音楽ナタリー Power Push - 中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2015
佐藤タイジ×Char 中津川に向けて大放談
佐藤タイジ(シアターブルック)主催の野外ロックフェス「中津川 THE SOLAR BUDOKAN」が、今年も岐阜・中津川公園内特設ステージで開催される。
“会場運営に関わるすべての電力を太陽光発電でまかなう、クリーンでピースなフェス”をコンセプトに2012年に始動した「THE SOLAR BUDOKAN」。豊かな自然があふれる中津川での開催は3回目となり、今年もさまざまな世代とジャンルのアーティストが一堂に会し、9月26日と27日の2日間にわたって競演を繰り広げる。
今回、音楽ナタリーではフェス発起人である佐藤タイジと、彼の先輩であり過去2回にわたって同フェスに出演しているCharの対談を企画。2人の出会いから、「中津川 THE SOLAR BUDOKAN」の思い出話、それぞれの新作についてなど、さまざまな話題について奔放に語ってもらった。
取材・文 / 秦野邦彦 撮影 / 西槙太一
「心込めて弾け!」
──お2人の出会いのきっかけは、Charさんのラジオにタイジさんがゲストで出演されたことだそうですね。
佐藤タイジ 忘れもしない、J-WAVEですよ。
Char 「Mom Dad Jam!」(1999年~2000年に放送)ね。
佐藤 あれは超緊張した。汗だくですよ。
Char セッションがあったからね、あの番組。
佐藤 そのあと飲みに連れてってもらって。
Char タイジの回だけは昔あったソニーの信濃町スタジオでやったんだよな。そしたらちょうどクリントン大統領が来日してて。信濃町から裏道通って迎賓館の横に出たら、警護に車止められてね。タイジに「お前黙ってろよ」って。見た目が見た目だから(笑)。
佐藤 そのあとCS放送の「Char meets ???? ~TALKING GUITARS~」(2003年より放送)にも呼んでもらって。あんときもセッションの途中で「これはスライドとかいってみようかな」ってピューとかやってたら「お前、心込めて弾けや!」って本番中にバーンと言われて。
Char ははは!(笑)
佐藤 でも、それはすごい残ってんの。先輩に「心込めてギター弾け!」って言われたことは1回もないから。「あかん、今心込もってなかったか」と思って。それがいまだにずっと残ってるんだよね。でも、結局ギターとかって心込める以外ないやん? いくら練習したところで心こもってなかったらダメじゃん。これはね、日本中のギタリストたちに絶対伝えるべき標語。「心込めて弾け」。
Char 「廊下は走るな」みたいな(笑)。「心込めて弾け」って言ったのはね、いろんな人とセッションしてきた中でこの子はできる子だと思ったわけ。いいギター弾くし、いい歌歌うし、いい曲作るなと思って。
佐藤 ありがとうございます!
Char 本人がいないから言うけど。
佐藤 横にいるけどね(笑)。
Char 俺も当時のタイジの歳のときはよく言えば感性で弾いてただろうし、別の言葉で言えばフレーズにそこまで意味を持たせてなかったかもしれない。でも、先輩にそんなこと俺も言われたことないし。やってくうちに一番大事なのはそこなんだなってわかってくるわけよ。もちろんテクニックも必要だけどね。歌と違って意味がないから。それができる人とできない人がいるんだよ。ヘタだけどいいもん持ってるやつもこれまたいるんだけど、タイジはテクニックも心も両方持ってるから、これは若いうちにと思って。番組の最中に言うのもなんですけど。失礼しました。
佐藤 とんでもない。俺、言われてすげえよかったなって思ってるから。自慢のセリフですよ。「俺、『Charに(ギターに)心込めろ』って言われたんだ!」って。
Char あと、BAHO(石田長生とのアコースティックデュオ)のライブでタイジに真ん中に入ってもらっていじめたことあるよな。
佐藤 ありましたねえ(笑)。石やんとCharさんの真ん中に置かれて「お前ソロ弾け」って言われて「ええーっ!」みたいな。
Char 言ってるうちに終わっちゃったね。BAHOはアコギだし、そこに不自由さがあるから。ましてや俺と石田だから、個性的な人じゃないと入って来れないし。タイジがBAHOに入って来た最年少だったかもしんない。それ以外のセッションって、そんなにねえよな?
佐藤 そうっすね。
佐藤タイジはJESSEにとって“親戚の叔父さん”
佐藤 Charさんとの関わりでいったら、RIZEっていう存在もデカい。
Char どっちかっていうとJESSEたちのほうがイベントで会ってるもんな。
佐藤 JESSEたちがデビューしたとき何かのフェスで一緒になって、シアターブルックの楽屋に挨拶に来たわけ。「よろしくお願いしまーす!」って。それで「おおー、お前は!」みたいになって。あれはうれしいよね。ちゃんと“後輩”してくれるし。たぶん竹中家&金子家は世界でも絶対特殊な家族だよね。ミック・ジャガー家もキース・リチャーズ家もこんなにはなってないじゃん? しかも息子のほうもクオリティ高いし。
Char ちっちゃいときはミュージシャンになるどころか、けっこう反面教師にしてたみたいで。
佐藤 そうなんだ。
Char ギターなんか弾こうとしなかったし。「なんでほかのお父さんみたいにちゃんとした時間に起きて仕事行かないんだ」って。
佐藤 なるほどね(笑)。
Char 「なんでいつもシャツを外に出してるんだ」とか。だからJESSE、シャツはズボンに入れちゃう子だった。持ちたいカバンはアタッシュケースで、逆にサラリーマンに憧れたみたい。
佐藤 はあーっ、面白いね。
──JESSEと言えば「APPLE JUICE」(1982年発表のソロアルバム「MOON CHILD」収録)のモデルですよね。
Char そうそう。あれもメタファーでどうにでもとれる歌だけど、実際はJESSEが「APPLE JUICE、APPLE JUICE!」って欲しがっていたことを曲にしたという。
佐藤 かわいい(笑)。もう二世代にわたって仲良くさせていただいて。
Char そういう意味じゃタイジの年齢が中間にあって。親戚の叔父さんみたいな存在。
佐藤 完全にそう。
いいやつが出てきたな
Char タイジが出てきたとき噂になったんだよね。俺のバンドは1960~70年代前半の音楽やライフスタイルという一番好きなものをずっとやってたんだけど、世の中どんどん、長髪が短髪になり、レコードがCDになり、ジーンズがDCブランドになって、ギターがシンセサイザーに変わっていく中で、評論家に「なぜCharは時代に逆行するんだ」とまで言われた時代があってね。別に逆行してるつもりはなかったんだけど。そんな時期が続いたときにタイジが出てきて。同じ匂いというかさ。歳は違うけどルーツ的なものが同じだなと思った。だからこれはもう……潰すしかないと。
佐藤 ははははは(笑)。ひどい!
Char あるいは育むか、人間性で決めようと思って。結局育むことにしたんだけど。
佐藤 よかったっす。
Char ギターと歌と両立させる人って、あんまりいないんだよね。どうしてもギターを弾きながら歌うと日本の伝統的なフォークになったりして。ブルースが好きだっつったって、B.B.キングとフレディ・キングの両方いけるような人は先輩の中でもそんなにいなかったし。そういう意味でも、いいやつが出てきたなと思った。
佐藤 うれしいなあ。
Char 絶対こいつは売れねえなと思ったし(笑)。でも、感性で生きてそうだから大丈夫かなって。
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- 中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2015
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2015年9月26日(土)、27日(日)
岐阜県 中津川公園内特設ステージ
OPEN 10:00 / START 11:00 -
<2015年9月26日(土)出演者>
- REVOLUTION STAGE渋さ知らズオーケストラ / EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX / 斉藤和義 / ACIDMAN / 藤井フミヤ with シアターブルック / Char
- REDEMPTION STAGE東京カランコロン / Nothing's Carved In Stone / OKAMOTO'S / NAMBA69 / ストレイテナー
- RESPECT STAGE子供ばんど / 黒木渚 / the band apart / 勝手にしやがれ / MY LIFE IS MY MESSAGE(山口洋[HEATWAVE]、三宅伸治、Leyona、斉藤和義)/ 麗蘭
- Village Of illusionegoistic 4 leaves / オレスカバンド / The SunPaulo / THE BLACK COMET CLUB BAND / GAKU-MC / 沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE)/ DJ吉沢dynamite.jp / Buppa.9+SEIYA / DJ PAIPAI / yasuhiroyonishi / SWEET RAVE (DANCE)
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<2015年9月27日(日)出演者>
- REVOLUTION STAGERIZE / BRAHMAN / 吉川晃司×中津川JAM / The Birthday / Dragon Ash / シアターブルック
- REDEMPTION STAGEROTTENGRAFFTY / SCOOBIE DO / MONOEYES / GRAPEVINE / TRICERATOPS
- RESPECT STAGEbird / 憂歌兄弟 / LIVE FOR NIPPON(高野哲、堂珍嘉邦、Rei) / the LOW-ATUS / 泉谷しげる
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チケット インフォメーション
- 通し入場券 13900円
- 1日入場券 8900円
- プレミアムキャンプ付き 通し入場券 21,460円(※完売)
- キャンプ付き 通し入場券(場内駐車なし)17,140円(※完売)
- 駐車場付き 通し入場券 プレミアムキャンプ券 18,220円
- 駐車場付き 1日入場券 11,600円
佐藤タイジ(サトウタイジ)
シアターブルックのフロントマンにして、作曲家、プロデューサー、俳優など数多くの肩書きを持つアーティスト。1967年に徳島県で生まれ、14歳のときにギターを購入したことをきっかけに音楽の世界にのめり込む。1986年にシアターブルックを結成し、1988年にアナログ盤「Theatre Brook」をリリース。以降、日本随一のファンクバンドの顔として活躍する一方、MCUや清春、tobaccojuiceなどさまざまなアーティストのプロデュースを手がけその手腕を発揮している。2008年5月にはキャリア初となるソロアルバム「The Divorced Rockstar」をリリースした。東日本大震災後、太陽光発電による電力で運営するライブイベント「THE SOLAR BUDOKAN」を企画。2012年12月に東京・日本武道館、2013年9月と2014年9月に岐阜・中津川市で開催して大成功を収めた。
Char(チャー)
1955年東京生まれ。日本を代表するギタリストの1人として、世界的にも高い評価を獲得している。8歳からギターを始め、中学生時代からスタジオミュージシャンとして音楽活動を開始。1973年に金子マリらとともにSMOKY MEDICINEを結成する。バンド解散後、1976年にシングル「NAVY BLUE」でソロデビューを果たす。代表曲は「気絶するほど悩ましい」「smoky」「闘牛士」など。1978年からはジョニー吉長、ルイズ・ルイス加部とJOHNNY,LOUIS & CHAR(のちのPINK CLOUD)を結成し、ソロと並行して精力的な活動を展開。1989年には石田長生とのアコースティックデュオBAHOを結成する。2009年にはWeb主体のレーベル・ZICCAを設立。還暦を迎えた2015年5月に、泉谷しげる、布袋寅泰、奥田民生、松任谷由実、福山雅治ら干支が異なる12人のアーティストたちが参加したアルバム「ROCK十」を発表。同年6月には東京・日本武道館にて13組のゲストを招いてアルバム発売記念公演を開催した。