ナタリー PowerPush - XA-VAT
やりたいことは“ネクストレベルの面白さ” 石井秀仁が明かす次の一手
cali≠gariやGOATBEDなどの活動で知られる石井秀仁を中心にした新バンド「XA-VAT」(ザバット)が、初音源「XA-VAT」をリリース。メンバーはKözi(ex. MALICE MIZER)、小間貴雄(ex. goatbed)、SADIE PINK GALAXY(SPEECIES)。エレクトロ、へヴィロック、ゴシックパンク、ヴィジュアル系などの要素が散りばめれたサウンドメイク/音像は、現在の日本のシーンにはない圧倒的な個性に満ちている。
また、初回限定盤2(CD+CD)には未発表曲「NUMANS-ROXETTE」のリミックスを収録。これを岡村靖幸が手がけていることでも話題を集めそうだ。今回は、バンド結成の経緯やサウンドコンセプトなどについて、石井自身にたっぷりと語ってもらった。
取材・文/森朋之
4人なのにドラムもベースもいなくてなぜかボーカルとツインギター
──まず、XA-VATの成り立ちについて聞きたいのですが。
えーと、成り立ち……。
──どうしてこの4人でバンドをやることになったか、っていう。
そうですよね、ええ。そういう話になりますよね……。どうして?って。えーと、自分も基本的には音楽をやってまして(笑)、まあ去年は別のもの(cali≠gariの再結成)をやってたんですけど、それが終わったら「じゃあ、次は何をやるか?」ってことになるじゃないですか。バイト探してもしょうがないし、新しい音楽的な動きとして何をやるか?って考えたときにですね、俺は「GOATBED」というのもやってるんですけど、そっちはいまいちやる気にならなかったんですよね。去年もバンドだったし、自分ひとりというよりは、何人かで音楽をやりたいなって単純に思って。かと言って、生モノのロックバンドっていうのはやれないですからね。
──生音はムリ、と。
そうですね(笑)。4人でバンドやるっていえば、ドラム、ベース、ギター、ボーカルってことになるでしょ? そうじゃなくて、もっとバカみたいなことができないかなって。4人なのにドラムもベースもいなくて、なぜかボーカルとツインギターって、なんか面白いじゃないですか。まあ、音源を聴けば「別に4人いる必要ねえよ」って思われるかもしれないけど(笑)。
──でも、石井さんの中ではちゃんと意味があるんですよね……?
うーん、そこまで深い意味はないんですけどね。ただ、去年、なんとなく似たような感性を持ってるというか……“なんとなく”ですよ? そういう人たちとたまたま顔を合わせることが何度があったんですよね。例えばKöziさんと初めて会ったのは10代の頃だったんですけど、去年、友達のバンドのライブで15年ぶりくらいに再会して。すぐに「バンドやろう」ってことにはならなかったんですけど、まあ、面白いことができるんじゃないかって思って。
──それぞれ個性的なキャリアを持った方々だし。
そうですね。みんな、普段は自分のプロジェクトを持っていて、そこで楽曲をぜんぶ作って歌ってる人ばかりで。そういう人たちが集まって何かやるのも面白いと思ったし。とにかく、ひとりじゃない感じが欲しかったんですよね。だから、XA-VATではあんまり自分の意見を言わないようにしてるんです。
──どういうことですか?
GOATBEDの場合、ぜんぶ自分で決めてるわけですよ、曲から何から。そうすると、自分の考えたもの以外は入ってこないんです。でも今回は、なるべく人の意見を聞こうと思って。そうすると、自分にはない発想もどんどん出てくるでしょ? だから、すごく静かにしてます(笑)。
──しかも、4人とも独自のスタイルを持ったクリエイターですからね。なかなか日本にはいないパターンのバンドだと思います。
そうだと思いますけどね。まあ、どうなるかはわからないんですけど(笑)。
やりたいことはネクストレベルな感じ
──先程言ってた「感性が似てる」っていうのは、音楽的な面でですか?
感性……なんでしょうねえ?(笑) 聴いてきたものが近いっていうのもあるかもしれないけど、どういうことが面白いと思うか?ってところかな。そこはある程度、近いと思いますけどね。
──なるほど。サウンドのコンセプトについては、何かアイデアがありました?
うーん、そうですね……難しいな。何かありました?(と、スタッフに聞く)
──そこもあまり限定したくなかった?
えーと、ネクストレベルな感じというか(笑)。なんて言うか、今、似たような音はいっぱいあるじゃないですか。だから、音だけじゃないところで……って、わけわかんないですよねえ。
──いえいえ。バンドは当然、音だけじゃないですから。
単純に言えば映像とか見た目ってことになっちゃうんだけど。うまいこと言えないけど、自分にはもともと、そういう志向があるんですよね。あの、“なんとか系”とかって表現がいろいろあるじゃないですか。例えばヴィジュアル系でもいいし、エレクトロでもいいんですけど、この2つって、絶対に融合しないですよね? だけど80年代のテクノポップとかって、ビジュアルもすごく重要でしたよね。
──そうですね、確かに。ビジュアルのイメージとサウンドの関係性が強くて。
今も同じようなことをやってる人はいるんだけど、その人たちのほとんどはテクノとかエレポップの手法に則ってると思うんですよ。……お、だんだん思ってることに近づいてる気がする(笑)。あとはなんとなく察していただければ。
──(笑)。石井さんはもともと、シーンに属さない傾向があると思うんですよ。ヴィジュアル系とかエレクトロとかテクノポップとか、いろんな要素があるんだけど、いつも「こういうの、なかったな」と思わせてくれるというか。
そうなんですよね。パワーが足りなければ、どっかに属したほうがわかりやすいと思うんですよ。逆にものすごいパワーでどこにも属さないことをやれれば、新しい見え方が確立できる……この年齢になって、やっとそこに気付いたんですよね。ずいぶん時間がかかっちゃったんですけど。若いときって、どうでもいいことにこだわっちゃいますからね。見え方とか、こういう人に聴いてほしいとか。そんなのがどうでもよくなって……。
──自分のやりたいことがハッキリしてきた、と。
いろんなものを融合すると、どうしても中途半端になる。その中途半端のレベルを上げたいと思ってるんですよ、俺は。あ、いまのは良かったですね。
──(笑)。中途半端のレベルを上げる。
そうそう。すげえ強烈な中途半端というか(笑)。それはたぶん、ほかのメンバーも同じだと思うんですよ。そういうことをマジメに話し合ったことはないんですけど。
DISC1収録曲
DISC2収録曲 (※CD+CD盤のみ)
【期間限定試聴中】試聴期間:2010年12月2日~12月16日
DVD収録内容 (※CD+DVD盤のみ)
- 「ZEROTICA」ビデオクリップ
XA-VAT(ざばっと)
SADIE PINK GALAXY(SPEECIES)、Közi(ex.MALICE MIZER)、石井秀仁(GOATBED、cali≠gari)、小間貴雄(ex. goatbed)によるバンド。80'sニューウェイブやヘヴィロック、ゴシックパンクなどの影響を感じさせるサウンドと、グラマラスなビジュアルの融合は、ほかに類を見ない個性的な存在感を放つ。2010年12月、シングル「XA-VAT」でデビュー。