンキング」、「鋼の錬金術師」シリーズ、「大江戸ロケット」、「機動戦士ガンダム00」シリーズなど、人気作・話題作を数多く手がける。そして2015年10月、「鋼の錬金術師」シリーズでもタッグを組んだ脚本家・會川昇とともに制作したオリジナルアニメ「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」がオンエアされる。またアニメ音楽誌「リスアニ!」で連載を持ち、アニメソング系DJとしてクラブイベントに出演するなど、音楽マニアとしての横顔も。
氷川へきる(ヒカワヘキル)
代表作は「ぱにぽに」全17巻、「まろまゆ」全2巻ほか。月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)で「キャンディポップナイトメア」を、コミック電撃だいおうじ(KADOKAWA)で「女子高生VS」を連載中。