ナタリー PowerPush - sukekiyo
首謀者・京の思惑
DIR EN GREYのボーカリスト京によるソロプロジェクトとして結成されたバンド“sukekiyo”が、1stアルバム「IMMORTALIS」を発表した。
昨年10月にオフィシャルサイトがオープン。この時点ではメンバーも一切明かされず、ファンの間では“正体不明のバンド”として話題を集めていたが、昨年12月29日に行われたSUGIZO(LUNA SEA、X JAPAN)のライブのオープニングアクト、「COUNTDOWN JAPAN 13/14」への出演を経て届けられた本作「IMMORTALIS」によってついにその全体像が明らかになったというわけだ。
ゴシック、ヘヴィロック、オルタナティブなどを自在に融合したサウンドメイク、耽美的なムードと強烈なダイナミズムを共存させたボーカル、性別やモラルを超越した歌詩の世界はまさに唯一無二。また初回限定盤のDISC 2には、SUGIZO、HISASHI(GLAY)、人時(黒夢)、石井秀仁(cali≠gari)、TK(凛として時雨)、acid android、そして再結成を発表したPIERROTのキリトといった豪華なアーティストによるリミックス、コラボレーション楽曲を収録するなど独自のクリエイティビティを発揮している。
今回ナタリーでは京にインタビュー。彼が語るsukekiyoのコンセプト、「IMMORTALIS」の制作プロセスを通して、表現者としての京のスタンスが伝わる貴重な内容となった。
取材・文 / 森朋之
違う人間とやることで求めた“屈折”
──sukekiyoの構想はいつからあったんですか?
4年くらい前から、「何か音にできたらいいな」というのはあったんですよ。匠(G, Piano)がDIR EN GREYのマニピュレーターをやってくれてるから、空いてる時間とかに遊びで曲を作っていたのが始まりですかね。バンドにしようと思ったのは去年なんですけど。
──知名度のあるバンドのフロントマンが別のバンドで活動することって、海外では普通にありますけど、日本ではそんなにないですよね。
そうですね。そういうルールがあるわけではないですけど、日本って「(バンドは)1つしかやっちゃダメ」っていう空気が流れているじゃないですか。でも、DIRで海外に行くと、1人で4つくらいバンドをやってる人がいたりとか。それぞれのバンドを聴いても「何が違うんだろう?」ということもあるんですけど(笑)、本人にはちゃんと意味があるっていう。「そういうふうにやっていいんだな」って思ったし、何かを縛ること自体、面白くないじゃないですか。もともと「表現は自由でいい」と強く思っていたし、去年くらいにさらにストッパーが外れたというか、「やりたいことは全部やろう」と思うようになったんですよね。何年か経って、「やっぱりアレをやっておけばよかった」と後悔するのもイヤなので。
──音楽的にもDIR EN GREYとは違う部分を見せたいという気持ちがあった?
音楽的なことよりも違う人間とやることで違う“屈折”の仕方をすることに興味があったというか。DIRはDIRのメンバーじゃないと、ああいう形にはならないと思うんですよ。DIRは15年くらいやってるんですけど、ここでいろんな人とやることで、自分自身にも新しい発見があるだろうし。そこでどんな音楽ができるか楽しみだったし、試してみたかったんですよね。
──そうすると当然、“誰とやるか”が重要になるわけですが、メンバーはどういう基準で決めたんですか?
匠と曲を作ってるときは、「時代に捉われず、しかもあまり誰もやっていないことをやろう」という大ざっぱなイメージでやっていて。楽器の構成も「ギター、ベース、ドラムとかでなくてもいい」っていう。そういう意味では、参加メンバーも柔軟な人間がよかったんですよね。固定観念みたいなものがなくて、柔軟に面白がって作品を作れる人がいいな、と。意外と周りにそういう人が多かったので、すぐに決まりましたけどね。
──枠や境界を超えること自体がコンセプトというか。
僕自身が基本、「まずはやってみよう」という感じで取りかかるタイプなんです。「あらかじめ考えて、道筋を作って、そこに行く」とかではなくて。参加してくれたメンバーはその感覚を理解してくれたし──才能で選んだので、顔とか知らない人もいたんですけど──とにかく自由にやってもらって。いいところを引き出して、そこに自分の感覚を足していくというやり方ですよね。
──セッションですね。
うん、まさにそうですね。僕がやったのはトータルバランスを取るくらいなんですよ。アルバムとしてのまとまりもある程度は必要だから……でも、そこもあまり言わなかったかな。技術がない人たちだったらグチャグチャになって崩壊すると思うけど、全員、技術も才能もある人ばかりなので。最初にデモを4、5曲渡して、そこに好きな音を入れてもらったんですよ。みんなが加えた音自体が自分の想像を超えていたし、その時点で「なるほど、これがsukekiyoか」と思えたので。
──sukekiyoという名前は決めてたんですか?
(苦笑)それ、絶対に聞かれますね。
──気になりますからね(笑)。
もちろん「犬神家の一族」(※1972年に発表された横溝正史による推理小説。映画やドラマ化もされている)の佐清からきてるんですけど、まず何をしでかすかわからないようなバンド名にしたかったんですよね。sukekiyoという名前を聞けば、すぐにあの白い覆面を思い出すだろうし、一発で覚えられるじゃないですか。あと、ジャンルもよくわからないと思うんですよ。激しいのか、おとなしいのか、和っぽいのか、名前だけでは想像できないというか。
──限定されないことが大事だった、と。
バンドの名前としてカッコよくないところも好きなんですよね。絶対にツッこまれるじゃないですか、「sukekiyoって!」とか(笑)。「もっとほかにあったんじゃないの?」とかね。
──こじつけかもしれないですけど、「犬神家の一族」の妖しい雰囲気、得体の知れない何かが起こっているという予感のようなものは、sukekiyoの世界観と通じてるかも。そういえば京さんは映画監督のアレハンドロ・ホドロフスキーも好きなんですよね?
大好きですね。ホドロフスキーの映画は、すごすぎて観たくなくなるんですけど。
──影響を受け過ぎてしまうから?
影響とかよりも、自分の存在をちっぽけに感じてしまうんですよ。あまりにもすごすぎて「(自分は)全然あかんな」って。発想力もパワーもすごいじゃないですか。カメラワークとか技術の部分がどうでもよくなってしまうほど、ルールに関係なくブチ込まれていて……。悔しいんですよね、ホントに。
- 1stアルバム「IMMORTALIS」 / 2014年4月30日発売 / FIREWALL DIV.
- 初回生産限定盤 [CD2枚組] 4104円 / SFCD-0133~4
- 通常盤 [CD] 3456円 / SFCD-0135
- DISC 1収録曲
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- elisabeth addict
- destrudo
- latour
- nine melted fiction
- zephyr
- hidden one
- aftermath
- 烏有の空
- the daemon's cutlery
- scars like velvet
- mama
- vandal
- hemimetabolism
- 鵠
- 斑人間
- in all weathers
- DISC 2収録曲(初回生産限定盤のみ)
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- aftermath Collaboration with キリト (Angelo)
- 鵠 Remixed by PABLO (P.T.P)
- zephyr Remixed by TK (凛として時雨)
- in all weathers Remixed by Devilslug
- nine melted fiction Remixed by 石井 秀仁 (cali≠gari, GOATBED)
- hemimetabolism Remixed by SUGIZO (LUNA SEA, X JAPAN)
- scars like velvet Remixed by 室姫 深
- the daemon's cutlery Remixed by 人時
- hidden one Remixed by HISASHI (GLAY)
- mama Remixed by 橘 尭葉 / 妖精帝國
- aftermath Remixed by acid android
sukekiyo(スケキヨ)
DIR EN GREYのボーカリスト・京のソロプロジェクト。2013年10月より始動した。2013年12月29日に行われたSUGIZO(LUNA SEA、X JAPAN)のツアー「SUGIZO TOUR 2013 THRIVE TO REALIZE」のSHIBUYA-AX公演で初ライブを行い、年末の「COUNTDOWN JAPAN 13/14」に出演する。2014年元日にメンバーを含むプロジェクトの全貌を明らかにし、初音源「aftermath」のビデオクリップを配信。4月に1stアルバム「IMMORTALIS」を発表した。