音楽ナタリー Power Push - Schroeder-Headz × ADAM at
2人のピアノマンが語る現在のインストシーン
「ADAM atっぽいよね」って言われたい
──ADAM atの「スウィートホーム」はどのようなテーマで作られたのでしょうか?
タマスケ まだADAM atという名前を知らない人が多いので、今回もデビューアルバム的な感じだと思ってます。なので、とにかく「ADAM atっぽさ」っていうのを出したいと思いました。そういう意味ではSchroeder-Headzとは真逆というか、前作からガラリと変えたっていう部分は特になくて。「これADAM atっぽいよな」って言われるようになるまで、もう何枚かADAM atらしさを追求し続けるかもしれないです。
──楽曲の振り幅は非常に広いと思いますが、タマスケさんが思う「ADAM atっぽさ」とは?
タマスケ バスドラが四つ打ちで「ツッカツッカ」っていうスネアが裏に来るリズムで、そこにピアノのメロディが乗るってことですね。
──なるほど。
タマスケ 僕、スペアザが素晴らしいなって思うことの1つに「スペアザっぽい」ところがあると思ってるんですよ。ああいうギターとエレピの音が入ったインストバンドは、スペアザの後にも出てきましたけど、絶対「スペアザっぽい」って言われるじゃないですか。できれば僕もそこに行きたいんですよ。「ADAM atっぽいよね」って言われたい。
──アルバムの収録曲で言うと、NHK野球中継のテーマ曲として使われた「六三四」(ムサシ)は、現段階での「ADAM atっぽさ」を代表する曲だと言えるんじゃないかと思います。
タマスケ 前作の「CLOCK TOWER」を去年の1月に出して、キャンペーンを回ってたときに、マネージャーから「NHKの野球中継のテーマ曲に決まった」って言われて、最初は「CLOCK TOWER」の中からどれかが使われるのかと思ったんですけど、「2月中に新しい曲を完パケで欲しい」ってお話で。そのとき言われたのが、「『CLOCK TOWER』に入っていた『五右衛門』っぽい曲をお願いします」ってことだったので、じゃあ、五の次は六だと。なおかつ、野球なので、六がショート、三がファースト、四がセカンドっていう感じで「六三四」にしたんです。
わかりにくいって言われても気にせず自由に表現したかった
──ADAM atの特徴は四つ打ちのリズムにあるという話でしたが、Schroeder-Headzのリズムは非常に複雑で、生音と打ち込みを併用していますよね。
渡辺 機械で作った音楽と人間が鳴らす音楽の一番の違いって、リズムだと思うんですよ。今の若い子は打ち込みの音楽のビートに耳が慣れてて、生演奏の揺れが気になる人もいるそうですけど、僕はどっちの気持ちよさも知っているので、おいしいとこ取りをしたいとずっと思ってて。グリッドにぴったり合った、ワープロで打った字のようなキチッとした感じと手書きの温かさをコラージュして、素敵なものが作れないかなって思ってます。
──新作の曲で言うと、「Micro Cosmos」が特に印象的でした。
渡辺 あの曲はちょっと変わった作り方をしたんです。全部譜面に書いて作曲して、それに合わせて千住(宗臣)くんにドラムを叩いてもらったら、すごい曲になっちゃって(笑)。でも、実はこのアルバムを象徴する曲かもしれない。
──あのエクスペリメンタルな曲が譜面で書かれたというのは驚きました。何かモチーフはあったのでしょうか?
渡辺 この曲に関してはコードとかハーモニー、メロディとかから離れてもうちょっと自由に作りたいっていう思いがありました。モチーフとしては冨田勲さんのアナログシンセの感じや坂本龍一さんのクラシックピアノの感じ、クラシック音楽の感じとかいろんなものがごちゃ混ぜになってますね。暗いとかわかりにくいって言われても気にせずに、自由に表現したかったんです。
──シュンスケさんは以前も「最近の音楽は説明し過ぎているように感じる」ということをおっしゃってましたよね。「一見わかりにくくても、能動的に聴くことで、新たな発見がある」っていう提示にもなっているように思いました。
渡辺 最近は説明しなさすぎもよくないなって思ってるんですけどね(笑)。「こうやったら楽しめますよ」って、ライブでちょっと煽ったりするのも大事だなって。
タマスケ 最初のきっかけだけ与えるというか。
渡辺 うん。歌がない分、自由に楽しんでほしいっていうのが基本なんですけど、最近はちょっとした説明っていうのも考えるようになりましたね。
──3月11日には渋谷DUOでの共演があります。最後にその日に向けてひと言ずついただきたいと思うのですが、Schroeder-Headzはシンベをフィーチャーしたアルバム発表後、ライブはどうなっていきそうですか?
渡辺 正直、まだ「どうしようかな?」っていう感じなんですけど、もちろんアルバムからの曲はやると思うし、「あれ? なんにも変わってないじゃん」ってことにはならないと思うので(笑)、楽しみにしていてほしいと思います。
タマスケ 僕は単純にまたご一緒させていただけるのが光栄なんですけど、僕のピアノを聴かれるのが恥ずかしいので、またネタを仕込んでいこうかなと(笑)。まあ、やっぱりお客さんに笑顔で帰ってもらえれば出演者側の勝ちだと思うので、汗だくになって、笑顔で帰ってもらえたらいいなって思います。
ライブ情報
- Rockin' In Rhythm
- 2016年3月11日(金)東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
出演者ADAM at / Schroeder-Headz / その隙間から
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- Schroeder-Headz ニューアルバム「特異点」 / 2016年1月20日発売 / 2592円 / Victor Entertainment / VICL-64512
- Schroeder-Headz ニューアルバム「特異点」
収録曲
- Singularity
- Hype
- A Cat and Vagabond
- Lake bed
- Surface
- Raindrops
- Micro Cosmos
- Sketch of Leaves
- Dawn
- ADAM at ニューアルバム「スウィートホーム」 / 2016年1月20日発売 / 2376円 / Victor Entertainment / VICL-64513
- ADAM at ニューアルバム「スウィートホーム」
収録曲
- スウィートホーム
- 六三四
- Karakusa Trick
- 残響6/8センチメンタル
- Cuba Libre
- はなちるさと
- 半丁猫屋敷
- Re:Ppin
- More Better Words
- ヤマネコア
Schroeder-Headz(シュローダーヘッズ)
数多くのアーティストのサポートでも活躍するキーボーディスト・渡辺シュンスケによるソロプロジェクト。2010年にアルバム「NEWDAYS」をリリースしたことをきっかけに活動を開始した。2013年12月にはリミックスプロジェクトの一環としてミニアルバム「Sleepin' Bird」を発表し、2014年2月にメジャー移籍第1弾アルバム「Synesthesia」をリリース。2016年1月に3枚目のアルバム「特異点」を発表する。また、土岐麻子とのユニット「土岐麻子 meets Schroeder-Headz」としても精力的にさまざまなイベントに出演している。
ADAM at(アダムアット)
タマスケアットを中心とした、固定メンバーのいないピアノセッションバンド。疾走感あふれるピアノサウンドとダンサブルなリズムを持ったインストゥルメンタルを得意とし、2015年1月に発表した1stフルアルバム「CLOCK TOWER」はiTunes Storeジャズ部門のダウンロードランキングおよびタワーレコードのジャズチャートで1位を獲得した。2016年1月に2ndフルアルバム「スウィートホーム」を発表した。