音楽ナタリー Power Push - The Mirraz

EDM傾倒の理由

The Mirrazのニューアルバム「しるぶぷれっ!!!」が、彼らが立ち上げた新レーベルDEATH PYRAMID RECORDSからリリースされた。ギターを中心に構築してきたこれまでのサウンドプロダクションから一転して、本作で「EDM」をキーワードとするシンセ主体のエレクトロサウンドへと大きくシフトチェンジした彼ら。今、The Mirrazに何が起こっているのか。フロントマンの畠山承平(Vo, G)が赤裸々に語ってくれた。

取材・文 / 三宅正一(ONBU) 撮影 / 西槇太一

新レーベル設立の理由

The Mirraz

──まず、主宰レーベルDEATH PYRAMID RECORDSを立ち上げて今作のリリースに至った経緯から聞かせてください。

前のレーベル(ユニバーサルミュージック)を辞めてから、自然な流れで今の事務所(SPEEDSTAR MUSIC)に所属することになって。レーベルを立ち上げたことに関しても、ホントに流れでそうなったという感じで。

──そうだったんですね。

だから、2011年にレーベル兼事務所としてKINOI RECORDSを立ち上げたときの感じとは違うんですよ。あのときは自分たちで事務所を作ってちゃんとした活動基盤を築いていこうという思いがあったんですね。でも、事務所自体があっという間に潰れちゃったみたいな(笑)。それでまた行き場を失いそうになったときに当時のEMI Music Japanと契約して。でも、EMIもあっという間にユニバーサルと合併して、それからいろいろあっていわゆるメジャーの恩恵を受けることもなく……。そんな感じでユニバーサルから最後にリリースしたのが前作の「OPPORTUNITY」だったんですね。それでこれからまたどうするかってなったときにSPEEDSTAR MUSICが声をかけてくれたので、新しくレーベルを立ち上げて一緒にやろうということになって。その話がなければ自分たちだけでやろうと思ってましたね。

──The Mirrazってずっと流浪のバンドですよね。畠山さん的にはその理由に思い当たる節があるんですか?

今思えば俺は生意気だったなとは思いますね。

──それはどの時期?

どの時期もそうなんですけど(笑)、プロモーションプランを練るときに関わるスタッフに対して「そんなんで売れるわけねえじゃん」みたいなことをずっと言っていて。そんなこと言われたら、周りの人は気に食わないじゃないですか。「アーティストのくせに生意気だ」みたいな。わかんないですけど。

──「アーティストのくせに生意気だ」というのもおかしな話だと思いますけどね。

畠山承平(Vo, G)

でも、俺の場合はスタッフとぶつかる理由がほかのアーティストは違う気がするんですよね。ほかのアーティストは作品の内容についてぶつかることがあるかもしれないけど、俺は売り方とかにも文句を言うから。そうすると現場が「うーん」みたいに微妙な空気になるというか(笑)。そのあとで空気をよくすることもあまりできなかったし。

──でも畠山さんも安住の地が欲しいとは思ってるんですよね?

常に思ってますよ。最初のインディーズ期もホントはその体制でずっと続けるつもりでしたから。KINOI RECORDSでやってたときも、伝説になるようなレーベルにしたいと思ってたし。個人的には日本で活動して売れるためにはメジャーレーベルに行かなきゃダメだろうなとは思っていながらも、インディーズでやれるならインディーズのままでいたかったんですよ。でもそういうわけにもいかず。

──ええ。

またインディーズに戻りましたけどね。まあ、今の事務所はキュウソ(ネコカミ)がいるからとりあえず3年は大丈夫かなと思ってるんですけど(笑)。それよりも今、俺は自分たちの環境云々よりもバンドシーンの世代交代とかのほうが気になっていて。

日本の音楽シーンに危機感を覚える

──世代交代と言うと、畠山さんはどのあたりが気になってるんですか?

佐藤真彦(G)

自分たちが来年結成10周年を迎える中で、周りの同世代のバンドを見たらthe telephonesも活動休止したし、andymoriも毛皮のマリーズも解散していて。THE BAWDIESはがんばってるけど、同世代のバンドの勢いが止まりつつあるのを感じざるを得なくて。どんなバンドでも10年くらいやってるとセールスも動員も落ち着いてきちゃうのは仕方がないし、そこからどう上がっていくかをみんな考えてると思うんですけど、その間に新世代と呼ばれるバンドがいっぱい出てきてる。で、今ってわりとすぐに武道館でライブをしたりするじゃないですか。それを見てると、バンドが消費されるスピードがすげえ早くなってるなと思うんですよね。

──上がっていくのも落ちていくのも。

そうそう。上がるのが早いということは、飽きられるのも早いのかなって。そういう時代が来てる中で、10年選手の俺たちがもう一度上がっていくにはどういう方法があるか自分も含めて誰もわからないことがヤバいなと思うんですよね。だから、自分たちの環境よりも、日本の音楽シーンに危機感を覚えていて。俺たちがバンドを始めたときは、周りの同世代のバンドはロックンロールリバイバルを意識してた。そういうバンドたちがちょっとずつ売れ始めて日本のバンドシーンがダサくない方向にどんどん変化していくだろうなと思ってたんですよ。でも、結果的にはそんなこともなくて。

──確かに大きなムーブメントにはならなかったですよね。大局的に見れば今の流れはどんどんドメスティックな方向に向かっているとは思う。

そうですよね。それにドメスティックなロックを鳴らしてるバンドの盛り上がりはまた10年くらいは続くだろうけど、そのあとはまたリセットされるんじゃないかなって思っちゃうんですよね。

The Mirrazは中途半端だった

──ただ、一方でインディーズも含めて、メジャーのバンドシーンとは一線を画す音楽性で活動を展開しているバンドも増えてはいて。ブラックミュージックに傾倒するバンドとかね。そういうバンドが大きな市民権を得たらもっと面白いことになりそうだなとは思うんですけどね。

The Mirraz

俺もそういう流れに期待はしたいんですけど、それは結局1990年代に渋谷系が流行ったときと同じような感じになるのかなって。ざっくり言うとオシャレなバンドって生活やファッションに密着するじゃないですか。それはそれでシーンができるんだけど、何かが大きく変わるわけではないと思う。さらに細分化が進むというか、「それはそれでいいよね」っていう風潮が強まっていくんじゃないかなと。シーンが細分化して、お互いのいいところを理解するのではなくて、「そっちはそっちで楽しめばいいじゃん」というムードがどんどん強くなっていく気がする。

──そういう意味ではThe Mirrazや同世代のバンドは、洋楽のエッセンスを取り入れた音楽を作ったり、アンダーグラウンドとオーバーグラウンドをつなげたり、いろんなことをやってましたね。

俺は自分のバンドに対しても思うのは、そのやり方が中途半端だったのかなと。The Mirrazはすごくポップかつ洋楽的な音楽を理想として作ってきたつもりで。音楽的に最先端だし、レベルの高いことをやってるけど、一般のリスナーも楽しめるポップさを持っているのがThe Mirrazだと思ってたんですよ。それを目指してやってきたけど、結局はただ矛盾してるだけだったのかなって。自分たちの武器がリスナーには通用しなかった。

ニューアルバム「しるぶぷれっ!!!」2016年2月10日発売 / DEATH PYRAMID RECORDS
「しるぶぷれっ!!!」
初回限定盤 [CD+DVD+グッズ]5555円 / DQC-9045
通常盤[CD]3000円 / DQC-1514
CD収録曲
  1. マジか。そう来たか、やっぱそう来ますよね。はいはい、ですよね、知ってます。
  2. まざーふぁっかー!!!
  3. え?それはアレですか?
  4. イヤーワームラブソング
  5. パンドラの箱、ツンデレっすね
  6. つーか、っつーか
  7. いきなり告白とかしない方がいいと思う
  8. 葬式をしよう
  9. なぁ?なぁ?なぁ?
  10. 土曜の原宿マジでクソ
  11. いつでも死ねる
  12. もしも過去に行けたなら
  13. MA・ZI・CA!(IKINARI Remix)
  14. TUuuuuuuKA!(DOOPE Remix)
  15. PA・N・DO・LA!(SUPER Remix)
  16. SO・U・SHI・KI!(BLACK Remix)
  17. SHI・NE・LU!(HOUSE Remix)
  18. MO・SHI・CA・CO!(MAIAMI Remix)
初回限定盤DVD収録内容
  • ライブ映像
    2015「PYRAMID DE 427 part8-BATMON-」@ShibuyaWWW
初回限定盤付属グッズ

腕時計、絵本、ステッカー、缶バッジ

ツアー情報
The Mirraz 2016SS TOUR「汁不符列!!!」
  • 2016年2月24日(水)千葉県 千葉LOOK
  • 2016年3月4日(金)長崎県 Studio Do!
  • 2016年3月5日(土)福岡県 LIVE HOUSE CB
  • 2016年3月11日(金)香川県 DIME
  • 2016年3月12日(土)岡山県 PEPPERLAND
  • 2016年3月25日(金)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2016年3月27日(日)北海道 BESSIE HALL
  • 2016年4月1日(金)石川県 vanvan V4
  • 2016年4月2日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2016年4月9日(土)愛知県 ElectricLadyLand
  • 2016年4月14日(木)広島県 HIROSHIMA 4.14
  • 2016年4月15日(金)大阪府 Music Club JANUS
  • 2016年4月17日(日)東京都 LIQUIDROOM
The Mirraz(ミイラズ)
The Mirraz

2006年9月に畠山承平(Vo, G)を中心に結成されたロックバンド。2008年12月に1stアルバム「OUI! OUI! OUI!」、2009年10月に2ndアルバム「NECESSARYEVIL」を発表。UKロックの影響を感じさせるサウンドや攻撃的なパフォーマンスで注目を集める。2011年に自主レーベルKINOI RECORDSの立ち上げと同時に、佐藤真彦(G)と中島ケイゾー(B)が正式加入。2012年7月にEMI Music Japan(現Virgin Music)へ移籍し、10月にメジャー第1弾シングル「僕らは / 気持ち悪りぃ」を、2013年2月にメジャー1stアルバム「選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ」を発表。2013年10月に新ドラマー新谷元輝の正式加入をアナウンスし、2014年5月に新谷加入後初音源となるシングル「この惑星のすべて」を発売する。2015年にメジャーレーベルを離れ、主宰レーベルDEATH PYRAMID RECORDSを設立。2016年2月にアルバム「しるぶぷれっ!!!」をリリースした。