ナタリー PowerPush - ソウル・フラワー・ユニオン

ラテンアプローチで新機軸 「キャンプ・パンゲア」堂々完成

1993年に中川敬を中心とするニューエスト・モデル、伊丹英子を中心とするメスカリン・ドライヴという2つのロックバンドの同時解散を経て、そのグループのメンバーにより結成されたソウル・フラワー・ユニオンは、チンドン、アイルランド音楽などの要素を融合したミクスチャールーツミュージックグループとして高い評価を獲得してきた。

そのプロセスには、1995年の阪神・淡路大震災の被災地で、民謡や流行り唄を演奏するために結成されたアコースティックユニット、ソウル・フラワー・モノノケ・サミット、そして少人数でこまめに各地をまわるソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン名義による2005年から始まったツアーなど、異なる編成による多彩な活動がある。

こうした柔軟な姿勢は、新しい米軍基地の建設が予定されている沖縄の辺野古で今年10月末に開催されたイベント「Peace Music Festa!」でも同様。イベントの初日にはソウル・フラワー・モノノケ・サミット、2日目にはソウル・フラワー・ユニオンで出演するといった、独特のライブ活動でも発揮されている。

そんな彼らが2年ぶりに発表するオリジナルアルバム「キャンプ・パンゲア」は、元SHADY DOLLSの高木克が新メンバーとして加入後の第1弾作品。サウンド面では赤木りえ、ヤヒロトモヒロなど、初期の作品に参加していたアーティストをサポートに迎えていることもあって、原点回帰的な意味合いを感じさせると同時に、ラテン寄りのアプローチで新生面を見せている。結成以来のバンドの歴史がグルッと一巡して、新たなサイクルに突入したことを如実に示す充実した作品だ。中川敬(Vo, G)に話を訊いた。

取材・文/志田歩

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今回のメンバーチェンジはバンドにとって大きかった

──ソウル・フラワーにとってこの2年間で最大の変化というと、高木克の加入でしょう。

そうやね。克ちゃんの加入がほぼ決定して、ライブより先にまずレコーディングから始まった。「パンゲア」「千の名前を持つ女」「スモッグの底」「ルーシーの子どもたち」あたりは、「カンテ・ディアスポラ」(2008年発表のアルバム)をリリースしたすぐ後のセッション。このレコーディングから克ちゃんが入ってきてるから、まさにこの「キャンプ・パンゲア」は、新生ソウル・フラワー・ユニオンの1stアルバムということやねんね、今気付いた(笑)。最初に録ったのは「パンゲア」。ライブもまだ一緒にやってない頃。話のノリが合っただけで、どんなフレーズを弾くかも知らずに加入決定してるから、まずは自由にスライドギターを弾いてもらおうと。とはいっても、奴はわかりやすかった。ロックンロールからブルース、オールドタイミー、カントリー、いわゆるTHE ROLLING STONESやFACES的な世界。「好きなアーティストは?」と問うと、あいつは「ロニー・レイン」って即座に答えたからね。15年ぶりくらいに一緒に飲んで、そんな話にもなったし。

──あ? 実は昔飲んだことがあったんだ!

一時、克ちゃんはソウル・フラワー・ユニオンの前身のニューエスト・モデルのライブを毎回観にきてたんよ。メジャーで活動してる、いわゆる「同業者」なのに毎回来るなんて、こっちも印象に残るやん? それで1~2回、打ち上げに誘ったりしたらしい、俺は覚えてなかったけど(笑)。仙台のフェスで待ち時間に会場で一緒にサッカーもしたらしい、俺は覚えてなかったけど(笑)。震災以降、長いこと会うてなかったんやけど、3~4年前にリクオがなにげなくポロッと「中川君、元SHADY DOLLSの高木克って知らん? あいつ中川君と音楽性、合うと思うで。いつか一緒にやったら?」って、名前が挙がってたんよね。だから、河村(博司)が抜けるって決定したときに、最初に名前が出てきたのが高木克やった。で、俺らのライブと打ち上げに来てもらって、「これからギタリストを探していくんやけど、1回セッションしてみない?」って話をした。で、2カ月後にはもうレコーディングをしてるっていう(笑)。

──彼は「再生の鐘が鳴る」で、アイルランドの音楽でよく使われているブズーキを弾いているけど、ブズーキを弾くようになったのは加入してからだよね。

自分にとって新しい楽器やから相当触ったと思うよ。この前「ブズーキの面白さがどんどんわかってきてるんだよ」って言ってた。

──アイルランドの音楽とかも「こういうのを聴け」って?

それはもちろん。(伊藤)孝喜が入ったときも、ジゲンが入ったときも、“聴くべきアルバム100選”みたいなのをメールで送ってるし(笑)。そうしといたほうが後々楽なんよね。ただ克ちゃんの場合は、ロックとソウルのビンテージものに関しては、ほとんど通過してた。かなりなビニールフェチ。俺らが20代の頃にやったことをいまだにやってる(笑)。ツアー先ではまず現地の中古レコード屋に行って何か買ってくる。「これ、ウィルソン・ピケットの2ndアルバムなんだけど、ジャケットがアメリカ盤とイギリス盤で違って……云々かんぬん」とか、楽屋でひとりごとのようにしゃべってる(笑)。

──彼が入って明らかにライブのテンションも良い意味で変わったよね。張り切った新入社員が入ってきて、職場全体が活気づくみたいな。他のメンバーもその活気に煽られてるような気配で。

それはあると思うよ。今回のメンバーチェンジは大きかったと思うね。

自分の歌詞とラテンのリズムが合うことに気づいた

──アルバム全体だと赤木りえさんのフルートもすごく印象的。

赤木さんとは「ワタツミ・ヤマツミ」(1994年発表のアルバム)以来、16年ぶり。95年の震災以降、ミュージシャン人脈が変わっていったところがあって、神戸っていう場所での出会いとか、あの空気を共有したミュージシャンと一緒にやるっていうのが続いててんけど、前作「カンテ・ディアスポラ」で久しぶりに金子飛鳥さんと一緒にやってみて、やっぱりセンスが合うなぁって感じて。で、今回ふと、赤木さんの名前が思い浮かんで。どないしてるかな?って、そんなノリ。「ワタツミ・ヤマツミ」の頃、ラテンミュージック寄りの「陽炎のくに、鉛のうた」って曲で、フリーに吹きまくってる彼女のイメージがあって、今回は赤木さんとやってみたいな、みたいな。たぶん好みがどっかで近いんやと思うけど、俺は赤木さんのプレイ自体が好きで。フレーズの指定なんかもほとんどいらないし。どこかルーツが近いんかな? ジャズやクラシックじゃなくて、ブリティッシュトラッドやジャズロックから始まってる感じ。ただ今回、赤木さんは熱狂的な巨人ファンやということが発覚したので、猛虎狂の俺としてはちょっと付き合い方を考えなあかん(笑)。うそうそ(笑)。

──パーカッションのヤヒロトモヒロさんも、ある意味で懐かしい顔でしょ。

ヤヒロ君とはニューエスト・モデルの頃に、山中湖の合宿スタジオなんかで、ずっと寝食共にしてやってた。あの頃は俺らも20代前半で、そのときの3つ上4つ上っていうと、ちょっと先輩っていうか。「JAGATARAのパーカッションのヤヒロさん!」みたいな感じもあった中での仲間状態。ニューエスト・モデルのドラムのベンが、当時の彼から「お前は皮を叩くんやから、動物を殺して皮を作る現場をちゃんと見に行け」って言われたり。ま、いわば、良き先輩。そういうこともふと思い出して、メンバーにもいい刺激になるかなと思って、ひさびさにヤヒロ君に参加してもらった。

──でも懐かしいだけじゃなくて、特にラテン音楽寄りの部分では、今までにない取り組みを見せているよね。

もともと俺はラテンミュージックが好きやねんけど、ライブでブラスを入れて、パーカッショニストも2~3人入れてみたいなのは、このライブの本数からすると現実的に不可能やし。だから俺にとってのラテンミュージックは聴くもの、踊るものというか、ソウル・フラワー・ユニオンとは切り離して考える音楽ジャンルではあってんね。ただ、たまたま「カンテ・ディアスポラ」で自分の中にあるものを出し尽くした後の燃えカス状態だった頃に、昔のブーガルーやサルサの名盤とかを聴きまくってた。別に理由もなく単純に聴きまくってて。あと、自分の書く歌詞の世界観と、ラテンやカリビアン、アフロやレゲエとか、そういうリズムが合いやすいっていうことを、なんとなく感じながらやってきた数年間もあって。メロディができ上がって歌詞を書き上げていく中で、歌の持ってる世界と、よく聴いてたラテンミュージックがうまいことミックスされたっていうか。自然な流れで、自分らの持つひとつの方向性として出てきたんよね。

──歌詞とリズムの相性というのは?

最近みんな、天下国家を論じるのが好きやん(笑)。でも俺は、人間のことを歌いたい、ホモサピエンスのことを歌いたいって気持ちが強くてね。普遍性の高いダンスミュージック。自分の外部から、ニュースであったり、具体的な事件であったり、ネガティブな情報が世界中から日々やってくる。そういう負の要素を自分の内面を通して前に出すときに、プラスに転化させたいっていうのが常にある。その要素がより強くなってきたのかなって、音楽評論家・中川敬は分析してるんやけどね(笑)。負を正に転化するラテンミュージックの力。それと、単純に俺の書くメロディや歌詞との相性やね。

ニューアルバム「キャンプ・パンゲア」 / 2010年12月15日発売 / 3150円(税込) / BM tunes / XBCD-1034

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CD収録曲
  1. パンサラッサ
  2. ホップ・ステップ・肉離れ
  3. ダンスは機会均等
  4. 死ぬまで生きろ ! [2010 ALBUM MIX]
  5. 死んだあのコ
  6. 再生の鐘が鳴る
  7. アクア・ヴィテ [2010 ALBUM MIX]
  8. 道々の者
  9. 太陽がいっぱい
  10. パンゲア
  11. 千の名前を持つ女
  12. スモッグの底
  13. ルーシーの子どもたち [2010 ALBUM MIX]
  14. 続・死ぬまで生きろ!
  15. 移動遊園地の夜
パンゲア [Trailer]
ニューアルバム「キャンプ・パンゲア」発売記念ツアー
  • 2010年12月4日(土)
    愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
    OPEN 18:00 / START 19:00
    問い合わせ:JAILHOUSE
  • 2010年12月5日(日)
    大阪府 BIGCAT
    OPEN 18:00 / START 19:00
    問い合わせ:GREENS
  • 2010年12月7日(火)
    福岡県 福岡 DRUM Be-1
    OPEN 18:00 / START 19:00
    問い合わせ:BEA
  • 2010年12月11日(土)
    東京都 赤坂BLITZ
    OPEN 18:00 / START 19:00
    問い合わせ:SOGO TOKYO
ニューアルバム「キャンプ・パンゲア」発売記念地方巡業 ~アコースティック編~

出演:ソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン(中川敬・リクオ・高木克)

  • 2011年1月12日(水)
    滋賀県 酒遊館
  • 2011年1月14日(金)
    愛媛県 松山ブエナビスタ
  • 2011年1月16日(日)
    兵庫県 加古川ギャラリー&サロン日本堂
  • 2011年1月19日(水)
    神奈川県 藤沢虎丸座
  • 2011年1月20日(木)
    東京都 吉祥寺弁天湯
ソウル・フラワー・ユニオン

1980年代から活躍する中川敬(Vo,G)率いるニューエスト・モデルと、伊丹英子(G,Vo)率いるメスカリン・ドライヴが1993年に同時解散。2つのバンドのメンバーによって結成されたミクスチャーロックバンド。トラッド、ソウル、ジャズ、パンク、レゲエ、ラテン、民謡、チンドン、ロックンロールなど、さまざまなジャンルを取り込んだ雑食性の強いサウンドが特徴。1995年、阪神・淡路大震災の被災地でソウル・フラワー・モノノケ・サミット名義での慰問ライブを実施し、以降ソウル・フラワー・ユニオンとソウル・フラワー・モノノケ・サミットは並行して活動中。現在のメンバーは中川敬(Vo,G)、奥野真哉(Key)、伊藤孝喜(Dr)、ジゲン(B)、高木克(G)、ミホ(Cho)、ヒデ坊(Cho,他)。