ナタリー PowerPush - 上坂すみれ

「七つの海よりキミの海」に見る すみぺの闘争と革命の日々

畑亜貴と伊藤賢治に全部バレていた

──確かにあえて「何も考えない」ことを選択したことが功を奏してますよね。コード進行や展開にはゲルニカへのオマージュのようなものを感じるし、戸川さんファンの上坂さんは当然ゲルニカを聴いているだろうけど、単なる焼き直しにはなっていない。80年代ジャパニーズニューウェイブの2013年バージョンというか、完全に上坂さんオリジナルの楽曲になっています。

ありがとうございます! なんか自信が出てきました(笑)。

──あんなド派手なデビューイベントを打っておきながら自信なかったんですか!?

上坂すみれ

小心者だし、いつもおっかなビックリです(笑)。

──そして2曲目「我旗の元へと集いたまえ」はゲーム「サガ」シリーズや「聖剣伝説」シリーズの楽曲も手がける伊藤賢治さんの作曲。リード曲がニューウェイブの最新モードだったのに対して、こちらはある種クラシックともいえる1曲ですよね。

80年代アニメのオープニングっぽい勇ましい感じというか、ひたすら熱くて、歌ってて楽しかったです。伊藤さんにこんなカッコいい曲を書いていただけるなんてゲーム音楽ファンとしては非常に胸いっぱいなんですけど、我がことながら「こんな素敵な歌を歌わせてもらえるなんて、ちょっと卑怯だなあ」っていう気もしています(笑)。

──しかも作詞の畑さんも上坂さんを100%理解したかのような詞を書いてますしね。「奇跡に照らされた革命へと 戦士なら 戦士なら 怖れずに進め 共にあれ、心。」って伊藤さんの曲にはもちろんハマるし、上坂さんの趣味にもピッタリですし。

今回ブックレットにも使っていただいたんですけど、私、イラストを描くのが好きで。畑さんには事前に私が描いた絵を何点か見ていただいてはいたんですけど、直接お話したのはレコーディング当日が初めてだったんです。だからあくまでその絵から私の趣味嗜好を把握していただいただけなんですけど、それだけになんか見透かされたというか(笑)。伊藤さんや神前さんもそうなんですけど、やっぱり天才の方って本当にすごいです。

若手No.1作曲家の書く19世紀の軍歌

──で、3曲目「我らと我らの道を」の詞を書いたのがその天才・畑さんで、作曲は新たなる天才、田中秀和さん。ある意味、この曲が一番ビックリしたんですよ。田中さんの代表曲って「太陽曰く燃えよカオス」みたいなコミカルなんだけど、クラブユースにも耐えそうなアタックの強いダンスミュージックじゃないですか。

その方に行進曲を書いていただくという(笑)。しかも第一次世界大戦期にも滅多になかったようなタイプの。

上坂すみれ

──あっ、そうなんですか? こういうベタなマーチングドラムに大げさなブラスとストリングスが重なって、途中「行進 行進 我らと行進」というシンガロングというかシュプレヒコールが入るような行進曲っていつ頃歌われていたものなんですか?

ロシア帝国の頃ですね。

──日露戦争の頃?

もっと前、トルコというかオスマン帝国と戦争していた頃のクラシカルな戦闘ソングですね。戦車はなくて、ようやく鉄砲が配備されたくらいの頃、まだまだのどかな時代の汚れなき感じの行進曲です(笑)。だから「行進曲を作ってくださるとは聞いていたけど『こうきたか!』『19世紀の行進曲か!』」ってビックリして。あわてていろんな軍歌を聴き直しました。

──この曲に関しては先人の歌唱法を参照しましたか(笑)。

一度ロシアに行ったことがあって、そのときCD屋さんにも行ったんですけど、ロシアって今でも兵隊さんがいらっしゃるので軍歌も普通に置いてあるんですよ。いろんな歌手の人がカバーしたバージョンも売ってますし。それこそちっちゃくてかわいい双子の女の子ユニットが軍服を着て歌ってるという夢としかいいようのないバージョンもあったので(笑)、昔の軍歌のCDと一緒にそのあたりも改めて聴いてみました。

──ミリタリーマニアにとって自分の行進曲を持てるってすごく幸せそうですよね。

ホントにそうなんですよ! ソロアーティストなのに「我らと行進」しちゃうんですから(笑)。でも、せっかくならファンのみなさんの前で歌いたいですよね。今回3曲ともでんぱ組.incさんも担当しているYumiko先生にすごく個性的な振り付けをしていただいていて、ステージも楽しくなるはずなので皆さんの前で歌うのが楽しみです。

上坂すみれの「巻き込む力」

──ちょっと話は変わるんですけど、スタッフの方、それから作家陣って上坂さんの趣味の世界について100%理解はしていないですよね? それはおろか50%も……。

理解していただけてないかもしれないです(笑)。

──でも2月の決起集会ではロリータルックにマント、制帽姿の上坂さんをファンはノリノリで受け入れたし、スタッフも秘密結社の一員を装うために全員頭から紙袋をかぶっていた。しかもメディア掲載用の写真にはあえて紙袋姿が見切れているものを選んだとか。

そうみたいです。

──そして「七つの海よりキミの海」の収録曲の作家陣も上坂さんの趣味嗜好を十全に理解したかのような曲をすごくノビノビと作っている。なんで上坂すみれという人は自分の世界にみんなを巻き込めるんだと思います?

なんでなんでしょうねえ?

──普通は止められてもおかしくないと思うんですよ(笑)。

あはははは(笑)。

──でも、みんな「上坂すみれ」をきっかけにそのヤバい世界を楽しんでいる。

よく言えば、ラジオ番組などで包み隠さず自分のことをしゃべった結果というか(笑)。というのも、ラジオ番組に出させていただくと、あいさつをロシア語でしたり、趣味の話を始めたら止まらなくなったり、つい自分の中身が全部出るようなおしゃべりをしちゃうんですよ。でも、そういう私のことをファンの皆さんやスタッフの皆さん、作詞家さん、作曲家さんが温かく見守って受け入れてくださっているのでありがたいです。

──なるほど。語られる趣味の世界はどれも「にわか」「ファッション」なんてレベルじゃない。今日のお話だけでも音楽にせよソ連にせよ、そのジャンルについてディープに掘っていることがわかりますから。だからみんなも「こいつ、ホンモノだ!」「面白い!」って上坂すみれに乗っかるのかもしれないですね。

そう思っていただけているといいですよね。今回のシングルにも「こんな小娘がこんなに自由に好きなことをやってるんなら、私も!」って皆さんに思ってもらいたいっていう気持ちは込めたつもりなので。特に自分が好きな世界を周りになかなか理解してもらえないような方に「自分の好きなことを好きって言ってもいいんだ」って気付いてもらえたらうれしいです!

──それこそかつての上坂さんのような(笑)。

ええ(笑)。学校生活に疲れたり、先生が怖くて学校に行きたくなかったり、塾に行きたくなかったりした昔の私のような人にも聴いてもらいたいですね。ただ「好きなことを好きって言ってもいいんだ」ってクラスで趣味のことばっかりやり過ぎると、ロシアにハマりすぎた高校時代の私みたいになるので気を付けてください(笑)。

──出力には注意して(笑)。

適度に、でも、めいっぱい趣味の世界を満喫してください!

上坂すみれ
1stシングル「七つの海よりキミの海」 / 2013年4月24日発売 / STARCHILD
「初回限定盤」[CD+DVD] / 1700円 / KICM-91447
「期間限定アニメ盤」[CD] / 1500円 / KICM-91448
「通常盤」[CD+DVD] / 1200円 / KICM-1449
初回限定盤 CD収録曲
  1. 七つの海よりキミの海
  2. 我旗の元へと集いたまえ
  3. 七つの海よりキミの海(off vocal ver.)
期間限定アニメ盤 CD収録曲
  1. 七つの海よりキミの海
  2. 我旗の元へと集いたまえ
  3. 七つの海よりキミの海(off vocal ver.)
  4. 七つの海よりキミの海(TV size mix)
通常盤 CD収録曲
  1. 七つの海よりキミの海
  2. 我旗の元へと集いたまえ
  3. 我らと我らの道を
  4. 七つの海よりキミの海(off vocal ver.)
初回限定盤 DVD収録内容
  • 「七つの海よりキミの海」PV
上坂すみれ(うえさかすみれ)
上坂すみれ

ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優。小学生時代よりジュニアモデルとして活動。2012年テレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューし、同年「中二病でも恋がしたい!」や「ガールズ&パンツァー」など注目作に立て続けに出演する。その一方でラジオ、イベント、アニメ誌、カルチャー誌などを通じて、無類のロリータファッションマニア、ソ連・ロシアマニア、ミリタリーマニア、音楽マニアであることがファンの知るところに。2013年4月、その趣味の世界をダイレクトに反映したシングル「七つの海よりキミの海」でアーティストデビュー。