ナタリー PowerPush - ROCK'A'TRENCH

5人の良さを最大限に詰め込んだ 2ndアルバム「Bohemia」

このアルバムによってROCK'A'TRENCHは、その音楽的ポテンシャルを初めて全開にしたのではないか。前作「ACTION!」から約2年2カ月ぶりとなる2ndアルバム「Bohemia」は、「言葉をきいて / ビューティフル サン」「Music is my Soul」「日々のぬくもりだけで」「光射す方へ」というシングル曲を含む作品。このアルバムで彼らは、レゲエ、スカ、ファンク、メロコア、ハードロック、ポップスなどさまざまなジャンルを昇華したカラフルな音楽性を、メンバー一人ひとりの豊かな表現力によって具現化することに成功している。「今の自分たちをしっかり表現できた」という本作について、山森大輔(Vo, G)、オータケハヤト(Dr)にガッツリと語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

目指したのはシングル級の楽曲を集めたアルバムにすること

──フルアルバムは2年2カ月ぶり。ようやく、という感じもありますか?

山森 そうですね。けっこう長い期間をかけて、がんばって作ってきたので。ジャケットのデザインが上がったときに「やっとアルバムができた」っていう気持ちになりました。今は配信とかデータとかの時代ですけど、僕らはCDで育った世代だから、モノを見ないとなかなか実感が湧かなくて(笑)。

──同感です。それにしても、非常に内容の濃いアルバムになりましたね。

オータケ アルバムを目指しながら作ったというよりも、もっと自然な感じで曲が集まってきて。今の自分たちがすごく出てるアルバムだと思いますね。(アルバムの収録曲も)シングルと同じくらい濃いものが揃ってるし。

──確かに、アルバムを聴いていて「これ、シングルカットすればいいのに」って思う曲がいくつもありました。

山森 それがキーワードだったんですよね、ホントに。シングル級の楽曲を集めたアルバムにしたいっていう。「言葉をきいて」と「ビューティフル サン」、シングル3部作(「Music is my Soul」「日々のぬくもりだけで」「光射す方へ」)含めてシングルが5曲あるんですけど、いい意味で、それが目立たないようなアルバムにしたかったんです。クオリティだったり、アイデアの密度だったりで。

オータケ アルバムによく入ってるような、遊びっぽい曲は必要なかったんですよね、今回。1分半くらいで終わっちゃう曲とか、いきなりテクノが混ざってるとか。そういう変な遊びはいらなかった。

「こうしたらこうなる」っていうバンドならではの感覚がわかってきた

──逆に言うと、どの曲を取り上げてもROCK'A'TRENCHをしっかり感じられるような作品にする必要があったのかもしれないですね。

山森 5人だけのアンサンブルっていうのは、意識してましたね。こういうのとか(バイオリンを弾くマネ)、こういうのは(管楽器を演奏するマネ)はとりあえず置いておいて。

オータケ この5人で作ったアルバムは、これが初めてなんですよ。1st(「ACTION!」)って、僕が入る前からあった曲も収録されてるんですよね。もちろん、バンドの方向性や楽曲のビジョンはしっかり把握した上で作ったんですけど。

──山森さんと畠山さん(畠山拓也 / Key, Trombone)がこのバンドを作って、そこにオータケさん、河原さん(河原真 / B)、豊田さん(豊田ヒロユキ / G)が加入して。

オータケ 1stのときはもう少しデコボコしてたと思うんですよ。「おまえら何がやりたいんだ?」って思う人がいるのも、客観的にわかってたし。今回はそこからさらに進んで、それぞれのメンバーの手癖まで理解した上で(アルバムの制作に)臨んでるんですよね。「こうしたらこうなる」っていうバンドならではの感覚がわかってきたというか。ツーカーで理解しあえるようになるには、5年くらいはかかると思うんですよ、やっぱり。中学のときから友達です、みたいなバンドだったら違うのかもしれないけど、僕らはそうじゃないんで。

──当然、メンバーの演奏力も反映されてるだろうし。

山森 そうですね。あと、「この曲はこれくらいでいいか」みたいな妥協ができないメンバーばっかりなんですよね。どんどんアイデアを出してくるし。「こっちのほうがもっと良いんじゃないか」っていう情熱を抑えられなくて、100点、120点を目指す人たちなので。そういうことを繰り返しているうちに、全員が「これでOK!」って納得できる瞬間が必ず来るんですよ。その結果、どれをシングルにしてもOKな曲ばかりになって。

オータケ ヒロとかも、「Music is my Soul」あたりからさらに前に出てくるようになって。性格上、思ってることがあっても、確信が持てるまで言わないタイプだったんですよね。もちろんライブではしっかりキャラを出してくるけど、制作に関してはなかなか出してこなくて。ずっと「いいもの持ってるのに、なんで出してこないんだ?」って思ってたんですよね。でも、今はどんどんアイデアを出してくるし、それがすごく良くて。

山森 ライブの場数を踏んだり、いろんなタイプの曲を作ったりしてきたので、バンドの化学反応が起きやすくなってきたんですよね。その中には予想外のこともたくさんあるけど、それでいいと思うんです。コントロールしたいわけではないし、予想どおりのことばかりでも面白くないので。バンドって生き物ですからね、やっぱり。

ニューアルバム「Bohemia」 / 2011年9月7日発売 / Warner Music Japan

  • 初回限定盤A [CD+DVD] / 3500円 / WPZL-30318/19
  • 初回限定盤B [CD+DVD] / 3500円 / WPZL-30320/21
  • 通常盤 [CD] / 3000円 / WPCL-10989
CD収録曲
  1. Are Ya Ready
  2. 光射す方へ
  3. everybody clap
  4. 日々のぬくもりだけで
  5. 春風
  6. Dreamer Spider
  7. Yeah Yeah Yeah
  8. am I am I
  9. 言葉をきいて
  10. Trippin' Band
  11. ビューティフル サン
  12. Music is my Soul
  13. 君へ
初回限定盤A DVD収録内容
  • 言葉をきいて -Live ver.(ビデオクリップ)
  • Music is my Soul(ビデオクリップ)
  • 日々のぬくもりだけで(ビデオクリップ)
  • 光射す方へ(ビデオクリップ)
  • 君の瞳と(ライブ映像 / Zepp Osaka 2010.05.09)
  • Secret of the night(ライブ映像 / Zepp Osaka 2010.05.09)
  • JUMP STAR(ライブ映像 / Zepp Osaka 2010.05.09)
初回限定盤B DVD収録内容
  • アコースティックライブ映像を含む全7曲を収録
ROCK'A'TRENCH(ろっかとれんち)

山森大輔(Vo)、畠山拓也(Key, Trombone)を中心に2004年に結成。バンド名は彼らがリスペクトするボブ・マーリーの名曲「Trench Town Rock」に由来。2006年11月に豊田ヒロユキ(G)、河原真(B)、オータケハヤト(Dr)が加入し、バンドとしての基盤を固める。2007年7月にシングル「Higher」でメジャーデビューし、2009年に全国ドラマ「メイちゃんの執事」の主題歌「My SunShine」が着うた・配信などを中心に100万ダウンロードを突破。2009年7月に1stフルアルバム「ACTION!」を発表した。

2010年12月から2011年6月にかけては、シングル「Music is my Soul」「日々のぬくもりだけで」「光射す方へ」を3作連続リリース。中でも「光射す方へ」はテレビ東京系連続ドラマ「鈴木先生」オープニングテーマに起用され、注目を集めた。そして9月に2ndアルバム「Bohemia」を発表した。独自のエンタテインメント性を持つライブパフォーマンスと変幻自在なオルタナティブサウンドを特徴とする。