ナタリー PowerPush - XA-VAT
やりたいことは“ネクストレベルの面白さ” 石井秀仁が明かす次の一手
パクリの美学って絶対あると思う
──例えば、最近の音楽を聴いていて「自分と似たようなこと考えてるな」と感じることってありますか?
ないですねえ、最近。というか、面白いと思えるものがぜんぜんないんですよ、この1~2年くらい。一瞬「あ、面白いかも」って思っても、それがぜんぜん持続しないというか、気付いたら消えちゃってることも多いし。エレクトロと言われてるものも、増えすぎちゃってワケわかんない。ちょっと前は「どれもこれも面白い」って感じだったんだけど……何かありますか、最近。
──HURTSは良かったですけどね。80'sの耽美派エレポップ直系って感じですけど。
あ、HURTSは大好きですね! うちのメンバーのひとりと話したこともあります、「あれはいいよね」って。音楽もそうだけど、あのビジュアルだけでも買っちゃうと思う。
──やりきってますからね。XA-VATも当然、ビジュアルを重視してると思いますが。
一番いいのはPVを見てもらうことなんですけどね。なんて言うか、メイクして、逆毛を立ててってだけだったら、100万人ぐらいいると思うんですよ。そういうものとは違う何か……あの、自分は来年34歳になるんですけど、バンドの中では最年少なんですよ。これは言っていいのかわかんないけど、SADIE PINK GALAXYは40代なんです。リアルタイムで知ってることも多いし、そういう意味では、ほかとは違う打ち出し方ができるんじゃないかな、と。あの人、大阪で洋服屋やトイショップをやってたりして、SIGUE SIGUE SPUTNIKみたいな人なんですよ。リアル“トニー・ジェイムス”(笑)。
──もちろん、単に80'sをトレースするだけじゃなくて、さっき石井さんが言ってた“ネクストレベル”を見せつつ。
そうですね。これも誤解を招くかもしれないけど、LADY GAGAとか、ああいう見え方になればいいな、と。あと、日本だけじゃなくて、外国人が見たときにどうか?とか。
──なるほど。ホントに面白い試みだと思います。最近、「なんだコレ?」って驚く音楽も少なくなったし……。いろんな要素を組み合わせてるんだけど、「コレって、アレじゃん」って思っちゃうことが多いので。
逆に、「コレって、アレじゃん」っていうのを狙いたいんですけどね(笑)。言い方は悪いんですけど、パクリが好きなんですよ。パクリの美学って絶対あると思うし。歌詞の中にキーワードを散りばめたりとか。そういことを面白がりたいんですよね。
──なるほど。
今回のシングルにはとりあえず2曲しか入ってないんですけど、アルバムが出たら「コレってアレじゃん!」って言われそうな曲がいっぱいありますよ(笑)。その“アレ”が寒くない“アレ”になってるのが大事だと思うんですよね。そういうことが好きな人たちにも楽しんでもらえるように。1曲目の「ZEROTICA」に関して言えば、PVを作るってこともあって、“ギタリストが2人いる”っていうのをわかりやすくサウンドで出したかったんですよね。
──楽曲にもガッツリとギターが入ってるし。
そうですね。そこはけっこう考えて。
岡村さんは歌ってるし演奏してるしメロディも作ってる
──岡村靖幸さんが手がけたリミックス(「NUMANS-ROXETTE(REMIX)」)にも驚きました。岡村さんとは以前から交流があるんですか?
交流は……ないです(笑)。以前、ライブを観にきてもらって、そこでちょっとお会いしたくらいですね。もちろん、自分も岡村さんのライブには行ってましたし。小学生、中学生くらいのときから大好きだったんですよ。岡村さんにリミックスを頼むっていうのはスタッフから出てきた話なんですけど、普通のリミックスにならないのはわかってたし、だからこそ意味があるというか。
──すごいリミックスですよね。岡村ちゃん、歌ってるし。
歌ってるだけじゃなくて、演奏も加えてるんですよ。ベースもギターもぜんぶ岡村さんが弾いてて。しかもメロディも作ってるんですよね。「メロディを考えたから、歌詞をつけて歌ってくれ」って言われた(笑)。他の人だったら「無理です」って言うんだけど、あの岡村さんがわざわざメロディを考えてくれたわけだから、やらないわけにはいかないな、と。面白いですよね、ホントに。だって、まだオリジナルのほうの楽曲はリリースされてないし。
──そうですよねえ。
リミックスの作業も見てたんですけど、すごいですよ。スタジオに入ったら、トイレにも行かないでズーッとやってるんですよね。俺には絶対できないです、あんなこと。
バカなのか計算してやってるのかわからないところを狙いたい
──ライブに関してはどうですか?
うーん、12月2日のLIQUIDROOM ebisuのライブをやってみないとわからないんですけど、今のところはどうなんですかねえ? 実は昨日ライブだったんですけど、「まだこんなんじゃダメだな」って思ったし。
──どういうところが?
一生懸命にバンドをやってる人が悩むようなこととは違うんですけどね(笑)。演奏はマシンを使ってるから、すげえうまいんですよ。そういうことじゃなくて、ステージの上で作り出さなくちゃいけないものがあると思うんですよね。観た人は「良かったよ」って言ってくれるんだけど、「悪かった」とは言わないだろうし(笑)、そこで安心してもしょうがないでしょ。なんて言うか、人間のパワーとかハッタリがぜんぜん足りてないと思ってますね。このメンバーでライブをやるのに慣れてないってこともあるけど、初心者ってわけじゃないし、そんなこと言ってる場合じゃないんですけど。
──もちろん、XA-VATとしての理想の形もあると思うんですが。
うーん、まあ、面白がってもらえればいいなって思いますけどね。自分たちも面白がりたいし。バカなのか計算してやってるのかわからない、みたいな(笑)。楽曲もそうですけど、PVやWEBのデザインを含めて、いろいろやっていきたいですけどね。
──期待してます。ちなみにバンド名は石井さんのアイデアですか?
そうですね、最終的には。いろいろ考えたんですけど、「記号みたいで読み方はわからないんだけど、実はすげえシンプルな名前だった」っていうのがいいなって。あと、「Xから始まるバンド名って、ないよね」っていう考えもあったし。
──なかなかコンセプチュアルですねえ。
あとね、「ゾイド」っていうアニメに「ザバット」っていうコウモリのキャラクターが出てくるんですよ。それはメンバーには言ってなかったんですけどね。バンド名が決まってから、「実は『ゾイド』に……」って(笑)。
XA-VAT/ZEROTICA
DISC1収録曲
DISC2収録曲 (※CD+CD盤のみ)
【期間限定試聴中】試聴期間:2010年12月2日~12月16日
DVD収録内容 (※CD+DVD盤のみ)
- 「ZEROTICA」ビデオクリップ
XA-VAT(ざばっと)
SADIE PINK GALAXY(SPEECIES)、Közi(ex.MALICE MIZER)、石井秀仁(GOATBED、cali≠gari)、小間貴雄(ex. goatbed)によるバンド。80'sニューウェイブやヘヴィロック、ゴシックパンクなどの影響を感じさせるサウンドと、グラマラスなビジュアルの融合は、ほかに類を見ない個性的な存在感を放つ。2010年12月、シングル「XA-VAT」でデビュー。