音楽ナタリー Power Push - 上坂すみれ

“革ブロ”リブート前夜に放つ キラキラ&キワキワのディスコチューン

がんばって政治家を目指します!

──「愉快に楽しく歌ってみよう」っていうのはデモをもらってスタジオに入るまでに自宅なりでプランニングするんですか?

いや、家で歌うときは本当に“練習”っていう感じ、とにかくリズムと音程を外さずに歌えるようにするだけですね。私のプランと録る人の考えているプランが違うこともあるし、もし違ったら修正するのが大変なので。スタジオに入ってから「こうしましょう」っていうアドバイスをいただきながら歌うようにしてます。ただ、最近ビックリしたんですけど、同世代の声優さんって皆さん、養成所とか専門学校で歌のレッスンを受けていたみたいで……。

──カリキュラムにボーカルレッスンがあるって言いますね。

そうなんですよね。私はその課程を経ていないので……。

──そうか。プロダクションのジュニアモデル部門から異動して声優のキャリアをスタートさせているから。

上坂すみれ

なのでその話を聞いたときは「だからみんなちゃんと音楽についていろいろ考えてるし、歌もうまいのかー!」って(笑)。

──「私には教育の機会が足りてなかった!」(笑)。

あはははは(笑)。昔の政治家の中には高等小学校卒の人もいたらしいから私も大丈夫かな、とは思ってるんですけど……。

──ただやっぱり教育って大事なものでもあって。高い教育を受ける機会に恵まれなかったことから世を拗ねてシリアルキラーに、みたいな人もいますよね(笑)。

そうなんですよね……。正直な話、今も歌うとはどういうことなのか、歌とはなんなのか考えてしまうときもありますし、ともすればシリアルキラー側に傾きかねない私もいるんですけど(笑)、がんばって政治家を目指します!

上坂すみれ=謎の石鹸会社

──でも面白いですね。「歌はよくわからない」と謙遜なさるものの、「Inner Urge」をはじめどの楽曲もすごく面白いし、決起集会には毎回その歌聴きたさに数百から数千の同志が集まっているわけですから。

それはたぶん、私以前にも「歌はよくわからない」っていう歌手がいたからなんだと思います。例えばおニャン子クラブに入ったばかりの頃の吉沢秋絵さんなんかはそういう感じだったんじゃないかなあ、とか。

──普通の女子高生がある日突然テレビの人気者になって、その数カ月後にはソロデビューの算段がついていた。確かにデビュー当時は「歌とは」「表現とは」みたいな自覚や自意識はなかったかもしれませんね。

きっとご本人としては「なぜ?の嵐」だったと思うんですよ。

──あはははは(笑)。何をうまいことを。

上坂すみれ

ふふふふふ(笑)。そして私はデビュー3年目の今も「なぜ?の嵐」のまっただ中にいるわけです。

──とはいえ吉沢さんしかり、上坂さんしかり、デキる大人たちの言葉に素直に耳を傾ければいい音楽ができあがることは知っていた、と。

そういう先人の知恵が私にも脈々と受け継がれてるんじゃないかな、と思ってます。

──ただ、上坂すみれ楽曲がウケる理由の1つには当然ご自身の魅力もあると思うんです。でなければ“上坂すみれ”名義で6枚もシングルを出せはしないし、同志も“上坂すみれの歌”を聴きはしないはずだから。

でもやっぱり「歌はよくわからない」という感じもあって、皆さん、謎の投資をしているというか、謎の石鹸会社の株を買い続けるみたいなことをしている気がしなくもないんですけど……。皆さん、投資をするには何か理由があるわけですよね?

──ちゃんと配当を受け取れることを知ってるからでしょうね。

石鹸会社から?

──上坂さんからです!(笑) 面白い楽曲や楽しいライブを配当してくれる。ちゃんとエンタテインしてくれるから上坂すみれ株を買ってるんですよ。

確かに同志諸君はそう言ってくれますし、それはもちろんうれしいことなんですけど、なぜそう言っていただけるのか、ホントにわかっていなくて。理由がわかったほうがその長所を効率よく伸ばせる気もするんですけど、それはそれで私らしくない気もしますし、どうすればいいんでしょうね(笑)。

図らずも参照していたJuice=Juiceメソッド

──で「Inner Urge」の面白さを担保するものの1つに歌詞もあると思うんですけど……。

最初に見たときは「うわあ……」と思いました(笑)。

──Aメロの1フレーズ目から「『ヨクセイ』の中には『セイヨク』が潜んでる」ですからね(笑)。潜んでるも何も……。

ただのアナグラムじゃないか!って(笑)。でもこの歌詞を鬼の首でも取ったかのように歌い上げるバカバカしさっていうのは、私らしさでもあるのかな?っていう気はしています。

──確かに妙にエロティックになりすぎてもいないし、さりとて狙いすぎのお寒いネタソングにもなっていない。ちゃんとバカバカしくも、すごくファンキーでかわいらしい1曲に仕上がっています。

あっ、そこについてはちょっと考えていたのかもしれません。比べるのはすごく失礼な話なんですけど、私、Juice=Juiceがすごく好きで。Juice=Juiceって歌詞カードだけ見るとすごくアダルトなことを歌ってたりするんです。

──つんく♂さんって、歌い手の実年齢よりも年齢感高めのラブソングを書く方ですもんね。

でも歌い方はすごく年相応じゃないですか。だからちょっと大人っぽいんだけど、かわいらしいアイドルソングとして聴くことができて。今気付いたことであって、レコーディングのときに「Juice=Juiceみたいに歌おう!」って思っていたわけではないんですけど、それと同じことが起きたのかもしれないです。「曲調が曲調だから愉快に楽しくしよう」ってことだけ考えてマジメに歌ったから、ほどよいバランスになったというか。

ニューシングル「Inner Urge」 / 2015年7月22日発売 / STARCHILD
初回限定盤 [CD+DVD] / 1836円 / KICM-91617
「Inner Urge」初回限定盤
通常盤 [CD] / 1296円 / KICM-1617
アニメ盤 [CD] / 1620円 / KICM-91618
初回限定盤、通常盤CD収録曲
  1. Inner Urge
    [作詞・作曲:松浦勇気 / 編曲:橋本由香利]
  2. ツワモノドモガ ユメノアト
    [作詞:椎名可憐 / 作曲・編曲:牧元芳朗(strip)]
  3. Inner Urge off vocal ver.
  4. ツワモノドモガ ユメノアト off vocal ver.
初回限定盤DVD収録内容
  • 「Inner Urge」PV
アニメ盤収録曲
  1. Inner Urge
  2. ツワモノドモガ ユメノアト
  3. Inner Urge off vocal ver.
  4. Inner Urge TV size mix
上坂すみれ(ウエサカスミレ)

上坂すみれ

ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優、アーティスト。小学生時代よりジュニアモデルとして活動し、2012年テレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューを果たす。以来、注目作に出演する一方でメディアやイベントなどを通じて、無類のロリータファッションマニア、ソ連・ロシアマニア、ミリタリーマニア、音楽マニアであることがファンの知るところに。そして2013年4月、その趣味の世界をダイレクトに反映したシングル「七つの海よりキミの海」でアーティストデビュー。その後も桃井はるこ作詞作曲の「げんし、女子は、たいようだった。」や、大槻ケンヂ作詞、NARASAKI作曲の「パララックス・ビュー」など話題作を立て続けにリリースし、2014年1月には1stアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」を発表する。また同年7月、及川眠子、サエキけんぞう、窪田晴男、谷山浩子らを作家陣に招いた4thシングル「来たれ!暁の同志」を、12月には5thシングル「閻魔大王に訊いてごらん」と自薦の80年代アイドルナンバーをコンパイルした「上坂すみれ presents 80年代アイドル歌謡決定盤」を発売。そして2015年7月、約7カ月ぶりとなるシングル「Inner Urge」をリリースした。