音楽ナタリー Power Push - Schroeder-Headz × ADAM at

2人のピアノマンが語る現在のインストシーン

Schroeder-Headzが3rdアルバム「特異点」を、ADAM atが2ndアルバム「スウィートホーム」を、ともにビクターエンタテインメントから同日にリリースしたことを受けて、音楽ナタリーでは渡辺シュンスケとタマスケアットという各フロントマンの対談を企画。ピアノを軸としたインストバンドが盛り上がりを見せる中にあって、固定メンバーではなくフロントマンを中心とした不定形プロジェクトであることが共通点の彼らに、それぞれのバンドの成り立ちから、現在のインストシーン、新作についてまで、幅広く語り合ってもらった。

取材・文 / 金子厚武 撮影 / 後藤壮太郎

 
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オープニングアクトとして弾き始めたのがきっかけ

──ADAM atのメジャーデビューにはSchroeder-Headzが深く関わっているそうですね。

タマスケアット そうなんですよ。ADAM atが地元の浜松でのワンマンライブを控えていたときに、名古屋の池下CLUB UPSETでシュンスケさんがライブをやられたことがあったんです。僕らはまだインディーズだったのでワンマンのチケットもそんなに売れないだろうし、Schroeder-Headzのお客さんに媚を売ろうと思って、自分で焼いたCDをその会場の外で配ったんですよね(笑)。そのときにビクターの方がCDをもらってくれて、お名刺をいただいたので「その後いかがでしょうか?」ってストーカーのようにずっとメールをしてたら、ビクターから出させていただけることになったんです。

──すごい話(笑)。そんな両者の新作が同じ日にリリースされるというのもびっくりですね。

タマスケ いやもう、目を疑いましたよ。シュンスケさんはとにかくいろいろお仕事をされてるじゃないですか? 今日は「僕らにも仕事を回してください」ってことで……。(渡辺に封筒を手渡す)

タマスケアットから突然渡された封筒の中身を確認する渡辺シュンスケ(左)。

渡辺シュンスケ これ、なんですか?

タマスケ 署名的なものですね。

渡辺 「鍵盤一同より」って書いてある(笑)。

タマスケ この中にはそんなに忙しくない鍵盤奏者の名前が書いてございまして、みんな「私にもお仕事ください」って思ってるだろうということで、僕が代筆しておきました。

──fox capture planの岸本さん、jizueの片木さん、toconomaの西川さん……って、そうそうたる顔ぶれじゃないですか(笑)。

封筒の中身を確認する渡辺シュンスケ。

渡辺 皆さんと仲いいんですか?

タマスケ いや、そんなに(笑)。

──勝手に代筆したということですか?

タマスケ そうです。みんなそう思ってるんじゃないかなって。

渡辺 怖いわー(笑)。タマスケさんはもともとバンド出身なんですか?

タマスケ 僕はもともとイベンターだったんです。浜松で個人でイベントを企画してたんですけど、オープニングアクトがいない日に、いないなら自分でやっちゃおうってピアノを弾き始めたのがADAM atを始めたきっかけでした。

渡辺 そうなんですね。けっこうハードなバンドをやってたんだろうなって印象がありました。

タマスケ メタルが好きだったんですよ。

渡辺 そうなんですか。鍵盤はずっとやられてたんですか?

タマスケ 5歳からやってるんですけど、ギュッとしたら2週間くらいしかやってないかもしれない(笑)。ピアノ、あんまり好きじゃなかったんです。

ADAM atはエンタテインメントとして素晴らしい

──タマスケさんは以前はピアノが好きじゃなかったとのことですが、なぜADAM atのようなピアノを軸としたインストバンドをやろうと思ったのでしょうか?

タマスケアット

タマスケ きっかけはソイル(SOIL & "PIMP" SESSIONS)ですね。父がジャズ好きなんですけど、父に聴くように押し付けられていたらジャズが嫌いになっちゃって、反抗期のときはメタルに行ったんです。でもそこからしばらく経ってソイルに出会って、すごくカッコいいと思ったんですよね。で、オープニングアクトで何をやろうかと考えたときに、ソイルみたいなインストをやってみようと思ったんです。

──ADAM at以前はイベンターをやりながら、別で音楽活動をされていたんですか?

タマスケ いや、基本的には趣味でピアノを弾いてるだけで、たまに企画イベントのオープニングアクトとして誰かの曲を弾き語りするくらいでした。もともとコンサート制作の会社にいて、ずっとサラリーマンだったんです。

──じゃあ、本格的な音楽活動は初めて?

タマスケ ホントに初めてです。なので、ビクターの話があったときも、ずっと大がかりなドッキリだと思ってました。ビクターにはソイルもいるし、スペアザ(SPECIAL OTHERS)もいるし、もちろんシュンスケさんもいるし。

──お2人の共通点は、ソイルやスペアザとは違って固定メンバーがいるわけではなく、ソロプロジェクトであるということだと思います。

タマスケ 僕は誰とでも演奏できる感じがいいと思ったので、バンドじゃなくてソロプロジェクトにしました。あと僕はピアノしかできないので、いろんな人とセッションをしていく中で「こういうアプローチを持ってる人とやりたいな」って思ったときに、ソロだったらその人と一緒にやればいいだけだなって。固定メンバーじゃなくてよかったと思うのはそういうところですね。

渡辺シュンスケ

渡辺 僕はまずトリオでやりたいというのがあって。最初はピアノが僕で、リズム隊は曲ごとに違うアルバムを作ろうと思ってたんですよ。いろんな人とセッションをしてみるとジャンルもバラバラだし、いろんなよさがあるから、メンバーを流動的にしておきたかったんです。なおかつ、ピアノをフィーチャーして前に立たせるトリオにするって考えると、ソロ名義でやるのが一番自分の思い描くものを作りやすいかなと。でもADAM atはソロプロジェクトなのにすごいバンドっぽいですよね。それに演奏もカッコいいし、おしゃべりも上手で、エンタテインメントとして素晴らしい。これは「またライブ観に行きたい」ってみんな思うよなって。

──ライブ感っていうのは、ADAM atの重要な要素だと言えますか?

タマスケ 特に「ライブ感を出そう」と思ってやってるわけではないんですけど、グルーヴって固定メンバーのバンドじゃないとなかなか出にくいと思っていて。だから四つ打ちのリズムをキープして、「お客さんの体を揺らせたらこっちの勝ち」みたいに思ってるところがあるんですよね。それでライブ感が出てるんだったらうれしいです。最終的にお客さんが笑って帰ってくれたらいいのかなって思っています。

──シュンスケさんはライブに対してどんな思いで臨んでいますか?

渡辺 もちろん僕もお客さんを楽しませたいとは思ってるんですけど、あんまりしゃべるのは得意じゃないですね(笑)。やっぱり、ライブはお客さんと一緒に作っていくものだと思うから、こっちもなんらかの影響を受けて、それによってどんな演奏になるかはそのときになってみないとわからない。なので、常に探ってるようなところはあるかもしれないです。自分のイメージを届けて、「こういう反応があった。じゃあ、こうしてみよう」とか、その繰り返し。まあ、笑わせるっていうか、笑われてるときはたまにあるけど(笑)。

タマスケ 僕はそっちのほうが多いです。でも、苦笑いも笑顔のうちだと思ってます(笑)。

ADAM at ニューアルバム「スウィートホーム」 / 2016年1月20日発売 / 2376円 / Victor Entertainment / VICL-64513
ADAM at ニューアルバム「スウィートホーム」
収録曲
  1. スウィートホーム
  2. 六三四
  3. Karakusa Trick
  4. 残響6/8センチメンタル
  5. Cuba Libre
  6. はなちるさと
  7. 半丁猫屋敷
  8. Re:Ppin
  9. More Better Words
  10. ヤマネコア
Schroeder-Headz(シュローダーヘッズ)
Schroeder-Headz

数多くのアーティストのサポートでも活躍するキーボーディスト・渡辺シュンスケによるソロプロジェクト。2010年にアルバム「NEWDAYS」をリリースしたことをきっかけに活動を開始した。2013年12月にはリミックスプロジェクトの一環としてミニアルバム「Sleepin' Bird」を発表し、2014年2月にメジャー移籍第1弾アルバム「Synesthesia」をリリース。2016年1月に3枚目のアルバム「特異点」を発表する。また、土岐麻子とのユニット「土岐麻子 meets Schroeder-Headz」としても精力的にさまざまなイベントに出演している。

ADAM at(アダムアット)
ADAM at

タマスケアットを中心とした、固定メンバーのいないピアノセッションバンド。疾走感あふれるピアノサウンドとダンサブルなリズムを持ったインストゥルメンタルを得意とし、2015年1月に発表した1stフルアルバム「CLOCK TOWER」はiTunes Storeジャズ部門のダウンロードランキングおよびタワーレコードのジャズチャートで1位を獲得した。2016年1月に2ndフルアルバム「スウィートホーム」を発表した。