ゲームを作ったりビジネス展開していきたい

──「FLASH」は配信シングルのジャケットを「ちはやふる」原作者の末次由紀さんが描いていますが、好きなマンガ家に自分たちを描いてもらえたのは感慨深かったのでは。

のっち　超ぜいたくですよね。しかも「FLASH」のMVで、実際に私、ああいう表情をしている場面があるんですよ。

──おお、あの映像を踏まえてイラストを描いてもらったんですか。

のっち　いや全然！ だからすごいなって。

かしゆか　少女マンガは女の子をかわいく描いているから、自分たちがどういうふうに描かれるんだろうっていうのはすごく楽しみでした。で、完成した絵を見たら3人とも同じ顔の作りで描いてないし、表情も全然違うし、それぞれを象徴するポイントをしっかり切り取って描いてくれてたからすごくうれしかった。あと色使いが斬新ですよね。赤と黄緑がメインで、「末次先生が思うPerfumeってこういう色なんだ」って思って。

──どういう経緯で末次さんに描いてもらえることになったんですか？

のっち　先行配信するってことが決まったときに「ジャケットは先生の絵だったら面白いよね」っていう話になったから、「マンガ『FLASH』があったとしたら、その第1巻の表紙になるようなイラスト」っていうテーマで描いてもらうことにしたんです。

あ～ちゃん　先生と対談させてもらったときに「好きなキャラクターはどれですか？」って聞かれて、最新作の31巻の表紙にそのキャラクターの絵とサインを描いてくれたんですよ。もう感動しちゃって「うわー……うちらの絵も描いてほしい……」みたいな欲が出てきて（笑）。

──ちなみにそのときに描いてもらったキャラクターは誰だったんですか？

かしゆか　私は詩暢ちゃんです。一番好きなので。

のっち　私はいろんな取材で「原田先生好き」とか「肉まんくんがー」とか言ってるのに、いざ先生に描いてもらうことになったらイケメンの新をお願いしてたので、その瞬間に「ああ、私はやっぱり女なんだな」って思いました（笑）。

かしゆか　のっちは新をそんなふうに見とったんじゃね（笑）。

のっち　しかも和服フェチだから「和服でお願いしていいですか？」って図々しく服装のリクエストまでして（笑）。

あ～ちゃん　私は千早を描いてもらいました。面白いねあれ、先生は目から描き始めるんよなあ。

のっち　あ、そうだったね！

あ～ちゃん　目でキャラクターを描き分けてるらしくて、最初に目を描くんですよ。私、先生が描く目がすごく好きだから、そこにこだわってるって聞いて「伝わってますよ！」って叫んじゃった（笑）。あれはうれしかったなあ。

──もし実際に、このイラストが1巻の表紙を飾るマンガ「FLASH」があるとしたら、どんなストーリーだと思いますか？

かしゆか　ダンス部かな？

のっち　それ「フラッシュダンス」を思い浮かべてしまうんですけど（笑）。

かしゆか　「フラッシュダンス」はちょっとイメージ違うなー（笑）。でも私はダンスをテーマにしたマンガも読んでるから、3人の女の子をモチーフにしたダンスマンガだとうれしい。

あ～ちゃん　私にはこの絵がファンタジーな感じに見えたから、「踊ったら魔法が使える」っていう設定どう？

のっち　かわいいー！

あ～ちゃん　踊るとティンカー・ベルの魔法の粉みたいなのが出て、粉を吹きかけられた人は空が飛べる、みたいな。

のっち　いいねそれ！ そしてゆくゆくはリズムゲームを作ったり、ビジネス展開していきたいです。

あ～ちゃん　稼ぐ気かいっ（笑）。

次のアメリカ公演は何か新しいものを見つけて帰りたい

──アルバムの発売後にはリリースツアーも決定していますよね。東京・日本武道館と広島・広島グリーンアリーナでやった昨年のアニバーサリーライブがかなりの評判だったので、次のワンマンはファンの期待も非常に高まっているのではと思います。ハードルを上げてプレッシャーかけるような言い方ですが（笑）。

のっち　わはは（笑）。そうですね。

かしゆか　でも「結成15周年＆メジャーデビュー10周年」としてやった去年のライブと、新しい曲をいっぱい引っさげてのリリースツアーとでは、たぶんテイストは全然違うものになると思います。

あ～ちゃん　とにかく、自分たちが楽しいって思える内容になればいいかなって思ってます。今まではツアーとか大きいことをするときに、乗り越えなきゃいけないことを何個か自分自身に課してて、それが当然だと思ってきたところがあるんですけど、結局自分たちが「これ楽しいね」って言い合える、心の底からアホみたいに笑えることをやったときのほうがみんなからの評判がいいって気が付いて。それがまさに去年のアニバーサリーライブだったので、あの日のいろんなことを生かしながら今度のツアーを回りたいです。

──今回のツアーは行き先にアメリカの都市も組み込まれていますよね。アルバムのリリースツアーとしてアメリカでライブをするというのは、Perfumeにとって新しい挑戦なのかなと。

のっち　そうですね。日本でライブをしているような会場と、海外でライブをするときに私たちの知名度に適した会場は大きさが全然違ったから、今まで海外では日本と同じ演出ができなくて、その場所のサイズに合った新しいライブのプランを作ってたんです。でもアルバムのリリースツアーだったらどこの国でも関係なく同じライブをやるのが一般的だよねってことになって。そういう意味でも、今回のアメリカ公演はホントに挑戦です。

──アメリカを回るツアーはこれで2度目ですが、1回目を踏まえたうえで「今度はこうしたい」と思っていることはありますか？

あ～ちゃん　アメリカでライブをするのは夢だったから、前回はステージに立てたことだけで最高で。しかも予想以上のオーディエンスが集まって声を上げてくれたから、信じられないというか、ただただ夢を見ているような時間だったんです。だから今度は、しっかり現実感を持ってライブをしたいですね。

──2年前よりも楽しんでこよう、みたいな？

あ～ちゃん　そうですね。ふわふわしてないで、何か新しいものを見つけて帰りたいし、行けてよかったなって思いたい。私たちは新しい大きな夢も掲げたので、そこにつながるように。

──Madison Square Gardenでの単独公演のことですね。前回よりもツアーの公演数が増えたことを考えると、少しずつ夢に近付いているのかなという気がします。

のっち　まあ、無理せずに、ちょっとずつ着実に目指します（笑）。

私たちがずっと目指してたのはこれかもしれない

──今までも「ポリリズム」のリリースや、初の日本武道館公演、映画「カーズ2」への曲提供などがPerfumeにとっての活動の転機になっていたと思いますが、2015年のアニバーサリーイヤーも数年後に振り返ったときに重要な転機になっている気がしていて。これはあくまで僕がなんとなく感じていることではあるんですけど、皆さんにはそういう実感はありますか？

のっち　iPhoneとかメルセデス・ベンツさんのCMに使っていただいたり、「アメトーーク！」さんで特集を組んでもらったことは、自分たちにとってすごく大きなことだったなと思うんです。今まで私たちがやってきたことって、興味がある人には届いてるけど、興味がない人にはまったく届いてなかったと思う。でも「アメトーーク！」さんのおかげで、届いてなかったところに一気に広がった感じがして。あれをきっかけにファンになってくれた人もいるし、普通に街を歩いてて「Perfumeが～」って会話が聞こえることも増えたし。

──おお、そうなんですか。

のっち　そういうこともあって、今まで自分たちの中で大事に大事に育ててきたところから、この1年でちょっとだけ扉を開けた感覚があるんです。なんと言うか、私たちが今までできなかったような新しいことにチャレンジするための土台ができあがってきた、みたいな。

かしゆか　そうですね。Perfumeはこれからどんどん自由になっていく気がします。2015年を通して、いろんなことをやらせていただいたりチャンスをもらえたことで、自分たちが好きなことが形になるのはすごくうれしいんだって、さらに実感できたので。「好きなことをする」ってことを、今の私たちはシンプルに考えられるようになってきてると思う。これまでなら構えてたようなことに、これからは身軽に挑戦できるようになる気がします。

──自分たちの中にあったNGが少なくなってきたということですかね。

かしゆか　まあ、絶対に守るべきことはあると思うんですけど、いろんなことに対して可能性を想像できるようになってきた気がします。

あ～ちゃん　自分たちがやりたいって思ったことをスタッフさんたちも「よっしゃ！ やろうぜ！」って腰を上げてノリノリにやってくれて、それをお客様にも楽しんでもらえるのはめちゃくちゃうれしい。私たちが心の底から好きって思えることが、お客様にとっても楽しいものであるのは幸せです。去年のアニバーサリーライブをやったときに、結成15年目にしてようやく「私たちがずっと目指してたのはこれかも」って思えたんですよね。そして、こんなに好き放題な企画が許されるところまで来れたんだなって感慨深かった。やりたいことができるようになった今、Perfumeはここからがスタートだなって思ってます。