ナタリー PowerPush - TETSUYA
9年ぶりソロアルバム「COME ON!」に起きた数々のミラクルをTETSUYAが明かす
いいことも悪いことも背負う覚悟がないと
──その「EDEN」の後にロマンティックなラブソング「魔法の言葉」が来るという振り幅の大きな流れも見事だなと思いました。大胆かつ潔いなと。
僕、個人的にもギャップって好きなんです。“ギャップ萌え”ですよ(笑)。なんかちょっとツンデレっぽいじゃないですか。「EDEN」のあとに「魔法の言葉」(笑)。
──ここまで踏み込んで、「魔法の言葉」のような真正面からのラブソングを歌っているところもすごいなと思いました。
やっぱり賛否両論あると思います。この歳になって「何言っちゃってんの?」っていう意地悪な見方をする人はいるだろうけど、何をやっても文句を言われるのは覚悟の上で、こういう仕事をやってるわけだから。もうちょっとオブラートに包んだ表現にしようとか、そんなこと考えるぐらいなら、こういう仕事はやらないほうがいいと思う。全部、いいことも悪いことも背負う覚悟がないと。でも、ここまでストレートなラブソングは、僕も今までなら歌えなかったと思います。
──今回のアルバム制作で、歌詞を書くのは時間がかかりましたか?
いや、それがね。今回すごく早く書けたんです。自分でもびっくりするくらいどこでも歌詞を書けるなと思いました。レコーディングスタジオのコントロールルームで、室姫くんがギターを隣で弾いてたとするでしょ。ギター録りだから、俺も聴くし。「そこは、もう少しこんな感じで」とか、「フレーズはこんな感じで」とか、具体的なディレクションをするわけじゃないですか。そういう作業と並行して書いてましたから。4~5時間で、「あ、1曲書けた!」みたいな(笑)。
──どうしてそんなに早く書けるようになったのでしょうか?
なんか目覚めたんじゃないですか(笑)。最初は、「まぐれで、たまたまこの曲だけ早く書けたんだ」と思ってたら、次もその次も、ポンポンポンっと書けて。「Are you ready to ride?」とか、ツアー(「FIRST TOUR 2010 ルーレットを回せ!」)が始まる3日前まで、リハーサルではラララで歌ってましたから(笑)。家に帰って、結構遅い時間だったんですが、机の前に座ってちょっと書きだしたら、「あ、これ書けるかも」って、一晩で書けちゃったし。次の日、コーラスパートの歌を入れて、ツアーの初日を迎えましたから。でも、微調整には時間をすごくかけるんです。「ホントにこれでいいのかな? 大丈夫かな?」っていうのを、毎日見直すから。しかもいろんな時間帯で見直します。夜中に見直すのと、朝見直すのでは感じ方が違うし。そうやって直して直して、やっと完成するんです。だから8割9割はわりとすぐできるけど、そこから1割2割をじっくり時間かけて最終型に仕上げていく。歌のレコーディング直前に直したりもしますから。
ベーシスト史上最強のギターソロ
──サウンドも徹底的に練り上げて作っているという印象を受けました。
音に対しては、自信あります。こだわりはハンパじゃないです。ちょっとでも良い音にするためには、あらゆる機材を使うし、いろんなことを試しました。でも、そのこだわりはミュージシャンとして、アーティストとして当然だと思います。今回のレコーディングでも、ギターとベースを、合わせて6~7本購入しましたし。そこは妥協したくないですよね。
──TETSUYAさんのギターも聴きどころとなっているなと思いました。
全部じゃないけど、どの曲にも僕が弾いているギターが入ってます。ソロだけ弾いてる曲もありますし。ソロは、ちょっと自信ありますよ(笑)。ギタリストぽくないフレーズ? 印象に残る、口ずさめるフレーズを弾けたかなと思ってます。
──TETSUYAさんのギター、歌っているかのように聴こえてきました。
僕はギタリストではないので、いわゆる“ギタリストのソロ”ではないと思います。僕はベーシストなんで、テクニック的にはすごいフレーズを弾くことはできないですが、ベーシスト史上最強のギターソロを弾いてると思います(笑)。ギタリストの感覚で弾くソロと、僕の感覚のソロはやっぱり違う。僕は歌というか、メロディの延長線上でソロを考えてるから。 ギターでも歌ってますね。あと、速弾きにも挑戦しました。自分で作ったものの、全然弾けなくて自ら特訓しましたけど(笑)。
──アルバムジャケットもインパクトがあります。このアイデアは?
シングル含めてアートディレクションは僕です。今回の「COME ON!」も僕のアイデアなんですけど、賛否両論あると思うんですよ。「え?」って思う人がいると思う。でも、やっぱり、1回見て引っかかるものがいいなと思って、そこを計算して作りました。意外というか、「こう来たか!?」って思わせるものがいいなって。だって「COME ON!」ってタイトル自体が意外じゃないですか。
──確かにそうですね。
じゃあ「COME ON!」のイメージに一番合うものって何かなって……。例えば「COME ON!」って言葉から何を連想します? 僕は、“前のめり”だったり、“力強さ”だったり、向かっていくイメージだったんです。そういうイメージを元に、ヴィジュアルで表現するとしたら何だろうって考えたとき、“ダンベルを持っている映像”が閃いたんです。「かかってこい!」って感じも出せるし、ギリギリまで挑戦してる感じも表現できるなって。
──TETSUYAさんの音楽に向かう姿勢を象徴する絵でもありますよね。
中のブックレット見たら、もっと驚きますよ。「この人ブッ飛んでるな」って思うんじゃないですか(笑)。
CD収録曲
- LOOKING FOR LIGHT
- Roulette [Album Ver.]
- Fantastic Wonders
- guilty
- EDEN
- 魔法の言葉
- Can't stop believing [Album Mix]
- In My HEART
- lonely girl [Album Ver.]
- Are you ready to ride?
- 流れ星
TETSUYA
L'Arc~en~Cielのベーシスト兼リーダーとして1994年にメジャーデビュー。2001年7月に“TETSU69”名義のシングル「wonderful world/TIGHTROPE」をリリースし、ソロ活動をスタートさせる。その後もバンド活動と並行してソロ活動を続け、これまでに6枚のシングルと1枚のフルアルバムをリリース。L'Arc~en~Cielのライブでは、メンバーチェンジバンドPUNK-EN-CIELのボーカル兼ギタリストとしても活躍中。2009年12月にアーティスト名をtetsuから、L'Arc~en~Cielの活動ではtetsuya、ソロ活動ではTETSUYAと改める。2010年5月にシングル「Roulette」、8月には、シングル「LOOKING FOR LIGHT」をリリース。