音楽ナタリー Power Push - 夢みるアドレセンス

4人体制で迎える試練のシングル「大人やらせてよ」

夢みるアドレセンスがニューシングル「大人やらせてよ」を発表した。夢アドは当初年内にアルバムをリリースすることが決まっていたが、10月にメンバーの小林れいが病気療養のため無期限活動休止となり、アルバム発売から急遽4人体制でのシングル3連続リリースに変更。その第1弾となる本作は、作詞・作曲を川谷絵音(ゲスの極み乙女、indigo la End)、編曲を冨田恵一が担当しており、思春期(アドレセンス)を生きる少女の焦燥感、大人と子供の間で揺れ動く複雑な心情を鮮明に描き出している。

音楽ナタリーでは荻野可鈴、山田朱莉、志田友美、京佳に集まってもらい、楽曲の印象や小林に対する思いなどを聞いた。

取材・文・ライブ撮影 / 古川朋久

絶対に帰ってくるからもっと大きなところで待ってて

──小林さんが活動休止に入り、もう4人体制で活動してるんですよね。まだ実感がないですか?

夢みるアドレセンス

荻野可鈴 そうなんです。ドリンクも5本買っちゃうんですよ。「ああ、今は4人なのに」っていうことがけっこうあります。

──急な展開で戸惑いがあったんじゃないかと思うのですが。

荻野 れいの活動休止を聞いたときは、ただただ唖然としてました。

志田友美 うん、なかなか受け止められなかったです。

京佳 最初は涙すら出なくて。話を聞いていたらだんだんと悲しくなって、1時間後くらいに涙が出てきて止まらなくて。

荻野 その日の夜に朱莉とごはんに行ったんですけど、だんだん実感が湧いてきてファミレスで泣いてました。そこで初めて寂しいって気持ちが訪れてきましたね。

山田朱莉 考えれば考えるほど不安になっていって。

荻野 「どうしよう」がたくさんありました。まず、これまでの曲の4人でのフォーメーションや歌割をどうしようって思ったし、アルバムを発売することになっていたんですけど一旦白紙にせざるを得なくてどうしようってなって。最初はれいの喉の調子を考慮してシングルなら大丈夫なんじゃないかって5人でシングルをリリースすることにはなってたんですけど、お医者さんの判断でやはりそれも難しいってことになり、4人だけで果たしてうまくいくのか全然わからなくて。シングル第1弾の「大人やらせてよ」は川谷絵音さんが楽曲提供してくださって、とても注目されるタイミングだと思うんですけど、そんなときに私たちは「れいがいない4人でいいのかな?」っていう思いもあったんです。れいをずっと待っていてあげたい気持ちと焦らせたくない気持ちが混ざって、どうするのが一番いいのか考えましたね。

──小林さんが復帰するまでツアーやリリースを待つという選択肢もあったんでしょうか?

山田 そういった今後のことをスタッフさんたちと考えてるときに、れいから手紙が届いて。「絶対に帰ってくるから、もっと大きなところで待っててね」って。だから私たちは4人でがんばって、もっと成長して大きなステージでれいを待ってようって決めたんです。

荻野可鈴

荻野 逆にれいが背中を押してくれて。「先に行ってて」って言ってくれて、その言葉が私たちを突き動かしてくれました。

京佳 絶対にれいちゃんのほうがつらいはずなのに、私たちのほうが彼女から勇気をもらってる。

荻野 いつも私たちの体の心配ばかりするんですよ。

志田 ちょくちょくLINEでやりとりはしてるので、今の彼女の状態とかもみんなわかってるし、一緒にいる感覚はずっとありますね。

荻野 今も私たちの活動を常にチェックしてて、配信されたライブを観て感想を送ってくれるんですよ。ちょっとファン目線みたいな感じもあって逆に新鮮というか。彼女にとっても私たちが活動してることが何よりの薬になってるのかなって思うと、がんばらないとなって気持ちになります。

このシングルに命を賭けている

──とはいえフォーメーションも歌割も変わりましたし、4人体制での活動は思うほど簡単ではなさそうですね。

荻野 そうなんですけど絶対に妥協したくないし、次のシングルで今まで通りのことをやっていたら、私たちは終わると思ってるので。何1つ安心してませんし、気を抜けません。ライブは4人になっても常に100%以上のものを出していかないといけないと思ってやってます。大げさかもしれないですけど、私たち、このシングルに命賭けてます。

京佳 「4人の夢アド、こんなもんか」って思われたくないんですよ。だから妥協するつもりもないし、妥協したら落ちていっちゃうのはわかってるので。

──今回のシングルは川谷さんが楽曲提供してくれたというのもトピックとしては大きいですよね。川谷さんの新しい楽曲が聴けるのが夢アドだというのも注目を集めそうです。それに「大人やらせてよ」はとてもストーリー性の強い楽曲で、いわゆるアイドルソングのような曲調ではないですし、夢アドファン以外の人にも届きそうです。

荻野 思春期特有の女の子の難しい心情を歌っているんですけど、曲の意味は聴いて感じてほしいというか、聴いた人に考えてほしいんですよね。私たちのボキャブラリーでは曲のイメージがうまく伝え切れないかもしれないので(笑)。歌詞を読みながらそれぞれに物語を感じてもらうのが一番いいのかなっていう思いもあって、今回この楽曲のミュージックビデオはリリック入りのバージョンも作ったんです。

京佳 最初に完成した曲を聴かせてもらったとき、これまでの夢アドの楽曲にはないテイストで「これが川谷ワールドか!」って思いました。ファンの皆さんにも川谷さんの世界観を感じてほしいです。

志田 MVは全部渋谷で1日で撮影しました。いろんなところに私たちが出没して踊ってます。TSUTAYA O-EASTの屋上の芝生で撮ったりもしました。

山田 MV撮影時にはあえて振りは入れてなくて全部アドリブで踊ってるんですよ。私、序盤で足めっちゃ上げてるんで、そこ注目です(笑)。

荻野 でもライブでの振りはMVとはまったく違うんですよ。もちろんフリースタイルではなくてけっこうガッツリと振りを作って踊ってます。アイドルっぽくないコンテンポラリー・ダンス風な振りに仕上がってて、ちょっとアートって言ったほうがイメージしやすいような激しい感じ。ファンの皆さんの反応が楽しみで仕方ないです! MV含めてもしかすると賛否が分かれるかもしれないですけど、今までの夢アドにはなかった路線なのでいい意味でファンの皆さんを裏切っていきたい気持ちもあります。

──シングル3連続リリースの第1弾なので、ここでアッパーな楽曲を持ってきて勢いを付けるという選択肢もあったと思うんですけど、あえてシリアスな雰囲気のナンバーを持ってきたのは、確かに裏切られた感はあるかもですね。

山田朱莉

山田 この曲はずいぶん前に本来アルバムのリード曲としてお願いしていたもので、れいを含めた5人で歌う予定だったんです。でもしばらく4人だけで活動しないといけないというのが決まって、急遽4人バージョンでレコーディングしないといけなくなって。

京佳 4人バージョンのフォーメーションでライブをするのも覚えることが多すぎて、絶賛てんてこまい中です(笑)。

──4人はやっぱり全然違いますか?

京佳 すべてが違いますね。喪失感があるっていうか、こうやって取材を受けててもなんかいつもと違うし。

志田 私、いじる人がいなくなってしまったんですよね。隣でいつもれいにちょっかい出してたから。

山田 ライブ中の雰囲気がだいぶ違いますね。

荻野 そもそも5人から4人になるとセンターがいなくなるので、それだけでも大きな変化はあります。

──単純に人数が減ることで物足りなさを感じてしまう人もいるかと思うんです。そう見えないようにしていかないといけませんしね。

山田 そうなんですよ。みんなにそう思わせたら絶対にダメ。今は「1人いないとここまで違うのか」っていうことばかり気付いて、どうしたら4人でも濃密なライブにできるかいろいろと試している最中です。

荻野 れいのためにも「れいがいなくても大丈夫だぞ」ってところを見せないと。だからたくさんの人に今の私たちのライブを観に来てほしいんです。

ニューシングル「大人やらせてよ」/ 2016年11月23日発売 / Sony Music Associated Records
初回限定盤 [CD+DVD] / 1500円 / AICL-3230~1
通常盤 [CD+フォトブック] / 1000円 / AICL-3232
期間生産限定盤 [CD] / 500円 / AICL-3233
初回限定盤 / 通常盤 CD収録曲
  1. 大人やらせてよ
  2. 大人やらせてよ(Instrumental)
期間生産限定盤 CD収録曲
  1. 大人やらせてよ
初回限定盤 DVD収録内容
  1. 大人やらせてよ Music Video
  2. 大人やらせてよ Making of Music Video
  3. 大人やらせてよ Making of PhotoSession

夢みるアドレセンス「アルバム発売延期に3枚返しだ!ツアー2017」

  • 2017年1月14日(土)大阪府 なんばHatch
  • 2017年1月15日(日)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2017年2月19日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
夢みるアドレセンス(ユメミルアドレセンス)

荻野可鈴、山田朱莉、志田友美、小林れい、京佳の5人からなる女性アイドルグループ。人気ティーンファッション誌のモデルを中心として2012年にグループ結成。ひたむきなステージパフォーマンスにより同世代だけでなく、 幅広い層からの支持を集めている。2013年、2枚のミニアルバム「泣き虫スナイパ→」、「純情マリオネット」をリリースし、2014年4月には初の全国流通盤シングル「マワルセカイ」を発表。2015年3月にはSony Music Associated Recordsより「Bye Bye My Days」でメジャーデビューを果たし、同年4月に東京・中野サンプラザホールでのライブを成功。2016年1月にオカモトショウ(OKAMOTO'S)が「舞いジェネ!」を、同年4月に志磨遼平(ドレスコーズ)が「おしえてシュレディンガー」を、首藤義勝(KEYTALK)が「ファンタスティックパレード」を、7月にMINMIが「Love for You」をそれぞれ手がけてシングルをリリース。10月より小林が病気療養のため無期限の活動休止となり、4人体制でシングル3本を連続で発表。第1弾として川谷絵音(ゲスの極み乙女。、indigo la End )が作詞作曲を担当、冨田恵一が編曲を手がけた「大人やらせてよ」を11月にリリースした。2017年1月から2月にかけて4人体制で東名阪ツアー「アルバム発売延期に3枚返しだ!ツアー」を実施する。