音楽ナタリー Power Push - The Floor
札幌発4人組が放つ 初期衝動と青春感あふれる新作
札幌を拠点に活動するThe Floorが、キャリア2作目となる全国流通盤「Re Kids」を完成させた。
今夏開催されたフェス「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO」に一般公募枠「RISING☆STAR」で出演し、朝イチのステージにも関わらず多くの観客を集めた彼ら。道外でのライブ活動も増える中で発表される本作には、キャッチーで勢いのある新曲4曲が収録されている。
音楽ナタリーでは、4人がミュージックビデオの撮影のために上京したタイミングでインタビューを実施。The Floorの音楽性、これからの目標などを聞いた。
取材 / 小田部仁 文 / 中野明子 撮影 / 後藤壮太郎
The Floorのテーマは青春性
──The Floorは2012年に結成されたそうですが、どういうきっかけでこのメンバーが集まったんですか?
ミヤシタヨウジ(B, Cho) 僕とコウタロウは同級生で高校時代からバンドをやってたんですが、ライブをする中でほかのバンドとも仲良くなって。で、高校卒業するタイミングで、コウタロウとリョウジと新しくバンドやろうかってなって組んだのが始まりです。そのときは違うボーカリストがいたんですけど、やりたいことが食い違ったのでボーカルがバンドをやめて。そのあとに残ったメンバーで話し合ったときに「歌モノがやりたい」っていうことになってボーカリストを探し始めたんですけど、探すために活動を止めるのも嫌だったんでしばらくインストバンドやってました。で、大学が一緒だったハヤトを誘ったっていうのが結成のいきさつですね。
──最新作の「Re Kids」ですが、歌とメロディの力が伝わってきました。The Floorの楽曲におけるテーマというのはあるんでしょうか?
ナガタリョウジ(G, Cho) 青春性みたいなものがテーマだったりキーワードになってますね。それぞれ10代の頃に音楽にハマったきっかけのバンドの音楽がベースになってます。例を挙げるとBUMP OF CHICKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATION、ELLEGARDENとか。彼らの音楽を聴いたときに感じた、言葉にならない衝撃とか青春性が僕らの根底にあって。今作のタイトル「Re Kids」もそういった意味合いがあります。今も海外の音楽を聴いて自分が10代の頃に感じていた感覚を覚えることがあるんですね。僕たち自身も新作のタイトルのように、音楽に対しては“いちキッズ”だと思っていて。キッズのときに感じた初期衝動みたいなものに、今の僕らの好きなサウンドをプラスした音が、The Floorのアイデンティティになればいいなと思ってます。
ミヤシタ 個人的には4人でバーッと集まって音を出してるときの無敵感がThe Floorの魅力であり強みだと思ってるんですよね。好きなバンドの曲をイヤフォンで聴いてるときって、僕は「今、自分もう最強だな」って感覚になるんですよ。そういう感覚をThe Floorとしてライブをやってるときに、お客さんと共有できてると思ってて。
コウタロウ(Dr, Cho) 僕らは曲を作るときに「4人全員がいいと思うものじゃないとダメ」というのが前提としてあって。僕たち邦楽も洋楽もどっちも好きなんですけど、洋邦問わず、自分たちが純粋にいいと思うものを詰め込んだ楽曲を作るようにしてますね。その結果、邦楽好きな人も、洋楽が好きな人も引っかかる、いいとこ取りみたいな音楽が僕らの音楽性っていう気がしてます。
「頭をバコーンって殴られるような感覚」があるかどうか
──The Floorは自分たちはどのジャンルに属していると思いますか?
ナガタ 僕は聴いてくれた人がJ-ROCKだと思えばJ-ROCKでいいし、「洋楽のエッセンスが感じられるバンドだ」と言われたらそれはそれでうれしいし。どう見られるかはあんまり意識してなくて、極端なことを言えばアイドルだと思ってもらってもいいんです。僕らとしては、ステージに立って何かを表現してお客さんに観てもらう、僕らの音楽を楽しんでもらうという形は変わらないので。だからロックバンドとしてどうありたいということではなくて、The Floorという存在をちゃんと表現したいという気持ちがあります。
コウタロウ 受け取る側に委ねるというかね。
ナガタ 例えば昔出した「リップサービス」っていう曲は、踊れる曲って言われてますけど、踊りたい人が踊ってくれればいいですし、じっくり聴きたい人がいればじっくり聴いてもらいたい。僕らも聴き手も自由でありたいと思うんですね。
──最近、若いバンドに話を聞いていると「この曲はフェスに向けて踊れるように作りました」といった発言が出てきたりするんですね。要は、戦略的に曲を作っていると。The Floorの場合は戦略的に考えて曲を作ることはありますか?
ナガタ 初めて聴いたときの“即時性”みたいなものは考えてますね。ライブでもCDでも、1回聴いた瞬間に「いいな」って思えるようなところを意識するようにしてます。
──その「いいな」と思える基準とは?
ナガタ 「頭をバコーンって殴られるような感覚」があるかどうか。自分の中ではThe 1975の「Chocolate」を聴いたときのような瞬間。一発で引き込まれるサウンドメイクになっていること。もちろん僕らはまだまだなんですけど、引き込まれるようなサウンドを特にメロディで出したいと思ってて。例えば、渋谷の街頭ビジョンで10秒くらい流れるスポットとか、YouTubeで5秒くらい流れる広告映像のような短い尺でも聴いた人に引っかかるキャッチーなメロディを目指したいですね。
それぞれの札幌での生活
──皆さん、今も札幌で暮らしてらっしゃるんですよね。毎日どんな生活をしているんですか?
ササキハヤト(Vo, G) 最近は東京とか道外にいることが増えたけど、札幌にいるときは基本スタジオに入ってるよね。
ナガタ うん。毎日とまでは言わないですけど、スタジオに入って、家に帰って曲作る。TwitterとInstagramを更新する。あとはいろんな音楽サイトやYouTubeを観て気になるバンドはひたすらチェックする。
ミヤシタ 普通だよね。なんか面白いことしてないかなと思ったんですけど、なかった(笑)。
──住んでいるところも近所なんですか?
ミヤシタ それがバラバラなんです。僕は札幌ドームの近くに住んでるんですけど、家の後ろが畑だったりするんですよ。都会と田舎のちょうど狭間ぐらいのところに住んでて。家にいるときは、散歩がてら牧場に行ってアイスクリーム買ってみたいな。凍った牛乳食べてるみたいな感じの濃いアイスクリームが売ってる店が近所にあったりして。
一同 はははは(笑)。
──そういう、牧場が家の近くにあったりとか“北海道的な要素”が音楽に影響しているところはありますか?
ササキ 「北海道出身って言われて腑に落ちた」みたいなことを言ってくれる方は多いですね。
──メロディだったり、フレーズの作り方に土臭さや雄大さがある感じはします。
ササキ なるほど。例えば、今回の「Re Kids」に入ってる「君とマフラー」っていう曲は、北海道ならではの日常の風景が出てるかもしれませんね。僕らにとってみれば冬といえば雪のイメージがあるんですけど、東京になると非日常なものになるんですよね。この曲には、札幌に住む僕らにとっての日常が描かれているかな。
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収録曲
- Wannabe
- パノラマ
- 君とマフラー
- 内緒話
ライブ情報
The Floor Presents「Re Kids」リリースツアー
- 2016年12月21日(水)北海道 COLONY
<出演者>
The Floor / PELICAN FANCLUB - 2017年1月20日(金)東京都 下北沢ERA
<出演者>
The Floor / and more - 2017年1月27日(金)大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE
<出演者>
The Floor / and more - 2017年1月29日(日)北海道 COLONY
<出演者>
The Floor / ココロオークション
The Floor(フロア)
2012年10月に結成された北海道札幌市在住ギターロックバンド。メンバーはササキハヤト(Vo, G)、ナガタリョウジ(G, Cho)、ミヤシタヨウジ(B, Cho)、コウタロウ(Dr, Cho)の4人。札幌を中心にライブ活動を展開し、2016年5月に初の全国流通作品となるミニアルバム「ライトアップ」を発表する。同年8月に開催されたロックフェス「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO」に、一般公募枠「RISING☆STAR」の1組に選出され初出演を果たす。12月に4曲入りCD「Re Kids」をリリース。