コミックナタリー Power Push - 月刊コミックジーン

愛すべき中二雑誌が誕生! 遠藤海成と編集長が「女子が読む少年誌」語る

「女子が読む少年誌」というコンセプトで話題を集める新雑誌・月刊コミックジーンが、本日6月15日に創刊された。看板作品は「まりあ†ほりっく」「破天荒遊戯」で知られる遠藤海成が描く現代ファンタジー「黒犬O'clock」。遠藤は「まりあ†ほりっく」スピンオフ作品との、2作同時連載となる。

コミックナタリーでは新作の見どころやジーンの実態を解き明かすべく、遠藤と土方隆編集長を直撃。新作執筆の経緯や、コンセプトに込められた意味を語ってもらった。

取材・文/坂本恵 編集・撮影/唐木元

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読者層に合わせて主人公の年齢を設定する

──まずは遠藤海成先生の新作「黒犬O'clock」のお話から聞かせてください。学園コメディの「まりあ†ほりっく」とは一転して、現代ファンタジーということですが、これはどういった経緯で生まれた作品なんでしょうか。

新作「黒犬O'clock」カット。左から2人目が主人公の小野田暁。

遠藤 実はこの「黒犬O'clock」は、元々まったく別の媒体で、私が書いた原作を別の作家さんに作画していただく形で連載しようとしていた企画だったんです。

──そうだったんですか!

遠藤 でもいろんな事情があってその企画が流れてしまったんですね。それをまた別の作家さんにお願いするっていうのも失礼な話なので、企画自体が浮いてしまっていたんです。

土方 そこで僕が企画についてお聞きしたら主人公のキャラ設定や世界観がジーンにぴったりだったので、看板タイトルとして描いていただけませんか、とお願いさせていただいて。

──元々あったプロットや設定を、ジーン向けに変えたところはあるんでしょうか。

遠藤 あ、それは一切ないです。

土方 そうですね。遠藤先生がご自身で作画されるっていうこと以外は。

遠藤 そういう意味ではキャラクターの造形が変わってますけどね。

──「黒犬」はどれくらいの年齢の読者層を想定しているんでしょうか。

遠藤 今回だと、中高生から20代前半くらいまでの女性と考えています。まずメインの読者層に向けてキャラクターの年齢を調整して。例えば主人公は読者層にいちばん近い年齢にするとか。ちなみに「黒犬」の主人公は高校2年生です。まあ私の描く中高生のキャラが、今のリアルな中高生の姿であるかっていうのは、ちょっと難しい問題ですけれど……。

私の中二牧場にどんどん新しい中二を放牧していきたい

──ストーリーは、人が死ぬ日がわかってしまう能力を持っている主人公が、「理想の死に方」をプロデュースするというものですね。

遠藤 そうです。楽しくもなんともない設定ですね!

土方 そんな(笑)。でも遠藤先生、さっき自分の描く中高生がリアルな姿かっておっしゃってましたけど、それでもたぶんこの時期に考えることっていうのは普遍的なもので、そんなに変わらないと思うんですよね。真剣に生死を考えたりとか、現実にありえないことで何かができるのではないかとか。……それを揶揄して中二病とか言いますけど。

遠藤 中二病、大事ですよ! 中二病はうまく飼い慣らせば、とってもお金になるんです!

土方 身もふたもない(笑)。

遠藤 中二病の人に向けて描くんだから、自分も心にたくさん中二を飼ってないといけないと思うんです。もう、私たくさん飼ってます。患いまくってます。

遠藤の代表作「破天荒遊戯」12巻。月刊コミックZERO-SUM(一迅社)で連載中。

──今日お会いするために「破天荒遊戯」を最初から読み返してたんですが、読んでいて私の中の中二が爆発しそうになりました(笑)。

遠藤 うれしい。ありがとうございます。この年齢になっても、まだまだ中二を飼い続けていきたいし、これからもどんどん自分の中二牧場に新しい中二を放牧していきたいと思います。

──中二牧場って(笑)。では「黒犬」は、割と中二的な作品なんでしょうか。

遠藤 すごいんです、もう。自分の持てる中二をたくさんたくさん投入していきます。中二が1匹、中二が2匹……っていう感じで、中二がどんどん柵を飛び越えていくんです。

──たぶん、読者層は「破天荒遊戯」と近くなりますよね。

遠藤 だと思います。「破天荒」って私が中学生のときに考えた話なんですよ。まあそこからいろいろいじってはいるんで、完全にそうではないんですけど。だから私の中二の全盛期に、中二牧場にいちばん中二が住んでいたときに作った話なんです。それを恥ずかしげもなく描けるんだから、まだまだ私は中二としてやっていけるな、と。

月刊コミックジーン2011年7月号 / 2011年6月15日発売 / 定価:490円(税込) / メディアファクトリー

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創刊号ラインナップ

遠藤海成「黒犬O'clock」/遠藤海成「まりあ†ほりっくSpin-off」/霜月かいり「BRAVE10 S ブレイブ・テン・スパイラル」/漫画:渦八 原作:tennenouji「ラッキードッグ1」/原作:新海誠 漫画:ひだかあさひ「星を追う子ども アガルタの少年」/漣一弥「吟遊戯曲Black Bard」/しわすだ 原案:ジュール・ヴェルヌ「十五少年漂流記」/青春「残念、ここは世界の裏側です」/喜久屋めがね「ファイナル・カウントダウン学園」/藤山海里「虚構の王」/葛屋カツキ「てんか!」/姫川明「竜は黄昏の夢をみる」/狩野アユミ「独裁グリムワール」/田中ストライク「SERVAMP-サーヴァンプ-」/橋本届「カムサリ」/藍屋球「アンティマギア」/ゆづか正成「海賊伯」/みなづき忍「トイレの花太郎」/いときち「オレん家のフロ事情」

遠藤海成(えんどうみなり)

遠藤海成

1996年、エニックス21世紀漫画大賞で奨励賞を受賞、デビューを果たす。現在、月刊コミックアライブにて「まりあ†ほりっく」、月刊コミックジーン(ともにメディアファクトリー)にて「まりあ†ほりっくspin-off」「黒犬O'clock」、月刊コミックZERO-SUM(一迅社)で「破天荒遊戯」を連載中。