ナタリー PowerPush - ニコナタ(音楽) 小林幸子

“ラスボス”が教えるネットと世界の面白がり方

昨年来、ニコニコ動画界隈で小林幸子が話題だ。昨年10月、視聴者の悩みにリアルタイムで答えるニコニコ生放送「小林幸子降臨!『茨の木』夢は捨てずに生放送」に突如登場するや、瞬く間に話題と閲覧数をかっさらい、年末には東京・ニコファーレで開催された年越し企画「ニコニコ大忘年会2012 in nicofarre」にも収録ゲストとして出演。ニコファーレを360°取り囲むLEDスクリーンの中で観客とニコ生視聴者とともに2013年へのカウントダウンを行った。

そして4月に「ニコニコ超会議II」のステージ「超パーティー」のオープニングゲストとして登場し、「ラスボス」コールで約6000人の会場を沸かせ、9月にはヒャダインの楽曲「ぼくとわたしとニコニコ動画」の歌ってみた動画を投稿。現在までに140万オーバーの再生数を誇っている。さらに同月に「ニコニコ町会議 in 名古屋」に出演し、大晦日にはニコファーレでのイベント「ニコニコ年越し!小林幸子カウントダウンLIVE ~オープニングアクト:ダイオウグソクムシ~」にも登場。カウントダウンライブ中、ステージ上に“建設”された衣装をニコファーレのスクリーンで“拡張”することで巨大衣装「幸子城」をバーチャルに現出させるという(参考:大晦日のニコファーレに“ラスボス”小林幸子光臨&幸子城建設)。

今や「ラスボス」の愛称で親しまれるほどの存在となった小林がニコニコ動画を活用し続ける理由とは? 10月17日の埼玉・大宮ソニックシティでの50周年記念コンサート「スマイル」を終えたばかりの小林を直撃した。

取材・文 / 成松哲 撮影 / 小坂茂雄

小林幸子のコンサートの魅力を探る

小林幸子

──コンサート、大成功おめでとうございます!

ありがとうございます(笑)。

──今回は小林さんのニコニコ動画観について伺いたいんですけど、今日の公演に「なぜ小林幸子はニコニコ動画に接触するのか?」、そのヒントがある気がしたんです。というのも、特に第1部のステージ演出にビックリして。

そうかもしれないですね。私のステージはちょっと特殊というか、今日の私のステージが普通の演歌のステージかっていわれたら、ちょっと違いますから。皆さん、まずお着物を着て1部に登場して、そのあとお着替えはするけど、2部もやっぱりお着物を着てっていう人が多いみたいですから。

──ところが小林さんは第1部、まず真っ暗でシンプルなステージでアカペラで1曲歌ったかと思ったら、衣装を早替えした上でツアーバンドとダンサーを引き連れてご自身のヒット曲をスウィングジャズやタンゴやワルツにアレンジして。しかも曲の途中にThe Supremesの「Stop! In the Name of Love」のワンフレーズを挟んでみたりもしていた。

なんか新しくて、楽しいことはできないかな?と思ったときに「そうだ、私、モータウンな感じ、好きだった」って気付いて(笑)。

──しかも「Stop! In the Name of Love」を歌うときにはステージの小林さんと同じく白いドレスを着た3Dホログラム映像の2人の小林さんが登場して……。

まさにThe Supremesって感じでね(笑)。あのホログラム映像って面白いですよね。

「だって面白いよね? ニコ動」

──今日ステージを観ていて思ったのがまさにそれなんです。今ご自身が繰り返されている「新しい」「楽しい」「面白い」っていう感覚が小林さんをニコニコ動画に向かわせたんじゃないかな、って気がしたんです。

小林幸子

そうですね、きっと。ウチのスタッフが「小林さん、こんな話が来てます」「こんなことやりませんか?」って話を持ってきてくれた結果、ニコニコ動画に出ることにもなったんですけど、ウチのスタッフっていうのはもう何十年も一緒にいる子たちですから。私の性格をわかってるんです。だからまずヘンな話は持ってこないし、だったら拒まない。なんにも拒まないところから私はスタートするんです。だって面白いよね? ニコ動。

──それに異存はまったくないですけど(笑)、その一方で小林さんは「天下の小林幸子」なわけで。今日の公演タイトルの通りキャリア50年で「おもいで酒」や「雪椿」のようなビッグヒットを持っているし「NHK紅白歌合戦」では歌手別の最高視聴率を叩き出す人で。それに対してネットってテレビに比べると若いメディアだし、まだまだ権威にはなりきれていないじゃないですか。

でもニコ生に初めて出たのは去年の10月なんですけど、オファーをもらったとき、私もニコ動のことは知ってましたから。小沢(一郎)さんが使ってるってニュースを観たりもしていたので。だから「へーっ、あのニコ動からオファー? わかった」「やろうよー」ってすっごーく軽ーいノリでスタジオに行ってみたんです。ただ、確かにまだ若いメディアというか……。スタジオが本っ当に狭くって(笑)。

──あはははは(笑)。テレビや舞台の世界に親しんでる方だときっとビックリする狭さですよね。

ねえ(笑)。カメラも少ないし。私がニコ生に出るってことでマスコミの方が結構な数、取材に来てくださったんですけど、その人たちのカメラのほうが多かった(笑)。でも、そのニコ生がすごく面白かったんですよ。だったら、そのときの「やろうよー」っていうノリでいろんなことをやっちゃいたいんです。

ニコニコ年越し!小林幸子カウントダウンLIVE ~オープニングアクト:ダイオウグソクムシ~
ニコニコ年越し!小林幸子カウントダウンLIVE ~オープニングアクト:ダイオウグソクムシ~
50周年記念アルバム「K」2013年12月4日発売 / 3000円 / BounDEE by SSNW / KSPR-1004
「K」
収録曲
  • 茨の木(プレミアバージョン)
  • 道(花いちもんめ)
  • お母さんへ
  • 幸せ

and more

50周年記念アルバム「S」2013年9月4日発売 / 3000円 / BounDEE by SSNW / KSPR-1003
「S」
収録曲
  1. 茨の木
  2. おもいで酒
  3. とまり木
  4. ふたたびの
  5. もしかして
  6. ひと晩泊めてね
  7. 夫婦しぐれ
  8. 雪椿
  9. 約束(ロングバージョン)
  10. 越後情話
  11. イチマディン~永遠に・・・
  12. やんちゃ酒(セリフ入り)
  13. Ribbon
  14. 大江戸喧嘩花
  15. 恋桜
  16. ウソツキ鴎(ボーナストラック)
50周年記念アルバム「S」2013年9月4日発売 / 3000円 / BounDEE by SSNW / KSPR-1002
「S」
収録曲
  1. 蛍前線
  2. おかあさんへ
  3. 蛍前線(オリジナル・カラオケ)
  4. おかあさんへ(オリジナル・カラオケ)
小林幸子(こばやしさちこ)

1953年生まれの女性ボーカリスト。1963年、9歳で作曲家古賀政男に師事し、1964年シングル「ウソツキ鴎」でデビュー。同曲が20万枚の大ヒットを記録する。1979年1月リリースの「おもいで酒」が200万枚を超えるセールスを記録し、同年末「NHK紅白歌合戦」に初出場を果たす。以来「もしかして」「雪椿」「越後情話」などヒット曲の数々を引っさげ、現在までに同番組に33回出演し、1980年代末頃からはステージ演出にも注力。NHKホールのステージをフル活用した舞台装置と衣装が年末の風物詩のひとつと目されるようになる。他方、コメディやバラエティ番組、テレビドラマなどにも出演。また映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル」に主題歌を提供するほか声優として登場するなど、その多岐にわたる活動を通じて幅広い年齢層の人気を獲得する。さらに2012年、ニコニコ生放送「小林幸子降臨!『茨の木』夢は捨てずに生放送」「ニコニコ大忘年会2012 in nicofarre」に登場。2013年には歌ってみた動画「ぼくとわたしとニコニコ動画を夏感満載で歌ってみた」を投稿し、イベント「ニコニコ町会議 in 名古屋」「ニコニコ年越し!小林幸子カウントダウンLIVE ~オープニングアクト:ダイオウグソクムシ~」に出演するなど、ニコニコ動画を積極的に活用。ネットユーザーの多大な人気を集めている。