ナタリー PowerPush - Superfly
私は希望を歌いたい 最高傑作「Mind Travel」完成
実家に帰って、自然が発するメッセージを改めて感じた
──オフの影響は大きかったんですね。
かなり大きかった。こんなに影響するとは思わなかったです(笑)。お休みに入った直後は急ブレーキがかかったみたいで、戸惑ったりもしたんですけど。でも、お休みのあいだに何気なく見ていた景色とかをあとから思い出して、じんわり感動したり。
──さっき言った「今まで見えなかったことがどんどん見えるようになってきた」というのは具体的にはどういうことですか?
私って、田舎者じゃないですか(笑)。18歳くらいからひとり暮らしをして実家から離れているんですけど、お休みのときに久々に実家でゆっくり過ごしたんです。そこで自分は自然の偉大さに大きく影響されて育ったんだなって改めて強く思ったんですよね。自然って言葉を持っていないし、静かにそこにあるものなんですけど、そこから感じるメッセージやエネルギーってたくさんあるんだなって。小さい頃はそういう環境が当たり前だったから「カエルうるさい!」とか苛立っていたんですけど(笑)。
──「カエルうるさい!」っていいですね(笑)。
(笑)でも、人間は生き物なんだ、動物なんだという当たり前のことをちゃんと教えてくれる環境で育ったんだな、すごくありがたいなと思うようになって。
──自然に対する慈しみや過去の愛おしき記憶がこのアルバムでも描かれていますよね。
そうですね。一個人としても、アーティストとしても貴重な時間になりましたね。今まで自分は人間社会の中でどうやってうまく生きていこうとか考えすぎていたところがあったなって。
──それは、Superflyがどんどん大きくなっていく中で、一個人としての越智志帆がそこに追いつかなきゃいけないというプレッシャーでもあったんじゃないかなと思うんですけど。
そうかもしれないですね。変な言い方ですけど、もともと大きなステージに立ちたいという目標があって、そのためにはビジネス的にもうまくやらなきゃいけないところがあるじゃないですか。みんなに共感してもらえるものを届けなきゃいけない=やっぱり表現する私自身が人としてしっかりしないといけないと思っていたので。例えばテレビ番組に出て、ほかのキャリアの長いアーティストさんを見ると、すごいオーラを発していて「すごい人はホントにすごいんだな……」って思って、家で「はぁー……」って反省したりとか(笑)。そうやって悔しい思いをしたり、打ちひしがれることも多かったんですよね。それを乗り越えるためには、人と向き合うことに逃げちゃいけないんだなと思って。
「Wildflower」ができたとき「これは新しいぞ!」って
──このアルバムを聴いていると、ありのままの自分でロックやソウルを体現しても納得するものができるという自信を感じられる。裏を返せば、迷い続ける自分を肯定して、認めているような印象が強くあって。
ああ、そうですね。肯定できるようになったかも。過去も若干肯定できるようになったし。このアルバムって、感動したり、ドキッとしたり、人ってこうなんだなって気づいたり、そういうことがテーマになっている曲が多くて。私の感じることがオリジナリティにつながっているというか……「私はこう思う」っていうことに確信があるんですよね。それはほかのアルバムと違っているところで。そういう意味ではちょっと自分を許せるようになったのかも。
──今、志帆さんが話してくれたことが凝縮されている曲は「Wildflower」だと思うんですよ。この曲ができたことがアルバムにもたらしているものってすごく大きいと思っていて。お米を作っている実家のお父さんから聞いた話から着想を得て、自分自身と向き合いながら、生命力の根源的な強さや自然の力にも迫っている曲で。
そう、すごく大きかった。だから「Wildflower」をアルバムの1曲目にしたかったくらいなんですよ。この曲ができたときに「あ、これは新しいぞ!」って思いました。人の話を聞いて、それに感動して、それを昇華して曲にするということは今までなかったから。自分が感動したことをオリジナリティとして表現できた感触はすごく新しかったし、自分の心のルーツにも触れられたなって。
スランプの多保くんと電話で話して、お互い喝を入れ合った
──「Secret Garden」なんかもかなり個人的な記憶がひも解かれているけど、そこに普遍性を宿せているのは「Wildflower」があったからこそ、だなって思う。
うれしいです。それはあると思いますね。あと、「Wildflower」では多保くんのメロディも大きくて。
──素晴らしいメロディですよね。
このメロディがあったから、メロディと歌詞の結びつきをはじめ、曲を構成するすべての要素の大切さを再確認することができて。実は、多保くんがスランプになっていた時期があって。
──これまではなかったんですか?
たぶん初めてだと思います。だから私もビックリしたんですけど。今、彼はほかのアーティストさんにも楽曲提供をしていて。今まではSuperflyの曲だけを作っていればよかったんですけど、求められることが多くなった分、彼のソングライターとしての個性の濃度が薄まっていかざるを得なくなってしまう局面があったと思うんですよ。それで、上がってくる曲も多保くんの独特のアクの強さがなくなっているなと思って。これはちょっと問題だなと思って、電話でいろいろ話したんです。そこで「もう1回初心に帰ってがんばろうよ!」ってお互い喝を入れて。「Wildflower」はそのあとに上がってきたんですよね。
──「Wildflower」は収録曲の中でも最初のほうにできた曲ですか?
そうですね。前半のほうですね。「Deep-sea Fish Orchestra」と「Morris」はけっこう前からあった曲で、それ以外で今回の制作で一番早く取りかかった「Only You」ですね。
──志帆さんが作曲も担っている。
はい。これはまだ多保くんがスランプの時期に作った曲で。多保くんがスランプなら、自分で書いた曲をじっくり作らせてもらおうと思って(笑)。蔦谷さんとスタジオでけっこう長い時間をかけてプリプロして、アレンジも一緒に組み立てていって。
──この曲は情熱的なソウルバラードですけど、志帆さんの中から自然に出てきたムードなんですか?
ソウルはもともと好きでずっと歌ってみたかったんですけど、やっぱり難しいんですよね。ノリも難しいし、少し歌い慣れた状態のほうが味も出るので。今ならいい感じに歌えるかもと思ったんです。
──実際にボーカリストとしての成長をじっくり感じることができる仕上がりになっている。陽性のソウルナンバーの「Fly To The Moon」もしかり。
ありがとうございます。いいですね、ソウルは。普段は恥ずかしいと思う言葉も情熱的なメロディに乗せてストレートに表現できる。音楽の力ってこういうことなのかなって感じられるようになりましたね。
──多保さんのスランプ時期を自らの挑戦の時間に置き換えられたのは前向きな判断だったと思う。
ホントに。「Only You」があったからこそ「Fly To The Moon」にもいけたと思います。
CD収録曲
- Rollin' Days
- Beep!!
- Fly To The Moon
- タマシイレボリューション(Extended ver.)
- Eyes On Me
- Deep-sea Fish Orchestra(※Drums:マシータ 参加)
- Secret Garden
- Sunshine Sunshine
- Morris(※Acoustic Guitar:おおはた雄一 参加)
- Wildflower
- Free Planet(※Drums:中村達也 参加)
- 悪夢とロックンロール(※Second Vocal:百々和宏(MO'SOME TONEBENDER) 参加)
- Only You
- Ah
DVD収録内容
- Dancing On The Fire
- Roll Over The Rainbow
- Rollin' Days
- Beep!!
- タマシイレボリューション
- Eyes On Me
- Morris
- Wildflower
- Free Planet
- Ah
Superfly(すーぱーふらい)
2004年に愛媛県の大学サークルで出会った越智志帆(Vo)と多保孝一(G)によって結成。越智のパワフルかつソウルフルな歌声、60年代、70年代の洋楽を思わせるブルージーなサウンドが注目を集め、2007年4月にシングル「ハローハロー」でデビュー。その後、多保がコンポーザーとしての活動に注力すべく表舞台から退き、越智のソロユニットとなる。2008年に発表した1stアルバム「Superfly」、2ndアルバム「Box Emotions」がともにチャートで1位を記録。2009年12月には初の日本武道館ライブを成功に収め、その後も多くのヒット曲を連発。2011年6月に3rdアルバム「Mind Travel」をリリース。
- Superflyオフィシャルサイト
- Superfly | ワーナーミュージック・ジャパン - Warner Music Japan
- 3rd Album「Mind Travel」特設サイト
- USTREAM「Superfly TV」
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2011年6月15日、横浜赤レンガ倉庫で開催されるフリーライブが全国どこでも聴ける!LISMO WAVEでライブ生中継決定!(auスマートフォン対応)
※詳しくは「リスモウェイブ」で検索。