ナタリー PowerPush - ねごと

ブレイクしても平常心! 4人のナチュラルさの秘密を探る

「振り切って作ってみよう」で生まれた「カロン」

──そうですか。いや、蒼山さんが去年のツアー最終日の東京で思うように声が出なかったのは、スケジュールがキツかったのもあったんじゃないかな?と思ったんですけど。

蒼山 ああー……あれはほんと、突然のことでしたね。たしかにツアーのファイナルだったので、身体的にもしんどかったのは、たぶんあるんですけど。あのときは、ショックというよりも驚きっていうか、「なんでこういうことが起こってるんだろう?」っていう感じだったんですね。焦りもあったんですけど。でもステージに出る直前とかは「今日はこれで出なきゃいけない日なんだな」って、すごく感じたんです。「それでもお客さんに伝えられるものはきっとあるはずだ」と思って……。だから上がる前から振り切れてたところはあったんですよ。結果的に、ほんとに残念な思いをさせてしまった方もたくさんいたし、ボーカリストとして身体のことも考えないといけないなと思いました。でも、あの日にしか見れない景色が見れたなとは、すごく思っていて……。その翌日「カロン」のビデオクリップの撮影があったんですけど、あの次の日だからこそのバンドの一体感が映像に撮れてて、不思議だなあって思いましたね。

──その「カロン」ですが、レコーディング自体はいつぐらいだったんですか。

インタビュー風景

蒼山 去年の5月でした。最初はミニアルバムのリード曲のつもりで制作を開始したんですね。なので、「これでねごとは世に出てくんです」っていうつもりで、意識的に思ってて……。そういう意味では、4人だけで楽しかった時期とは違って「人に聴いてもらうんだ」ということを意識して作った初めての曲でした。それまでのねごとには、頑なに「カッコいいのにしないと」というのがあったんですけど、そのときに「じゃあたくさんの人に聴いてもらえる、ポピュラリティのある音楽ってなんだろう?」という話し合いをして。そこで、「ただ4つ打ちにしてみるとか、かわいくしてみるとかじゃなくて、ねごとらしく演奏はカッコよく、でもたくさんの人に聴いてもらえるような曲を作ればいいんじゃないか」っていう話になったんです。だからそれまでは「これはしちゃダメ」みたいなのがあったけど、「もう振り切って作ってみよう」って意識を変えたときに、この「カロン」のオケの土台ができたんですよ。

沙田 そういう意識になってからオケは2時間ぐらいでできました。「作ろう!」っていうみんなの意識がちゃんと統一できたので、出だしのキーボードからサーッと作っていけて。サビでどれだけ盛り上げるか、最後をどれだけカッコよく終わらせるか、みんなで試行錯誤しながら取り組んだところがあって。その上で、どれだけの人に届く、耳に残るメロディを作るか……っていうことで、幸子がすごくがんばりましたね。

蒼山 メロディは去年3月の合宿の時点でなんとなくはできてたんですね。ただ、歌詞を書くのにすごく時間がかかって……。そこから2カ月、5月にレコーディングするまで書けなかったんです。

自分の思いを素直に書いた歌詞

──それはさっきのポピュラリティという点があったから?

蒼山 うーん、そこはただ単に自分がしっくり来る歌詞がずっと書けなかったからですけど……でも「人に聴かせるんだ」っていうことを、やっぱりプレッシャーに感じちゃってたっていうのもあるかな。たぶん、うまく書こうとしてた自分がいたんです。自分の中では新しいことにチャレンジしてみたいというのもあって、「ループ」でけっこう“星”とか使ってるしな……とか、そういう、いろいろなことも考えてたんですね。でもいよいよレコーディングの日が来てしまって、もう時間がない!ってなって。そのときにみんなで話し合いをして……。

インタビュー風景

──そんなに大変そうでしたか? 彼女は。

藤咲 そうですね、結構。ミーティングして「なんで書けないのか」っていうのをみんなで話し合いました。

澤村 とりあえず幸子はどよーんって感じでしたけど、私たちは「幸子が納得する歌詞が書けたらいい」って思って待ちました。

蒼山 それでその日家に帰って考えてみたときに、「あ、もっと素直に書けばいいなあ」って。「もうヘタでもいいから、自分の思いを素直に書こう」って思ったら、すごいスッキリして。で、次の日の朝スタジオに向かう電車の中でバーッと書けたんですね。

──まさに電車の中だ。

蒼山 あ、そう、電車の中です(笑)。だから、そういう意味では……それまでの曲はオケに合わせた世界観の言葉だったり、メロディを作ってるときに出てきた言葉をそのまま採用したりしてたんですけど、「カロン」はほんと自分のリアルな思いが詰まってるっていうか……そういう曲になりましたね。

──いや、確かにそういう歌詞ですよね。で、こういうふうに多方面に届いてることを実感するようなことがあると、気持ち的に何か変わってきません?

蒼山 「これでライブ来てくれたらいいな」って思いましたね。こういう機会をもらえたっていうのは「すごいことなんだな」「ほんとにありがたいことなんだな」と、すごく思います。学校の友達や家族は喜んでくれてるし、「これでねごとを知る人がきっとたくさんいるんだろうな」と思うので、もっといい曲届けたいなとも思います。

1stシングル「カロン」 / 2011年3月2日発売 [CD] 1260円(税込) / Ki/oon Records / KSCL-1734

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CD収録曲
  1. カロン
  2. 彗星シロップ
  3. フレンズ
ねごと

蒼山幸子(Vo, Key)、沙田瑞紀(G, Cho)、藤咲佑(B, Cho)、澤村小夜子(Dr, Cho)からなる4人組バンド。高校2年生だった2008年1月に結成し、春に開催された「閃光ライオット2008」に応募。予選を順当に通過し、8月に行われた決勝大会に進出。審査員特別賞を受賞する。同年11月に発売された「閃光ライオット2008」コンピレーションアルバムにも、大会で披露した楽曲「ループ」で参加する。その後勉強に専念するため一時ライブ活動を休止するも、2009年9月に本格活動開始。2010年2月より行っている自主企画「お口ポカーンフェス?!」も毎回好評を博している。2010年9月29日、1stミニアルバム「Hello! "Z"」をKi/oon Recordsよりリリース。2011年3月リリースの1stシングル「カロン」はau「LISMO!」のCMソングに決定し、幅広い層から注目を集めている。