「クロノティアレコード」|原作は7年前に誕生した“幻のドラマCⅮ” 新田恵海がマンガ版を大考察! 荒廃した世界を歩む少女の物語

謎めいた終末世界を舞台にしたスペクタクルマンガ「クロノティアレコード」が、現在GANMA!で連載されている。同作は2016年に新田恵海のファンクラブ限定で販売され、“幻のCD”とも噂される作品「クロノティアレコード~世界の果てで、歌を唄い続ける少女~」を原作とする物語。自分の名前や相棒のロボット、そしてある“歌”のこと以外すべてを忘れてしまった少女・クロエが、荒廃した東京を彷徨い歩くさまが描かれる。

コミックナタリーでは連載開始を記念し、新田へのインタビューを実施。新田にとって「青天の霹靂」「うれしい誤算」だったというコミカライズ版の感想はいかに? また、ドラマCD収録時にはなかった設定の数々に、新田がたっぷりと考察を膨らませている。

取材・文 / 佐藤希撮影 / 清水純一

マンガ「クロノティアレコード」とは
マンガ版「クロノティアレコード」ビジュアル

2016年に新田恵海のファンクラブ限定で販売されたドラマCD「クロノティアレコード~世界の果てで、歌を唄い続ける少女~」を原作とするマンガ。CDではある“メロディ”と自分の名前以外を忘れた少女・クロエが、荒廃した世界の謎に迫る物語が紡がれた。マンガ版では一部の設定を新たにし、崩壊した日本を舞台にクロエの旅路が描かれる。シナリオはドラマCDから引き続き、「アルマギア-Project-」で知られるReomが担当した。

キャラクター紹介
クロエ

クロエ

物語の主人公。自分の名前とキボの存在、そしてある“歌”を歌えること以外は何も覚えておらず、謎の終末世界を巡ることに。

キボ

キボ

クロエの相棒である、しゃべるロボット。暗闇で光を放ったり水を作ったりと万能。ぼんやりしがちなクロエに時折ツッコミを入れている。

カレン

カレン

クロエが荒廃した世界で出会う初めての人間。何も覚えていないクロエの存在を怪しむも、自分たちの暮らす集落に迎え入れる。

新田恵海インタビュー

「えっ、今!?」って青天の霹靂

──マンガ「クロノティアレコード」は2016年に新田さんのファンクラブ限定で発売されたドラマCD「クロノティアレコード~世界の果てで、歌を唄い続ける少女~」を原作とする作品です。7年前のCDがコミカライズという新しい展開を見せて、新田さんも驚かれたんじゃないでしょうか。

新田恵海 そうですね! コミカライズされると伺ったとき、「えっ、今!?」って青天の霹靂でした。

──コミカライズ企画についてはいつ頃知ったんでしょう。

新田 「クロノティアレコード」に新しい展開をさせられるといいですねっていうお話は数年に一度ぐらいでしていたんですけど、少し前に「近々何かあるかもしれませんよ」とは伺っていて。でもまさかマンガになるとは思わなかったので、うれしい驚きでした。新しい展開があるとしたら、ドラマCDの続きかなと思っていたんですけど。

新田恵海

新田恵海

──そもそもドラマCD版「クロノティアレコード」は、先ほども言った通りファンクラブ限定販売でもう手に入れられませんから、新しい展開が新作ドラマCDだったとしても大きな反響があったと思います。

新田 販売後に私のファンクラブに入っていただいた方からすると、「クロノティアレコード」は幻のCDになっているんじゃないですかね……。7年前に出たこのドラマCDのみが存在する企画でしたけど、たくさんの人のお力をお借りして、マンガ化という展開になったことは私にとってもうれしい誤算と言いますか。

──ドラマCD版「クロノティアレコード」は新田さんのキャリアの中でもけっこうチャレンジングな企画だったということでしょうか?

新田 そうなんです。そもそもファンクラブ限定でドラマCDを出すってことが今までなくて。2016年のイベントで「クロノティアレコード」の劇中歌を歌ったんですが、その曲もそのイベント以外では披露していないんですよ。だから楽曲も、ファンの皆さん的には幻の存在になっているかもしれませんね。ドラマCDでは物語と一緒に、きっとファンのみんなに聴きたいと思ってもらえるであろう曲も作っていただいたので、オーディションに受かって役をもらえた!というのとは違う喜びがファンにもあったと思います。私は私で、自分だけが演じる役として主人公のクロエと出会えているので、それもうれしかった。今でもファンの方から「クロノティアレコード」を歌ってほしいっていうリクエストが来ます。

新田恵海

新田恵海

──ファンの人から大変愛される作品になったんですね。今回のコミカライズを喜んでいる人も多いと思います。

新田 ね、うれしいですよね。ドラマCDの物語を覚えていてくださって、続きも楽しみにしてくれるって、物作りに携わる人間としてはそういう作品に関われているというのは喜ばしいことです。私も、またクロエに会えたらいいなと思っていたので新しい展開があって本当にうれしい!

優越感に浸れたのは1話まででした(笑)

──コミカライズ版は現在GANMA!で連載中です。マンガになった「クロノティアレコード」を読んで、いかがですか?

新田 本当に楽しく読ませていただいて、私も知らないことだらけなのでワクワクしています。というのも、CDで描かれていたのはコミカライズ版1話分ぐらいの範囲なんですよ。2話以降は私も知らなかった話が走り出しているというか、「初めまして」の気持ちで読んでいます。CDになぞらえて、あのシーンだ!とか優越感に浸れたのは1話まででした(笑)。

──(笑)。

新田 新鮮な気持ちで、読者の皆さんと同じ目線で楽しんでます。でも私、もともとGANMA!はプレミアム会員なんですよ。だから、1話分先読みしてますね。CDではどこの国・地域かということもわからなかったんですけど、マンガでは新宿歌舞伎町の入口のアーチがあったので、日本だし東京なんだ、って。でもミステリアスな部分はまだ多いですよね。CDの時点で私にとっても謎めいていたぐらいなんですけど、また謎が深まって楽しみにしています。

「クロノティアレコード」第1話より。ドラマCD版では具体的な地域名は明かされていないが、マンガ版では東京と思しき風景が描かれている。

「クロノティアレコード」第1話より。ドラマCD版では具体的な地域名は明かされていないが、マンガ版では東京と思しき風景が描かれている。

──主人公のクロエは自分の名前と歌うこと以外は何も覚えていないという、ミステリアスな人物ですが、新田さんは彼女にどういう印象を抱いていらっしゃいますか?

新田 うーん、いい意味で普通の子なのかなと思っていて。彼女のこれまでの生活がわかるような描写はCDにもあるんですけど、お嬢様でもなければ、貧困にあえいでいるわけでもない。傍らにキボちゃんがいて、家族との生活があったんだろうなと思えたんです。だからCDでは変に特徴を付けず、今後なんにでもなれる人物ということをイメージして演じていました。ドラマCDのときは、クロエのイラストはジャケットのビジュアルだけだったんです。マンガではクロエのいろんな表情が見られるので、そこもうれしいポイントですね。

新田恵海

新田恵海

──ドラマCDは劇中歌や新田さんの演技をもとに聴く人が想像力を膨らませていたと思いますが、今回マンガで物語の世界が描かれることになって新鮮さや驚きを感じる人も多いかもしれません。その点、新田さんはいかがでしたか?

新田 日常が一気に知らないところになったような世界観っていうのはCDでも感じていましたけど、東京が廃れた景色として描かれていて、より衝撃がありました。CDのときは「私の頭の中ではこういう感じ」と景色を思い描いていましたけど、聴いてくださる人と同じ景色かわからないですし。声優の声がアシストをして聴く人が物語世界を作り上げるのがドラマCDの楽しみ方ですけど、マンガとして絵になるとやっぱりインパクトが強いですね。舞台設定に共通の意識ができて、クリアになった目線で楽しめるなと思っています。読む人みんなが同じ景色を見られるのは、作品が一歩進んだ部分だなって。でもこれは未来の話なのか、別世界の話なのかわからないので、そこも「どうなるんだろう?」と考えています。